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ホーム全日病ニュース(2021年)第996回/2021年10月15日号医療安全管理体制相互評価を進めるために

医療安全管理体制相互評価を進めるために

医療安全管理体制相互評価を進めるために

【医療の質向上委員会・医療安全担当委員会】医療の質向上委員会・医療安全担当委員会 今村康宏

 医療の安全確保は、我々医療従事者全員が取り組まなければならない必須の責務である。言うまでもなく医療安全の根底には、医療の質向上に向けたたゆまぬ取り組みがあり、その結果として安全確保が可能となる。医療安全と医療の質向上は不可分である。
 そして、医療機関で行っている種々の取り組みを自己評価し、他者から評価され、また他者を評価する機会を持つことは、組織とその担当者にとり大変意義深いことである。
 2018年4月の診療報酬改定では、医療安全対策地域連携加算が新設された。しかし、相互評価の方法や内容は標準化されていない。標準化された同一の考え方、同一の評価基準、同一の評価表で、自己評価し、他院の評価を受けることが重要である。こうした経緯で、当委員会では医療安全対策地域連携加算に適切に対応するために、飯田修平委員が中心となり「標準的安全管理点検表」を作成した。
 本企画は、同制度の意義を理解していただくとともに、標準的安全管理点検表を用いて相互評価を実践する際の参考にしていただくことを念頭に企画した。当然ながら、限られた時間内に相互評価のすべての内容をお伝えすることは不可能であり、当委員会で毎年開催している医療安全相互評価研修会(1日半コース)受講をお勧めしている。お互いの情報交換の礎となる人脈形成にも役立つ本研修会に是非参加をお待ちする。
【企画の趣旨】
 座長の飯田修平委員が本委員会企画の趣旨について説明。評価の標準化・一般化を目的として当委員会で作成した「標準化医療安全管理体制相互評価点検表」を紹介した。
 相互評価は、お互いの質の向上を目的とした非常に大切な取り組みである。特定機能病院の承認要件でもピアレビューの実施が規定されている。厚労省通知、疑義解釈を紹介して、現状について問題点を含めて説明した。
 飯田班で行っている相互評価の研究(厚労科研)にご協力のお願いをした。
【相互評価点検表の役割】
 永井庸次特別委員が相互評価点検表の役割について解説した。
 点検表は医療安全の適・不適を測る尺度であり、院内の医療安全管理体制の構築と組織的運用を問うもの。手順やマニュアル、教育の有無だけでなく遵守状況を検証する。
 心得・留意事項として、病院全体で展開し、個人ではなく組織の仕組みと成果を評価すること、データの傾向を観察すること、進行中の状況についてランダムに選択して評価すること、改善策を検討実施すること、などが強調された。
【相互評価の留意点】
 長谷川友紀東邦大学教授が点検表の概要と相互評価の実際の留意点について説明した。評価には総括的評価と形成的評価がある。相互評価は後者であり、「改善すること」が目的である。
 評価の留意点について、仕組みがあるかないか、横展開がされているか、持続性はどうか、などを複数の情報源で確認することが大切。評価の目的を理解して、確認の機会を失しない事実確認を行う。
 ルールのチェックポイントについて説明。策定はどこの部署がしているか、範囲や承認のしくみ、内容について(粒度が適切か)、業務フローとの整合性についての監査の仕組みがあるか、ルールの順守率はどうか、などを把握することが重要。
 相互評価は日々の活動が組織的に実施されているかを点検できる上、継続的な組織の質改善のチャンスともなる重要な取り組みであることを強調した。
【相互評価の実際】
 練馬総合病院の安藤敦子師長(専従安全管理者)が、相互評価の実際について、評価を受ける側、評価する側から実際の経験をもとに解説した。評価の実際の場面を彷彿とする臨場感ある内容であった。まとめとして、「地域連携」という視点から、地域での医療者間の相互評価による改善活動を通して地域における安全文化の醸成につなげる視点が大切であると強調した。
【質疑】
 相互評価の実際における留意事項やコツについて、また今後の展望などについて、講師間で意見交換した。
 評価者の訓練も大切な課題であり、これに対する研修として当委員会で行っている医療安全相互評価に関する研修会のご案内を飯田座長が改めてした。
 相互評価の副産物として、評価活動後は地域の医療機関の担当者間でお互いに顔が見える関係になり、密に情報交換をしやすくなったと安藤講師が報告した。

 

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