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ホーム全日病ニュース(2021年)第998回/2021年11月15日号がんや難病、アレルギー疾患の対策をテーマに議論

がんや難病、アレルギー疾患の対策をテーマに議論

がんや難病、アレルギー疾患の対策をテーマに議論

【中医協総会】現場の実態に合わないケースに対応し診療報酬を改善

 中医協総会(小塩隆士会長)は10月22日、2022年度診療報酬改定に向け、がんや難病、アレルギー疾患の対策をテーマに議論を行った。診療報酬の算定要件などが現場の実態に合っていないケースなどが報告され、診療報酬の見直しにより改善を図っていく方向だ。診療側は賛意を示したが、支払側は、いくつかの論点で慎重な対応を求めている。
 外来に通院しながら抗がん剤治療を受ける患者が増えてきているなかで、外来化学療法加算の評価を引き上げることが論点となった。多職種共同の実施体制や緊急時の対応のための負担などが評価に見合っていないとの現場の主張を踏まえた。治療と仕事を両立させる観点でも、外来化学療法の推進が求められていると厚生労働省は指摘した。
 診療側の委員からは賛意が示されたが、支払側の委員は、入院での化学療法の評価との関係を含めて、メリハリのある対応が必要と主張した。
 外来化学療法実施時の栄養指導については、がん病態栄養専門管理栄養士を配置することが、通院時の患者の食事摂取割合の改善や体重の減少割合、入院日数が延長しないことに効果があるとのデータが示された。がん病態栄養専門管理栄養士は、日本栄養士会と日本病態栄養学会が共同して認定している資格。
 一方、外来化学療法実施時の栄養指導の診療報酬では、外来栄養食事指導料などで、管理栄養士による患者への指導を評価している。
 外来栄養食事指導料については、「外来化学療法加算連携充実加算の施設基準に該当する管理栄養士が具体的な献立等によって月2回以上の指導をした場合」という算定要件がある。しかし、がんのレジメンで、抗がん剤の投与が3週間に1度のものがあり、その場合は、月2回以上の指導が行えない。このため、この問題への対応が求められた。
 これらの問題に対し、委員から一定の理解が得られた。

がんゲノム検査の報酬設定見直し
 がんゲノムプロファイリング検査については、予期せぬ患者の早期の死亡などで、治療方針を決定する専門家会議であるエキスパートパネルの結果を踏まえた結果説明時の診療報酬(48,000点)が算定できない事例が一定数あることへの対応が論点となった。
 患者が死亡すればエキスパートパネルは実施されないが、結果説明時の診療報酬が検査の報酬の大半を占める。がんゲノムプロファイリング検査では、検体提出時に8,000点、結果説明時に48,000点を算定できる(下図を参照)。
 診療側の委員は、「結果として、費用が持ち出しになってしまうことがある。病院が赤字にならない対応を取ってほしい」と主張した。支払側の委員からは、がんゲノムプロファイリング検査の委託費用をきちんと把握した上での、報酬での対応が必要との考えを示した。
 また、放射線治療病室管理が行われた悪性腫瘍の入院診療を行った場合は、放射線治療病室管理加算(1日2,500点)を加算できる。この場合の管理とは、「密封小線源」あるいは「治療用放射性同位元素」(RI内用療法)により、治療を受けている患者の病室の管理を指す。
 ただ、RI内用療法では、密封小線源治療の患者の病室と比べ、出入口付近に汚染の検査に必要な放射線測定器を設置するなどにより厳格な基準が設けられている。また、RI内用療法を実施すると、病室内に放射性物質が拡散するため、一定期間のクールダウンが必要とされ、その間、新たな患者を受け入れることができない。
 このため、放射線治療病室管理加算の評価のあり方が論点となった。診療側の委員は、密封小線源治療とRI内用療法の評価を区別することを提案した。支払側も一定の理解を示した。

診療情報提供料(Ⅲ)の改善図る
 難病対策では、10月20日の外来をテーマとした総会の議論で、糖尿病の専門医療機関の連携において、診療情報提供料(Ⅲ)が算定できないケースが論点になったのと同様に、てんかん診療において、診療情報提供料(Ⅲ)が算定できないケースが論点となった。
 てんかん診療では、国が国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センターをてんかん全国支援センターに指定するとともに、都道府県単位でてんかんの治療を専門に行うてんかん支援拠点病院を設定し、ネットワーク作りを進めている。
 一般のてんかん診療を行う医療施設を受診していた患者が、てんかん支援拠点病院などで継続的に診療を受け、てんかん支援拠点病院が一般のてんかん診療を行う医療施設に対して、診療情報を提供する場合に、てんかん支援拠点病院が診療情報提供料(Ⅲ)を算定できないケースが指摘され、見直しが課題となった。
 診療側は「不合理がある場合の改善」を求めたが、支払側は、診療情報提供料(Ⅲ)の算定要件が、緩和されていくことに対して懸念を示した。
 アレルギー疾患対策については、児童などのアレルギー疾患有病率が増加しているなかで、主治医が保護者を通して学校に提供する「学校生活管理指導表」によるアレルギー疾患の情報提供について、診療情報提供料(Ⅰ)を算定できるようにすることを論点とした。医療的ケア児については、現状ですでに診療情報提供料(Ⅰ)を算定できる。
 診療側の委員は賛意を示したが、支払側の委員は、これまで保護者が医師に情報提供の費用を自費で支払っていることが多いとされていることから、まずは現状の把握を求めた。

 

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