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ホーム全日病ニュース(2021年)第998回/2021年11月15日号医療法人の事業報告書等のデジタル化で省令改正

医療法人の事業報告書等のデジタル化で省令改正

医療法人の事業報告書等のデジタル化で省令改正

【社保審・医療部会】「閲覧」に関し、医療団体から様々な懸念示される

 厚生労働省は11月2日の社会保障審議会・医療部会(永井良三部会長)に、医療法人の事業報告書等の届出・閲覧のデジタル化の方針を提案した。医療法人が都道府県知事に届出の義務がある事業報告書等は現在、紙で届出・閲覧されているが、電子的に届出・閲覧ができるように、省令改正等を行うとともに、データベース化する。
 医療団体の委員は、事業報告書等のデータが無制限に閲覧されることに懸念を表明。都道府県が運用する際には、一定の制限を設けることを求めた。
 医療法人の運営の指導監督や許認可は都道府県知事が行っている。2016年6月に成立した改正医療法で、事業報告書等の都道府県での閲覧が義務化された。一方、政府の骨太方針2021では、デジタル社会に向けた重点計画として、「事業報告書等をアップロードで届出・公表する全国的な電子開示システムを早急に整え、感染症による医療機関への影響等を早期に分析できる体制を整備する」と盛り込まれた。
 これを受け、厚労省は今回、3点の提案を行った。①事業報告書等のアップロードによる届出・電子的な閲覧を可能とする②届出データが集積されたデータベースを構築する③届出内容を公表する全国的な電子開示システムを構築する─である。
 現状で、紙による事業報告書等の届出・閲覧は、医療法人・都道府県の事務負担を大きくしていると、厚労省は指摘した。また、国・都道府県が医療法人の経営実態を把握する上で、事業報告書を一覧的に把握できる仕組みがないことも強調した。デジタル化により、それが改善できるとの考えだ。
 届出については、医療機関の病床、医療従事者、医療資材などの稼働状況を一元的に把握し、新型コロナ対応でも活躍している医療機関等情報支援システム(G-MIS)へのアップロードにより、届出ができるようにする。これにより、補助金などによる医療法人への支援もより適切になるという。
 ただ、医療団体代表の委員からは多くの懸念が示された。日本医師会副会長の今村聡委員は、「個別の医療機関の経営情報が、簡単に誰でも見ることができるようになって、行き過ぎた営業活動に使われることなどを危惧する。現状で都道府県は様々な閲覧の手続きを決めており、一定の制限を行っているところもある。電子化した事業報告書等の閲覧の際も、本人確認や閲覧の記録、ダウンロードの制限といった対応が可能なのではないか」と述べた。
 全日病の神野正博委員は、「デジタル化の推進については、何の異議もない。しかし誰でもいくらでも閲覧できるというのはいかがなものかと思う。また、医療機関へのより適切な支援にも役立つというのは結構なことだが、それは付随的な目的であり、『閲覧』のデジタル化が(説明責任や透明性が)目的であることとは区別して説明すべきだ」と指摘した。
 厚労省は、紙での「閲覧」と電子媒体での「閲覧」の法的な取扱いは全く変わらないと強調。都道府県が現状で、紙での「閲覧」の際に設けている手続き上の取扱いは、ホームページにおけるダウンロード等においても、同様に講じられることができるとの考えを示した。
 一方、「届出内容を公表する全国的な電子開示システム」の構築は、今後の課題とされた。こちらについては、社会福祉法人同様の事業報告書等の開示を求めるなど、「閲覧」の内容そのものに関わる問題となっている。
 なお、厚労省は、早期にデジタル化を進める観点から、届出のデジタル化は2022年度、閲覧は2023年度から都道府県が運用を始められるよう省令改正等を行うとの予定を示した。

2022年度改定の視点等を了承
 医療部会は同日、2022年度診療報酬改定の基本認識、視点、方向性を概ね了承した。
 視点は、①新型コロナ等にも対応できる効率的・効果的で質の高い医療提供体制の構築(重点課題)②安心・安全で質の高い医療の実現のための医師等の働き方改革等の推進(重点課題)③患者・国民にとって、身近であって、安心・安全で質の高い医療の実現④効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上─の4つとなった。重点課題は、新型コロナ対応等と医師等の働き方改革であり、医師等の働き方改革は2020年度改定でも重点課題であった。
 神野委員は、新型コロナ対応等について、「診療報酬は診療行為の対価との位置付けがあり、病床確保策を診療報酬のみで行うことは難しい。その意味では、補助金の役割として病床確保策があることをどこかに明記しないと、診療報酬だけでやるというとミスリーディングになる。補助金がきちんと出れば、民間病院も対応できる」との考えを改めて示した。
 また、視点4「効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上」の観点で示された「重症化予防の取組みの推進」について神野委員は、「生産年齢人口の減少を補うため、健康寿命を延ばさなければいけないという『効率化・適正化』の観点の必然性はわかるが、重症化予防の具体策は、視点3『患者・国民にとって、身近であって、安心・安全で質の高い医療の実現』にもう少し盛り込むべきではないか」と提案した。

 

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