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ホーム全日病ニュース(2022年)第1001回/2022年1月1日・15日合併号85歳以上の高齢女性が急増する社会の中で生活とつながるおしゃれ感覚の病院経営へ

85歳以上の高齢女性が急増する社会の中で生活とつながるおしゃれ感覚の病院経営へ

85歳以上の高齢女性が急増する社会の中で生活とつながるおしゃれ感覚の病院経営へ

全日病広報委員会企画 新春座談会Ⅰ 女性経営者に超高齢社会の病院のあり方をきく


松田晋哉教授

松田
 新年明けましておめでとうございます。
 すでに地域により起きている未来の姿でもありますが、医療、介護、生活、住まいのすべての側面で、支援が必要な高齢女性が日本の超高齢社会では急増します。こうした高齢者のサポートを日々行っている3人の女性経営者に、今日は、課題解決のための処方箋を、新年ということですので、「明るく」議論して頂きたいと思います。
 例えば、北九州市の85歳以上の人口は、女性が男性の3~4倍です。85歳の単身女性の医療や介護、生活のニーズがすごく膨らんできていますが、医療や介護政策が、その視点であまり議論されていません。
 課題の一つが、生活への配慮です。生活に配慮することにより、病院は新たなソーシャルビジネスをつくれますし、それによって経営も安定し、地域貢献もできるということです。
 増える高齢女性患者をどうサポートするか。団塊世代が後期高齢者になると、慢性期あるいは介護をベースに、そこから発生する急性期のイベントが多くなります。生活と医療の連続性のある複合的なニーズにどう対応するかが課題です。また、ジェンダーの視点も考慮しないとよいサービスにはなりません。
 最初に、病院の高齢者のケアについて、急性期、回復期、慢性期の順でお聞きします。まず、急性期は石川先生にお願いします。
石川
 急性期ケアミックス型のHITO病院と石川ヘルスケアグループは、「生きるを支える医療・介護・福祉の実現」を理念に掲げています。
 四国中央市の人口は8万5千人で、高齢化率は30%。この2~3年で80歳以上の高齢者の入院が増えました。急性期ケアミックス型の病院として、食べること、自分らしく歩くこと、それから自分で排泄できることが、在宅復帰の大きな課題だと考えています。
 在宅復帰されても、支える担い手が不足していますし、老老世帯や独居であることも多いので、テクノロジーを駆使しながら取り組んでいます。
 在宅などにつなぐため、介護系サービスと情報共有をしています。書面では難しいと思い、動画などで、食事を召し上がるときの量や飲み込むスピードなども共有できるように、できる限り「ときどき入院、ほぼ在宅」を実現できるように取り組んでいます。
松田
 回復期は橋本先生にお願いします。
橋本
 香川県と大阪府箕面市で、地方型と都会型の病院を経営しています。リハビリテーションが中心なので、生活に配慮した医療が必要だということは身にしみて感じています。
 回復期リハビリテーションの制度ができて20年になります。病院にいる間に、在宅復帰後の姿をしっかりみる、つまり家に帰ったらどう生活するのか、周りの人とどうコミュニケーションをとるのか―ということを想定してリハビリテーションを提供するのが、本来の姿だと思います。
 松田先生が指摘するように、確かに高齢女性が急増する社会ではあるのですが、私の感覚でいきますと、女性は割となんとかなるんですよね(笑)。
 1人で家に帰っても、コミュニケーション能力は男性より高いので、困れば近所の人に助けてもらったり、近くの若い子に助けてもらったりと、何とか生活ができる高齢女性が多いと感じています。むしろ、男性のほうが困難を抱える人が多いという印象です。
松田
 男性のほうが困難を抱えるというのは、そのとおりで、私の分析でも、虚弱から介護保険に入るのは、男性のほうが早いという結果が出ています。家事能力がないので、それがトリガーの1つになってしまうようです。
 女性は単身で認知症があっても、在宅でどうにかやっている人が多いですね。ただ、2040年を考えたときに、どうなるのかと心配ではあります。
 というのも、今の高齢者は比較的恵まれています。制度や福祉サービスがそろっていて、国もお金を出す余裕がまだある程度あります。ところが、20年経ったときに、今の高齢者と同じサポートが受けられるかというと難しい。
 また、日本は、病院や介護施設が、地域の高齢者が生きていくために必要なものをもっているにもかかわらず、閉鎖的です。一方、海外の施設は、施設の社会化を進めていて、地域の高齢者が病院のレストランに食事に来たり、病院が地域の安全を保障するパブリックなものになっているんです。日本でも、病院や介護施設をもっとオープンにしていくことが大事だと思います。
 田中先生は、地域に病院や施設の機能を開放していますね。
田中
 内田病院(群馬県沼田市)の周辺は、全国よりも高齢化が進展していて、入院患者に占める高齢患者の割合は非常に高くなっています。貧困の問題も深刻です。家族がいても、お金を支払うことができない家庭も多く、「8050」ではなく、「9060」が現実です。
 生活保護につなげるまでの間をどうするかという問題もあります。今後、経済力がないし、頼るところもないという、大変な状況の高齢者がさらに増えていくのは、間違いないと思います。
松田
 2つのテーマが出てきました。
 まず貧困の問題。問題は、生活保護の対象ではないが、十分暮らしていくだけのお金はなく、持ち家はあるケースです。持ち家は資産ですが、成長があまり期待されていない地域は、資産価値がなく売れません。生活保護より少しお金がある人たちが、介護が必要なのに利用しない、というケースが今ものすごく多い。
 高齢者の食事の調査をしたことがあるのですが、一週間つくり置きをして、それを少しずつ食べるという、単調で栄養面でも問題のある食事をしている人たちが、何かイベントが起こって、急性期に運び込まれると、もう自己負担が払えず、退院先もないんです。
 もう1つはリハビリテーションです。現在の回復期リハビリテーションは、どちらかというと、脳卒中モデル、骨折モデルです。しかし、心不全や肺炎といった、虚弱な状態がベースにある人たちのリハビリテーションをどうするのかという概念が抜けています。
 また、85歳以上では、ロボット技術や福祉用具をうまく使い、残存機能を支援するというリハビリテーションが必要になります。その点が介護では弱いので、心配しています。
 石川先生はロボット技術やICTの活用に積極的ですが、どうですか。


