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ホーム全日病ニュース(2021年)第993回/2021年9月1日号やむを得ない場合や臨床研修医への健康確保措置で緩和策

やむを得ない場合や臨床研修医への健康確保措置で緩和策

やむを得ない場合や臨床研修医への健康確保措置で緩和策

【厚労省・医師の働き方改革推進検討会】連続勤務時間制限・勤務間インターバルの取扱い

 厚生労働省の医師の働き方改革の推進に関する検討会(遠藤久夫座長)は8月4日、医師の時間外労働規制に伴う追加的健康確保措置の運用について、移植手術など15時間を超える例外的な連続勤務時間への対応や、臨床研修医への連続勤務時間制限・勤務間インターバルなどの適用方法などを了承した。特例水準が適用される長時間労働で働く勤務医に対し、確実に追加的健康確保措置が実施される体制を整えることとあわせ、現場の実態に合わせて、一定の緩和策を実施する考えだ。

15時間を超える連続勤務に対応
 医師の時間外労働規制の特例である年間1,860時間の時間外・休日労働が認められるB水準・連携B水準・C水準の適用対象となる医師に対しては、連続勤務時間制限・勤務間インターバル規制など追加的健康確保措置が義務化される。通常のA水準の場合は努力義務だ。
 原則として2種類ある。①始業から24時間以内に9時間の連続した休息時間(15時間の連続勤務時間制限)②始業から46時間以内に18時間の連続した休息時間(28時間の連続勤務時間制限)。①は、通常の日勤・宿日直許可のある宿日直に従事する場合で、②は、宿日直許可のない宿日直に従事する場合である。
 9時間または18時間の連続した休憩時間中に、やむを得ない理由により発生した診療に従事しなければならないこともある。その場合は、その診療時間に相当する時間の代償休息を事後的に付与する必要がある。やむを得ない理由というのは、予定外の出来事との位置づけで、代償休息を付与することを前提とした運用は、原則として認められない。代償休息を前提とした勤務シフトは組めない。
 しかし、長時間の手術など個人が15時間を超えるような連続した業務を行うこともある。その場合には、代償休息の付与を認めることになった。ただし、医師の健康確保の観点から、代償休息については、翌月の月末までの間ではなく、業務終了後すぐに付与しなければならないことも決めた。
 日本医師会常任理事の城守国斗委員は、「15時間を超えるような業務で、手術以外には何が想定されるか」と質問。厚労省担当者は、「基本的には手術」と回答した。日本医学会副会長の森正樹委員は、「例えば、移植医療は長時間の手術になることがある」と述べた。

臨床研修医の研修期間を確保
 臨床研修医については、医師になったばかりで肉体的・精神的な負荷が大きいと考えられることに配慮して、その他の医師より強い追加的健康確保措置が講じられることになっている。
 具体的には、◇連続勤務時間制限・勤務間インターバルの実施を徹底し、代償休息の必要がないようにする◇9時間の勤務間インターバルを必ず確保し、連続勤務時間制限は15時間とする。臨床研修の必要性から、24時間の連続勤務時間とする必要がある場合はこれを認めるが、その後の勤務間インターバルは24時間とする─を設けることで、臨床研修医に対する配慮を行う。
 しかし、このルールに則った場合、期待された研修効果を獲得できない恐れがあるとの問題が出てきた。例えば、夜間・休日のオンコールや宿日直許可のある宿日直に従事する際に、通常の勤務時間と同様の労働が少しでも発生した場合には、「始業から48時間以内に24時間の連続した休息時間」(24時間の連続勤務時間制限)が適用され、翌日を終日休日とする必要がある。これが連続すると、研修期間が1カ月など短い診療科では、研修期間の大部分を休日とせざるを得ない状況が生じかねない。
 このため、臨床研修医には基本的には、代償休息を付与するような働き方は認めないが、一定の条件で、代償休息を認めることを決めた。条件は以下の3つとした。
 ①臨床研修における必要性から、オンコールまたは宿日直許可のある宿日直への従事が必要な場合に限る。必要性の例としては、研修修了の必須となる症候・症例を経験するためや、終末期の患者を看取る十分な経験をするためなどをあげた。
 ②臨床研修医の募集時に代償休息を付与する形式での研修を実施する旨を明示する。なお、臨床研修医の募集においては、労働時間に関して、募集前年度実績と想定時間外・休日労働時間数、当直・日直のおおよその回数と宿日直の有無を記載することになっている。
 ③代償休息は、計画的な研修という観点から、通常は研修期間内で処理すべきであり、代償休息の付与期限は原則として必要性が生じた診療科の研修期間内とし、それが困難な場合に限り、翌月末までとする。

