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ホーム全日病ニュース(2021年)第993回/2021年9月1日号経過措置の療養病棟で回復期の患者にリハビリ

経過措置の療養病棟で回復期の患者にリハビリ

経過措置の療養病棟で回復期の患者にリハビリ

【中医協・入院医療等分科会】短期滞在手術等基本料3で新たな手術等の候補

 中医協の入院医療等の調査・評価分科会(尾形裕也分科会長)は8月6日、2022年度診療報酬改定に向け、慢性期入院医療や短期滞在手術等基本料などをテーマに議論を行った。療養病棟入院基本料については、経過措置の病棟が回復期の患者へのリハビリなどで活用されていることが調査結果から観察された。短期滞在手術等基本料では、新たに「3」の対象となる手術等の候補が示された。また、外来での実施が多い手術等や在院日数が想定日数を大幅に超えている手術等、診療報酬設定と実態がそぐわない調査結果が示された。

経過措置の療養病棟の実態調べる
 療養病棟入院基本料については、経過措置の実態に関して、議論が行われた。療養病棟入院基本料1・2の看護職員・看護補助者の配置は、20対1を基本とし、医療区分2・3の該当割合は、「1」が8割以上、「2」が5割以上となっている。一方、経過措置では、配置基準または医療区分の該当患者割合を満たせず、25対1の配置基準を満たしている場合に、100分の85の点数という減算が適用される。
 2020年度改定前に経過措置を届け出ていた病棟の2020年11月1日時点の状況をみると、変わらずに経過措置を届け出ていた病棟が64.0%で最も多かったが、一部を地域包括ケア入院医療管理料の病室へ転換した病棟も28%あった。一方、リハビリテーションの実施状況をみると、「1」「2」よりも経過措置で多く実施されているとの結果だった。
 また、経過措置を届け出ている病棟の今後の予定をきくと、33.3%の病棟で他の病棟に転換したいとの意向があった。移行先としては、介護医療院、地域包括ケア病棟が多かった。ただし、経過措置の病棟の調査対象施設自体が少なく、実態を把握する調査としては不十分との指摘も今回、相次いだ。
 全日病会長の猪口雄二委員は、「調査対象施設が少ないので、何とも言えないが、短い入院期間で患者にリハビリを中心に医療を提供している経過措置の病棟がある。おそらく病名では整形外科系の術後のリハビリが多いのだと思う。これが経過措置の病棟の状況としてよいのかということについては、議論が必要になる」と述べた。
 全日病常任理事の津留英智委員も同様の状況について発言した。調査結果から、「経過措置の病棟で、一部を地域包括ケア入院医療管理料の病室に転換した病棟が28%あり、3割程度が地ケアなど他の病棟に転換する意向を示している。そこでは、運動器のリハビリが多く行われている実態がある」と指摘した。
 その上で、「リハビリが提供されている患者は医療区分1相当の患者で、一部を地域包括ケア入院医療管理料の病室に転換した病棟は、そこに医療区分1の患者を集約し、医療区分2・3の患者は療養病棟入院基本料を算定する病棟に入院するという経営努力をしているようにみえる」と述べ、状況を把握しているか厚労省にきいた。
 しかし、厚労省は、調査対象者施設が少なく、「これ以上分析すると、個別の施設の実態を分析することになってしまう」と回答。状況を明らかにするのは難しいとの考えを示した。

中心静脈栄養の患者は減少したか
 療養病棟における「中心静脈栄養」の患者の変化について、注目が集まった。2020年度改定では、同分科会で、医療区分3の該当項目である「中心静脈栄養」が、長期間続く患者が少なくないことなどが指摘され、「患者・家族等に療養上必要な事項を説明する」ことを要件に加えた。2020年度調査結果では、対象患者に変化があったと回答した施設が、全体の10%であった。変化の内容では、全入院料でみると、「中心静脈栄養以外が選択されるようになった」が最多だった。
 猪口委員は、「『中心静脈栄養以外が選択されるようになった』とあるが、実際にどれだけ『中心静脈栄養』の患者が減ったのか」と質問したが、厚労省担当者は、「把握しきれていない」と回答した。

短期滞在手術等基本料の実態分析
 厚労省は、短期滞在手術等基本料3について、2022年度診療報酬改定で新たに対象となり得る手術を例示した。短期滞在手術等基本料は、一定期間内の手術とそれに伴う管理や検査、画像診断等を包括的に評価している。「1」(2,947点)は日帰り、「2」(5,075点)は一泊二日、「3」(手術等別)は4泊5日である。DPC対象病院は「2」「3」を算定できない。
 厚労省は、現状で短期滞在手術等基本料の対象となっていない手術等を分析。短期間で退院可能で、治療法が標準化されている「3」の対象となり得る手術等を探した。抽出方法としては、該当症例数が100件以上で、在院日数が◇在院日数の平均+1SD(標準偏差)が5日以内◇在院日数の平均+1SD(同)が7日以内の条件を置いた。「3」は4泊5日以内であり、在院日数の幅を多少広くみて7日までを分析の対象とした。
 その結果、在院日数が短く、算定点数のばらつきの小さいものとして該当した手術等は以下のとおり。◇終夜睡眠ポリグラフィー3(1および2以外)(その他)◇下肢静脈瘤血管内焼灼術◇子宮内膜掻爬術◇骨内異物(挿入物を含む)除去術(前腕)。2022年度改定で「3」の対象とすることが検討される。
 ただ、委員からは、特に、子宮内膜掻爬術や骨内異物除去術について、在院日数は短い日数に収斂しているものの、出来高実績点数の分布にある程度、ばらつきがあるため、ばらつきが生じている理由を精査すべきとの意見が出た。厚労省担当者は、精査を続けると回答した。
 また、「3」については、一部に入院外での実施割合が高い手術があった。例えば、「小児食物アレルギー負荷検査」は99.2%、下肢静脈瘤手術・硬化療法は97.9%が入院外で実施されている。
 DPC対象病院と診療所は「3」を算定できず、出来高対象病院での「3」の算定においては、5日以内の入院は外来を含めて、各手術等の「3」の点数を算定することになる。医療機関にとっては、入院より外来のほうが費用は低いため、入院の必要がなければ、外来で実施することにインセンティブが生じると考えられる。4泊5日の入院を前提とした医療資源投入量の設定が適切ではない可能性もある。
 また、「1」の対象になっている手術も、入院外での実施割合が増加している。一方、「2」は、算定回数自体が少なく、届出病院数も減少傾向、届出診療所数は横ばいという状況にある。
 猪口委員は、短期滞在手術等基本料の趣旨に沿うよう、実態に合わせた見直しが必要と主張した。特に、1泊2日が標準と設定されている「2」の平均在院日数について、「2日を大きく上回る手術等がある」と述べ、「2」にそぐわない手術等が設定されていると指摘した。

 

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