石川賀代理事長

石川
 サイバーダインの「HAL腰タイプ」など装着型の機械を用いたリハビリテーションは、通所リハビリで継続して使っています。高齢者の場合、「できた」という、自分がやれたことに対してのモチベーションをどう作ることができるかが、大事です。
 また、職員同士の振り返りのカンファレンスのために、スマートフォンをグループで共有しています。急性期病院の職員は、生活の視点といわれてもピンとこないところがありますが、ケアマネジャーからのフィードバックで、サービスは多ければよいということではないと教えるなど、介護からのフィードバックはとても重要です。
 病院から退院させるだけでは患者を支え切れません。SNSのやりとりだけでも、情報共有は早くなります。多職種で情報を共有するツールとしては、スピードと、「一度に」が叶う点で、スマートフォンのアプリを使ったICTの活用は優れていると思います。
在宅での回復期リハビリ
日本でも仕組みの検討を

松田
 病院への入院でADLが低い患者がとても増えています。これからは急性期病棟で、ADLケアやリハビリケアを行う職員を、人員配置基準で定めて入れていくべきかもしれません。
 実際、「重症度、医療・看護必要度」で分析すると、入院期間が長くなればなるほど、どの病気で入院してもADLは下がります。そういう患者を受け入れるリハビリテーション病院は大変だと思いますが、橋本先生のところでは、どうでしょうか。
橋本
 回復期リハビリテーション病棟は、成果を上げていると思います。
 ただ、私たちがみていますと、脳卒中の片麻痺や失語などを改善するリハビリテーションのスキルや知識は、当然必要なのですが、それは半分くらいで、あとの半分は、脳卒中だろうと整形だろうと心不全だろうと肺炎だろうと、すべて廃用症候群になるんです。
 急性期の病院で、例えば、「尖足」にならないような対応があれば、リハビリテーションに入るまでのタイムラグが減ります。
 それから、廃用になることに加えて、フレイルですね。急性期から栄養状態が悪い状態で来ることもあるので、きちんと栄養状態を保つことです。
 急性期の病院で食事がストップして、当然栄養状態が悪くなりますよね。その状態を改善させてから、リハビリテーションを行うことになるので、そこはきちんと考える必要があります。
 極端な話、急性期が終わり、リハビリテーションができる状況を評価できれば、そのまま家に帰っても、リハビリテーションはできると思っています。
 そういう制度がないので実費になりますが、在宅で回復期のリハビリテーションを行うクリニックをつくりました(千里リハビリテーションクリニック東京)。できる限り短期間の入院にして、急性期後はすぐに自宅に帰り、回復期と同じくらいの濃度のリハビリテーションを入れていきます。
 胃ろうが必要な人も、介護が必要な人も家に帰れます。コストはかかりますが、みるみるよくなっていくんです。
松田
 フランスでは在宅入院制度があります。患者の家のベッドを病院のベッドとみなして、そこでリハビリテーションや化学療法、術後のケアをします。とても効果を上げているんです。日本でもそういう仕組みを入れられたらいいと思います。
田中
 私たちのところでは認知症の人の回復期をあえて受け入れています。認知症で、なおかつ高齢の患者さんのアウトカムを出さなくてはならず、生活の支援の大変さを感じています。時代を先取りしている地域なので、これから全国でも、こういうことが求められていくのだろうなと感じます。
 もともと障害がある方が高齢になり、認知症や合併症や、生活能力の低下など対応しなくてはならないことが増えます。制度の縦割りで、障害、生活保護、介護の部門とうまく連携をしながら、一人の人をみていくことは本当に大変です。
