全日病ニュース

全日病ニュース

ホーム全日病ニュース(2021年)第995回/2021年10月1日号次期改定に向けた入院医療に関する中間まとめを了承

次期改定に向けた入院医療に関する中間まとめを了承

次期改定に向けた入院医療に関する中間まとめを了承

【中医協・入院医療等分科会】地域包括ケア病棟や救急医療管理加算を議論

 中医協の入院医療等の調査・評価分科会(尾形裕也分科会長)は9月8日、中間とりまとめ案を大筋で了承した。修文を経て、中医協総会などに報告する。2022年度診療報酬改定の入院に関して、調査を実施・分析し、技術的な課題を検討した。課題に対する具体的内容は示していないものの、次期改定の個別的な論点になる事項について、考え方を示唆する内容となっている。
 一般病棟入院基本料から地域包括ケア病棟入院料、回復期リハビリテーション病棟入院料、療養病棟入院基本料など入院基本料をはじめ、特定集中治療室管理料等、短期滞在手術等基本料、救急医療管理加算などの議論の結果をまとめた。DPC/PDPS等作業グループにおける分析や、個別病院へのヒアリングによる特別調査の結果も報告している。
 以下では、地域包括ケア病棟入院料等や救急医療管理加算に関して、同日行われた議論を紹介する。

地ケアの機能の多様性で課題
 地域包括ケア病棟入院料等(地ケア)は、①急性期治療を経過した患者の受入れ②在宅で療養を行っている患者の受入れ③在宅復帰支援─の3機能を担うとされる。しかし、この3つの機能の活用の割合が、病院により偏りがみられるほか、「自院の一般病棟から多数の患者を受け入れ、自宅等からの受入れが少ない病棟が一定数存在する」などの状況が確認されている。
 中間とりまとめでは、「地ケアの3つの役割について、その一部しか担えていない場合の病棟の評価については、他の場合と分けて考えて検討していくことについて、新たな要件も念頭に、地ケアの実態等についてさらに分析が必要、との指摘があった」と明記した。
 全日病会長の猪口雄二委員は、「地ケアが様々な活用のされ方があるのは、それ自体では問題はない」とした上で、「DPC/PDPSとの関連性が気になる。DPC対象病院に対し、今回特別調査を実施した『外れ値』との関連で、データを分析すれば、もう少しはっきりしたことがわかるのではないか」と、さらなる分析を要請した。
 DPC/PDPSから地ケア病棟への転棟については、患者の病態ではなく、DPC/PDPSの点数が地ケア病棟の点数を下回るタイミングで、転棟時期を決めている事例が確認されたことから、適正化が実施されている。
 また、今回の特別調査では、DPC対象病院の「外れ値」である、「在院日数が平均から外れた病院」のうち、「在院日数の短い病院」に対し、ヒアリングを実施した。ヒアリングでは、「他病院からの転院患者で、直接回復期病棟で受けることが困難な症例では、まず DPC 対象病棟で受入れを行い、必要な検査を行ってから、適した病棟へ転棟している。直接回復期病棟へ転院してくる例は少ない」などの回答が得られている。

救急医療管理加算の算定患者を明確化
 救急医療管理加算については、「救急搬送受入れの中心を担う二次救急医療機関の評価の観点および緊急に入院を必要とする重症患者を評価の対象としている」との位置付けを明確にした。
 一方、救急医療管理加算1は「項目ア~ケの重症度の基準が明確でなく、算定されている患者ごとの状態のばらつきや判断に係る施設間のばらつきが大きいこと」、救急医療管理加算2は「項目ア~ケのどの項目に準じて算定されたか等について、実態が明らかでない」といった課題を踏まえ、2020年度改定で、「入院時の状態に係る指標」や「入院後3日以内に実施した検査等」を摘要欄に記載することになったことを指摘した。また、救急医療管理加算2には、新たに「コ」(その他重症な状態)が追加された。今回の調査では、救急医療管理加算2を算定する患者で、「コ」に該当した患者が6割を占めることが示された。
 評価の対象となる患者の明確化をめぐっては、「救急患者は刻一刻と状態が変化するため、入院時の状態指標のみで評価することは難しい、との指摘があった一方、臨床現場での算定が簡便となるよう基準の定量化に努めたほうがよい、との指摘もあった」との分科会での議論の要旨を明記した。
 全日病常任理事の津留英智委員は、「救急医療管理加算については、都道府県により保険審査の判断が異なり、査定が厳しい地域では、加算『1』では認められないので『2』を選択するといった事例もある。このような状況の是正を検討して頂くことが望ましい」と述べた。
 分科会では、新型コロナの影響に関する実態調査も実施した。案では、「新型コロナ感染症患者の受入れ状況について、ICU等の有無や病床規模に着目した分析を行ったところ、ICU等を有する医療機関や、病床規模が大きい医療機関ほど、新型コロナ患者やそのうち人工呼吸器等を使用した患者を受け入れている割合が高かった」と明記された。
 これに対し津留委員が、「G-MISで報告のあった急性期病棟を持つ4,364病院のうち、新型コロナ患者の受入れ実績のある病院の割合は、400床以上で492病院と100%に近いが、400床未満でも割合は下がるが、実数では1,531病院と数多くが受け入れている」と指摘。「中小民間病院は新型コロナ患者を受け入れていないという誤解を招きかねない」として、表現の変更を求めた。厚労省は意見として受け止め、分科会長一任で修文すると回答した。

 

全日病ニュース2021年10月1日号 HTML版