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ホーム全日病ニュース(2021年)第998回/2021年11月15日号精神医療と療養・就労両立支援等の診療報酬を議論

精神医療と療養・就労両立支援等の診療報酬を議論

精神医療と療養・就労両立支援等の診療報酬を議論

【中医協総会】依存症や認知症、がん患者への心のケアにも対応

 中医協総会(小塩隆士会長)は11月5日、精神医療と療養・就労両立支援等をテーマに、2022年度診療報酬改定に向けた議論を行った。
 精神医療については、◇地域移行の推進◇在宅患者支援◇通院・在宅精神療法◇依存症診療◇児童・思春期精神医療◇認知症に関しての論点が示された。多くの項目で、現場の実態に合わせて、要件を緩和することなどが課題となっている。

地域精神医療体制の評価
 精神病棟に入院中に「精神科退院時共同指導料1」を算定した患者に対し、精神外来で多職種による支援・指導等を行った場合の評価である療養生活環境整備指導加算(月1回250点)については、入院を起点とした患者に算定が限られている。
 しかし、外来に配置した精神保健福祉士などが包括的支援マネジメントを提供し、地域とのつなぎ役を担うことにより、精神障害者の支援を充実させることができるとの説明があった。このため、外来における包括的支援マネジメントに基づいた相談体制の構築を図る観点での療養生活環境整備指導加算の評価のあり方が論点となった。
 精神疾患の患者に対し、多職種が実施する計画的な訪問診療や訪問看護を評価する「精神科在宅患者支援管理料」については、対象者が退院後の患者や特定の精神疾患で重症度の高い者に限られている。しかし、市区町村における精神保健相談では、未治療・治療中断や引きこもりの事例などへの対応の困難さを軽減するための方策として、「精神医療の充実」を求める声が多いことから、見直しが論点となった。
 「通院・在宅精神療法」については、精神保健指定医制度が見直されて、資格の不正取得の防止と資質確保の観点から、厳正な評価が行われていることを踏まえ、措置入院後の患者に対して、精神保健指定医が支援計画に基づき、療養を提供する場合の評価が論点となった。

薬物依存症患者の増加に対応
 依存症については現在、患者数が増加傾向にあり、高齢者では処方薬、若年者では市販薬を原因とする問題が増えている。診療報酬では、外来で薬物依存症・ギャンブル依存症の集団精神療法を評価し、入院では、アルコール依存症のみ「入院医療管理加算」で評価している。近年、効果のある入院治療プログラムが開発されているにもかかわらず、特に、薬物依存症の診療を行う医療機関数が頭打ちとなっているという。
 このため、薬物依存症の入院医療での評価など、依存症への入院・外来医療の評価のあり方が論点となった。
 児童・思春期精神医療については、発達障害の診断における初診時の待機期間が長期化しているなどの問題が指摘されている。子どもと家族の心の問題に対して、地域の関係機関が連携する包括的な支援が、医療機関での対応時間を短くし、引いては待機期間が短縮すると期待されている。
 また、約5割の患者が2年以上の期間にわたって、診療を続けているという。しかし、診療報酬の「通院・在宅精神療法」(20歳未満)や「児童思春期精神科専門管理加算」、「小児特定疾患カウンセリング料」は、最初に受診した日から2年以内の算定期限を設けている。
 このため、これらの問題に対応できる評価の見直しが論点となった。
 認知症については現在、認知症外来診療における専門医療機関として、認知症疾患医療センターがある。認知症の疑いがある患者への鑑別診断と療養方針を「認知症専門診断管理料1」で評価し、症状が増悪した場合の対応を「認知症専門診断管理料2」で評価している。ただし、「認知症専門診断管理料2」は、認知症疾患医療センターの「連携型」の場合は算定できない。
 しかし、「連携型」の施設においても、身体合併症やBPSDに対する対応が行われており、症状増悪時への対応を評価することが論点となった。

療養・就労両立支援指導料を要件緩和
 治療と仕事の両立支援を促進させるための「療養・就労両立支援指導料」(初回800点)は、企業と患者が共同で作成した勤務情報を記載した文書に基づき、患者に療養上必要な指導を実施するとともに、企業に対して診療情報を提供した場合を評価している。この評価について、両立支援ガイドライン・手引きの見直しなどを踏まえ、様々な要件緩和が課題となった。
 具体的には、対象疾患に「心疾患」と「糖尿病」を追加することや、診療情報の提供先として、「衛生推進者」を含めることが論点となった。さらに、「相談支援加算」(50点)の対象職種として、現状の看護師と社会福祉士に、公認心理士と精神保健福祉士を追加することが論点となった。
 がん患者に対する緩和ケアの推進に向け、医師・看護師が心理的不安を軽減するための面接を行った場合を評価する、がん患者指導管理料(200点)については、対象職種に公認心理士を追加することが論点となった。
 これらの論点に対し、診療側は概ね賛意を示し、支払側も多くの論点に対し、理解を示したが、一部の論点に対しては、さらなる検討を求めた。

日医の江澤常任理事らが新任委員
 新任の中医協委員として同日の中医協から、松本真人委員(健康保険組合連合会理事)、鈴木順三委員(全日本海員組合総務局長)、江澤和彦委員(日本医師会常任理事)、羽田健一郎専門委員(長野県長和町長)、中村春基専門委員(チーム医療推進協議会代表)、青木幸生専門委員(丸木医科器機株式会社参与)が参加している。

 

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