全日病ニュース

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ホーム全日病ニュース(2021年)第995回/2021年10月1日号外国人技能実習生に対する「介護福祉士国家試験合格」の支援

外国人技能実習生に対する「介護福祉士国家試験合格」の支援

外国人技能実習生に対する「介護福祉士国家試験合格」の支援

【国際交流委員会】全日病外国人材受入事業 担当役員 山本 登

 外国人技能実習生受入は様々な問題を包含しているが、2017年11月に改正施行された「新」技能実習制度には、実習生の保護と新たに対人職種「介護」が追加された。折しも将来人口推計では「介護人材の不足は数十万人に及ぶ」との結果から、全日本病院協会が会員サービスの一環として「団体監理型」の監理団体となって、外国人材の受入に携わることとなり、国際交流委員会は主にベトナム(後にミャンマーも)を対象国として各種準備を行ってきた(前回発表)。
 2018年からの受入予定であったが日越両国の思惑の相違からか、ベトナム側による送出機関の許可遅延(制限)もあり、実習生の入国時期・人数は大幅に遅延・縮小した。加えて日本側からは、官邸主導(骨太方針)で唐突に新しい在留資格の「特定技能」が同年12月に成立・発布され、対応に余儀なく、当初の全日病スキーム:VN3年制看護短大卒・日本語能力N3の実習生(松コース;高度人材育成、EPAの民活版)に加え、若干条件を緩和した竹コース(ミャンマー含む)、特定技能の梅コース(技能実習からの乗換え含む)を追加した。
 以上の経緯を座長より説明、今回の委員会企画のテーマである日本語教育支援に関しては3名の演者がそれぞれの立場から問題提起を行った(①日本語教育者;村上まさみ構成員、②実習生;TRAN THI LE HANG、③ 受入施設;赤松幹一郎・当事業副担当役員)。
①日本語教育者の立場からは、松コースの技能実習生は総じて優秀で1号⇒2号への移行は問題ないが、日々の業務、疲労蓄積から学習の習慣が薄れる傾向もあり、2号以降の専門領域学習に際しては間隔の開く通信教育より、リモート等を駆使した相談可能な方法が有用、更に「国家資格」より「JLPT-N2」取得の方を優先する傾向が見られるとのことであった。
②HANG実習生(東広島市、井野口病院、当日は民族衣装アオザイ着用、写真)からは、受入れ病院の対応への感謝と同時に、日々の勉学・業務の様子と国家資格取得への弛まぬ努力と意欲が、明瞭な日本語で語られた。また、他施設(介護系)での実習生が既に残業や夜勤に入って相応の収入を得ていることから、自施設での立場(病院⇒看護補助)故にそれが叶えられないことへの不満が述べられた(来日前・マッチング時に説明済)。


③受入施設(富田林市・金剛病院)からは受入に際し、メリット・デメリットを勘案し決定、事前諸準備(アッセッサー養成、通訳の雇用等含む)を経て実現に至ったこと、受入後は「介護技能実習教育」「日本語教育」「介護福祉士国試対策」への注力(進行中)、及び様々な問題点等が述べられた。
 その後、図1の課題に関し、関連事項も含めDiscussionを行った。
 コロナ禍の現状では様々な制約・不備は避け得ないが、2号以降は国家資格取得に向けての種々のハードルを越えねばならない。技能実習下では3年の実務経験は3号に移行した段階、もしくは特定技能に乗換えた段階で要件を満たすことになり、一期生に関しては監理団体・受入施設ともに優良要件を満たしておらず、前者は2期生以降の選択肢となるが、後者は実務多忙のために国家資格取得に向けた勉学の時間が確保し難いと想定される。試験期日も勘案すると特定技能移行後、数か月以内の早期に受験できるように、実務者研修等は早い段階から終了しておく必要がある。国試合格、優良認定取得を達成すれば在留資格「介護」にて長期滞在が可能となり、全日病スキーム「松コース」への評価も上がり、好循環に持っていける可能性は大である。
 特定技能の出現により、「梅コース」のみならず技能実習2号終了後に「特定技能への乗換え」が趨勢を占める可能性も想定され、その対応、スキーム見直しにも言及した(図2)。

 

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