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ホーム全日病ニュース(2021年)第995回/2021年10月1日号介護医療院の理想と現実―これからの展望

介護医療院の理想と現実―これからの展望

介護医療院の理想と現実―これからの展望

【介護医療院協議会】介護医療院協議会議長 土屋繁之

 2018年4月、長期にわたり療養が必要な要介護者に「日常的な医学管理」や「看取りやターミナルケア」等の機能と「生活施設」としての機能を提供する施設:介護医療院が創設され、3年が経過した。そこで当協議会では、介護保険下で在宅施設の切り札的に創設された介護医療院が地域にどのように認知され、有効活用されているか3年前の全日病学会in愛知でご講演いただいた3名の演者に再度ご講演いただき、実際の運用状況をご提示いただくことにした。
 まず、厚生労働省の平子哲夫老健局老人保健課長より、介護医療院の現況とコロナ禍における療養施設の感染症対応についてお話いただいた。今年3月末時点での介護医療院療養床数は35,442床、地域包括ケアシステムの推進、自立支援・重症化防止取組推進などの取組みについて説明がなされた。
 次いで、私から当協議会で今年5月に行った介護医療院現況アンケートの結果を説明した。当会会員で介護医療院を有する152病院にアンケートを送り、85病院(55.9%)から回答いただいた。在宅療養施設として有用と回答された病院は87%, 経営状況良好と回答されたのが74%と、概ね満足している印象である。また、これからの介護医療院を地域貢献できる可能性のある施設とお考えの病院が、およそ半分であり、今後更なる発展が期待できる施設と思われた。自由記載では、介護基本報酬の底上げ、介護保険手続きの簡素化など厚労省への要望が多くあり、平子課長にお伝えした。
 次いで、猿原大和先生より自院大規模介護医療院の奮闘ぶりが披露された。積極的に看取りとなる入居者を受けると、死亡退居者が増えベッド稼働率が低下する。在宅からの緊急入居者は介護度が低い方が多く、在宅へ戻せる可能性も高く自立支援施設として機能するが、収入面での貢献度は低くなる。しかし、看取りをはじめ介護医療院が果たせる役割は多岐にわたっており極めて重要な施設と思われる。従って機能に見合った介護報酬の適切な評価がなされることを期待したいと切実なお話をいただいた。
 本庄弘次先生から、地域包括ケア病床と介護医療院のケアミックス病棟としての機能をお話いただいた。在宅生活を支え、地域連携後方支援病院として看取りをはじめ感染対応、災害対応などフレキシブルな対応ができる施設である。しかし、現在の経済的基盤では医療処置に積極的に対応できないため、出来高で医療保険が活用できれば更に機能が拡がる可能性を示唆された。
 そして、本郷俊之さんからは小規模介護医療院(病棟50床中19床が介護医療院、31床地域ケア病床)の経済的特徴を説明いただいた。在宅から緊急で受け入れることの多い地域包括ケア病床の受け皿として、また別棟の医療療養病床の受け皿として現在は有効活用できている。しかし、人員配置はかなり厳しく、特に地域包括ケア病床とのケアミックスでは配置緩和が検討されても良いのではという指摘があった。
 各演者の講演内容は、介護医療院が持つ機能の有用性と今後多岐にわたり地域に根差し、貢献できる施設としての介護医療院の姿が提示された。地域包括ケアシステムの構築は、このコロナ禍で休止状態にあるが、介護医療院の持つ機能は地域における在宅療養の受け皿として大いに活用される可能性があることが示唆され、しっかりとその機能を発揮するための経済的基盤の確立が必要であることが明確となった。現場の意見に沿った適切な見直しがなされることを切に願うものである。

 

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