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ホーム全日病ニュース(2021年)第993回/2021年9月1日号10%への消費税引上げに伴う補てん調査案を了承

10%への消費税引上げに伴う補てん調査案を了承

10%への消費税引上げに伴う補てん調査案を了承

【中医協・消費税負担の分科会】2021年度のNDBと実調で補てん状況を調査

 中医協の診療報酬調査専門組織の医療機関等における消費税負担に関する分科会は8月4日、2019年に行われた消費税10%への引上げに伴う診療報酬による補てんについて、2021年度の状況を調査し把握する方法とスケジュールを了承した。
 分科会長には、東京大学大学院教授の飯塚敏晃氏を選出した。
 医療が非課税であるため、医療機関が仕入れにおいて負担する消費税は還付されず、医療機関の負担になってしまう。このため、負担相当分を診療報酬への上乗せで補てんしているが、個別の医療機関の負担には対応せず、医療機関によりばらつきが生じる状況となっている。このため、2019年の対応では従来と比べれば、丁寧な対応を行った。
 その状況を調べるため、その医療機関の収入のうち、診療報酬本体に上乗せされている補てん分は、2021年度のNDBデータから抽出した算定回数などのデータを使用して計算する。
 支出のうち、課税経費の消費税相当額については、7~8月に実施している第23回医療経済実態調査のデータを使用して医療機関の課税経費額を推計する。その課税経費額から、薬剤費と特定保険医療材料費を除外した分の消費税分を計算することになる。
 両者を突き合わせ、今年11月に、医療機関における補てん状況の推計結果が同分科会に報告される予定。
 ただ、2021年度は新型コロナの感染拡大による影響で、医療機関を受診する患者が減少する一方、感染対策のための経費が増加し、医療機関には補助金も交付されていた。このように、コロナ感染拡大以前とは異なる状況下のデータを調べて、消費税10%引上げへの補てん状況を判断することについて、さまざまな意見があがった。
 支払側の委員からは、「この混乱した状況のなかで、調査を行うこと自体はよいが、消費税の補てん状況について結論を出すのは見送るべき」との主張がなされた。これに対し、日本医師会副会長の今村聡委員は、「調査結果の解釈は難しくなると想定されるが、11月に示されるデータを見てから考えるべき」と述べ、分科会としては11月に調査結果を踏まえ判断することになった。
 厚労省は、補てん状況を「開設者別」「病院機能別」「入院基本料別」に区分して比較する方針だ。
 今村委員は、補てん状況のばらつきに関するデータを示すよう厚労省に求め、「一つひとつの医療機関に対して完全に補てんすることは無理だが、分布の広がりが大きければ、それを縮める取組みが必要」と述べた。
 日本医療法人協会会長代行の伊藤伸一委員も、「個々の医療機関への補てんの分布の実態を把握し、今後の税率引上げのときの対応を視野に入れた上で議論を進める必要がある」と述べ、個々の医療機関への補てん状況に関する資料を示すよう要望した。

消費税の取扱いについての経緯
〇2014年(消費税8%引上げ時)
 中医協・消費税分科会の場において、診療報酬とは別建ての高額投資対応の検討を議論。その結果、別建ての高額投資対応は実施せず、消費税8%引上げ時の対応は診療報酬にて行うこととなった。診療報酬上の補てん見合いの点数配分の方法について議論を重ねた結果、基本診療料への点数上乗せを主とした対応を行うこととなった。

〇2019年(消費税10%引上げ時)
① 中医協・消費税分科会の場において、2014年改定の診療報酬上の対応について、その補てん状況の把握を実施。全体の補てん不足及び医療機関種別ごとの補てん率のばらつきが生じていること等が明らかになり、これに対する要因分析、より適切な補てん方法等について議論。
② 議論を踏まえて、全体の補てん不足及び医療機関種別ごとの補てん率のばらつきを是正するため、5%から8%への引上げ時の内容も含めて配点方法の見直しを行ったうえで、消費税10%引上げに対応した診療報酬上の対応を実施。
③ なお、2018年度の『「医療機関等における消費税負担に関する分科会」における議論の整理』においては、「消費税率10%への引上げ後の補てん状況については、必要なデータが揃い次第速やかに、かつ継続的に調査することとする。」とされた。

 

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