許可ありの宿日直中の診療時間
 宿日直許可のある宿日直が、通常の勤務時間と同等とみなされ、休息の配慮義務を医療機関の管理者が負うことになる場合を規定した同日の資料の記述について、日本医療法人協会副会長の馬場武彦委員が、見直しを要望した。
 資料では、「通常の勤務時間と同態様の労働が発生した場合」とある。
 馬場委員は、「この記述だと、準夜帯に患者が来て、簡単な処置を行った場合でも、『同態様の労働が発生した場合』と解釈されかねない。2020年3月の報告書では、『宿日直許可を受けている場合は、十分睡眠を確保し、疲労回復が可能と考えられるが、仮に日中と同様の労働に従事することとなった場合』との記述となっている。報告書を尊重した表現にしてほしい」と述べた。
 厚労省担当者はこれに対し、「配慮義務を行う場合について、法令で明確にしなければならず、『十分に睡眠時間を確保できなかった場合』といった表現を持ち込むことができなかった。運用面で趣旨が現場に伝わるよう周知したい」と回答した。
 宿日直許可のある宿日直の連続した9時間以上の時間は、9時間の連続した休息時間が確保されたとみなされる。しかし、「通常の勤務時間と同態様の労働が発生した場合」は、その労働時間に相当する時間の休息を付与する配慮義務を医療機関の管理者は負う。ただし、『休暇の取得の呼びかけ等』の働きかけであり、「必ずしも結果として休息時間の確保そのものが求められるわけではない」としている。

労働時間短縮の大臣指針に追記
 医師の労働時間短縮等に関する大臣指針の追記案を大筋で了承した。追記部分は、改正医療法の審議の際に、国会の衆参両院の厚生労働委員会による附帯決議を反映させたものだ。具体的には、以下のような文言を追加した。
 ◇都道府県等は、面接指導を含む追加的健康確保措置の履行確保のため、医療法第25条第1項の規定に基づく立入検査において、医療機関における当該措置の実施状況の確認を行い、医療機関に対し必要な助言・指導を行うこと。
 ◇地域医療確保暫定特例水準の指定を受けた医療機関においては、36協定で定める時間外・休日労働時間数について、当該医療機関における地域医療確保暫定特例水準の対象業務に必要とされる時間数であることを合理的に説明可能な時間数を設定するとともに、当該医療機関の労働時間短縮の取組実績に応じて見直しを行うこと。
 ◇各医療機関の状況に応じ、当該医療機関に勤務する医師のうち、時間外・休日労働の上限が年960時間以下の水準が適用される医師についても医師労働時間短縮計画を自主的に作成し、同計画に基づいて取組を進めること。
 そのほか、委員からは、追加的健康確保措置が確実に実施されることの実効性を担保するため、医療機関を支援する方策も大臣指針に盛り込むべきとの意見が出た。

 

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全日病サイト内の関連情報
  • [1] 全日病ニュース・紙面PDF(2020年4月1日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2020/200401.pdf

    2020/04/01 ... 推進に関する検討会」(遠藤久夫座長). は3月11日、医師の働き方 ... バル、代償休息等の日々の管理は医師 ... どちらの医療機関で代償休息を取得さ.

  • [2] 健康確保措置が未実施の場合の行政処分の手順示す|第948回 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20190915/news03.html

    2019/09/15 ... 厚生労働省の医師の働き方改革の推進に関する検討会(遠藤久夫座長)は9月2日、時間 ... と、これらが実施できない場合の代償休息が義務化される。

  • [3] 医師の時間外労働規制の医事法制での位置づけを検討|第945回 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20190801/news01.html

    2019/08/01 ... 医師の時間外労働規制の医事法制での位置づけを検討|第945回/2019年8月1日号 HTML版。21世紀の医療を考える「全日病ニュース」は、全日本病院協会が ...

  • [4] 全日病ニュース・紙面PDF(2019年4月15日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2019/190415.pdf

    2019/04/15 ... する検討会(岩村正彦座長)は3月28. 日、2024年4月に適用される ... 実施できなければ、代償休息を提供し ... 見直し等に関する検討会(遠藤久夫座.

  • [5] 「急性期、医療・看護必要度」の妥当性が論点に

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2019/190915.pdf

    2019/10/20 ... (2)2019年(令和元年)9月15日(日). 全日病ニュース. 厚生労働省の医師の働き方改革の推. 進に関する検討会(遠藤久夫座長)は.

  • [6] 全日病ニュース・紙面PDF(2019年4月1日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2019/190401.pdf

    2019/04/01 ... する検討会(岩村正彦座長)の議論が. 大詰めを迎えている。 ... 「代償休息」が与えることが一般化す ... 会の医師専門研修部会(遠藤久夫部会.

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