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ホーム全日病ニュース(2021年)第992回/2021年8月15日号専門組織からの意見書を了承。価格調整制度の改善目指す

専門組織からの意見書を了承。価格調整制度の改善目指す

専門組織からの意見書を了承。価格調整制度の改善目指す

【中医協・費用対効果評価専門部会】これまでの医薬品や医療機器の評価の運用踏まえ提案

 中医協の費用対効果評価専門部会は7月21日、費用対効果評価専門組織からの意見書を了承した。医薬品や医療機器の費用対効果評価制度の運用状況を踏まえ、改善点を提案した。また、公益側の荒井耕委員(一橋大学大学院教授)の退任に伴い、部会長に、公益側の飯塚敏晃委員(東京大学大学院教授)が就任した。部会長代理には、中村洋委員(慶應義塾大学大学院教授)が指名された。

中医協委員の指摘に対し改善策
 医薬品や医療機器の公定価格に対して、費用対効果評価を行い、価格を調整する制度が始まり、さまざまな品目への適用が決まった。その分析結果や価格調整に対しては、中医協委員から問題点を指摘する意見が多く出ている。意見書では、それらの問題点の改善策を提示し、今回了承を得た。改善策の一部を以下で紹介する。
〇患者割合のデータが非公表
 分析対象集団の患者割合が企業から「非公表」とされたことに対しては、「公表することが困難である理由」の説明を求めることになった。患者割合が不明のままでは、品目の価格調整の透明性が失われるとの指摘が出ていた。
〇分析対象集団の一部が分析不能
 対象品目の費用対効果評価の分析において、分析対象集団の一部が「分析不能」とされた場合があった。これに対しては、現時点で「一定のルールを定めることは困難であり、引続き個別の事例への対応を行いながら、事例を収集しつつ、検討する」ことになった。
 例えば、うつ病・うつ状態の治療薬であるトリンテリックス(武田薬品工業)の分析では、分析データの不足により、一部の分析集団が「分析不能」となった。当該集団を除外した上で、全体を評価したが、中医協委員からは、全体の評価を左右する分析集団が除外されれば、妥当な評価を判断できないとの指摘が出ていた。
〇企業が分析期間を超過
 費用対効果評価の企業による分析が想定期間(品目指定から9カ月)を超過しても終わらない場合の取扱いについて、現行で規定はない。意見書では、妥当性の認められない分析期間の超過を防ぐため、そのような場合の取扱いを「明確化する」ことが提案された。
〇効能追加時の取扱い
 医薬品や医療機器が保険収載された後に、その品目に新たな効能が追加されることがある。分析期間中に効能追加がある場合、原則として効能追加分の分析も行われる。その場合は、分析期間が通常の9カ月を超えて長引くことになる。しかし、その期間について明確な規定はない。このため、分析期間の延長に対しては、「妥当と考えられる期間」を設定することになった。
 複数の効能追加があった場合は、9カ月以内に追加された効能だけを分析の対象とし、それを超えてから追加された効能については、評価終了後に改めて品目指定の可否を検討するとした。
〇効果同等で費用増加の取扱い
 分析の結果、「比較対照技術に対し効果は同等であり、かつ費用が増加する」とされた品目については、現行で区分設定や価格調整の規定がない。このため、「分析結果が費用増加となった場合の区分を設けるとともに、原則、当該区分の価格調整係数は、最も小さな価格調整係数に該当するものとみなして、価格調整を行う」との対応を決めた。
〇薬価算定組織との評価の違い
 医薬品の薬価を検討する薬価算定組織と、薬価などの費用対効果評価を検討する費用対効果評価専門組織の判断が異なる場合が、これまであった。
 例えば、発作性夜間ヘモグロビン尿症などの治療薬であるユルトミリス(アレクシオンファーマ)の評価では、薬価算定段階では「投与期間の延長」(既存薬と比べ、注射の頻度が4分の1に減少)が加算の理由となった。しかし、費用対効果評価段階では、定量的な健康関連QOLの改善がみられず、逆に「費用増加」と評価された。
 こうした状況に対し意見書では、両組織は「異なる観点から評価を実施している」とした上で、「まずは、それぞれの組織で情報を共有する」ことにとどめた。

 

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