 障害者病棟もあるのですが、障害児のレスパイト入院を引き受け、母親が疲れてしまった時、お子さんを定期的に預かっています。家族単位でみないと解決しないことが多く、身体障害の子どもをこれまで親がみていたけれど、親に認知症が出たケースなど、一方だけでは、生活を支えられないのが現状です。
松田
 認知症も入ってくると、家族を単位としてみることが重要な視点ですね。家族単位で在宅もつなぐことになりますと、使い勝手のよい在宅のモニタリングシステムなども入れていく必要があると思いますが、そういう点から、石川先生のところで作られたスマートフォンで健康管理ができる「HITO │BAR」に注目しています。
石川
 「HITO │BAR」を作ろうと思ったのは、高齢者の方でもスマートフォンをもっている方が増えたからで、職員がアプリをインストールし、血圧や血糖測定をBluetoothで接続します。健診データも、アプリで閲覧できます。昨年から始め、登録数が5千人程になりました。
 スマートフォンでみることができると、例えば、かかりつけ医に健診結果を画像付きで提供できます。経時的な変化を家族とも共有できます。スマートフォンは、70歳以上でも保有率が6割を超えていて、多様な活用方法が考えられます。ライフログを取り、予防や未病にどうしたら使えるかというのが、今後の取り組みとして面白いかなと考えています。
かっこいいHPや建物
サービス業の視点持つ

松田
 高齢者の低栄養の原因として、姿勢が悪く食べにくくなっている人が結構いるようです。シーティングをきちんとしてくれるようなスマートチェアも出てくるのではないでしょうか。スマートチェアが、栄養改善やリハビリテーションにもつながっていくと思います。
 そういうものを、“かっこいいかたち”で医療の現場に持ち込むセンスが必要です。先生方の病院のホームページをみると、デザイン性がすごくあります。病院のホームページとはとても思えません。生活再建の場としての空間の工夫は、どのように考えていますか。


橋本康子理事長

橋本
 建物については、大きなお金をかけるので、自分の好きなように建てたいというのが根本です。ただ、ホテルやオフィス、学校の校舎でさえ、30年40年前の建物とは全然違うものに建て替えられています。それなのに、病院だけは、ほとんど似たものが建っていることが多いですよね。
 病院もサービス業に入っていますが、本気でお客さんと思っているのかなと思うところがありますね。病院食はまずくて仕方ないといわれるのも、ちょっと違うかなと思います。
 また、ICTの使い方にしても、いまはコロナ禍なので面会ができません。どの患者さんもそうですし、リハビリテーションの患者さんは特に、家族が来ないとものすごくダメージを受けます。そういうときに、ICT が活躍します。
松田
 日常性を越えて、プチ贅沢が病院に取り込まれているのがすごくいいと思います。田中先生のところは、食事を含めて、生活への配慮をとても上手にされているなと感じます。
田中
 地方なので、交通手段がないとお買い物に行くことも、おしゃれなお店に行くということもできないのです。
 でも病院には、なんらかのかたちで月に1回くらいは出てきます。家族もついてきます。そういうときに、病院にショップやレストランが併設されていれば、その日はイベントみたいな感じで、そのついでに受診という感じでいいのかな、むしろお楽しみがメインでもいいと思っています。
 きっかけは、患者さんたちをみたときに、茶色とグレーなんです。なおかつ、働いている女性が、自由に買い物に行ける時間が日中はないので、そこも救済できればいいかなと思って、ショップを院内につくったり、レストランも、歩いていける距離に作って、カフェにいったり、レストランに入ったり、温泉にも入ったり、「病院を受診するのもいいね」というようになればというのがきっかけです。
松田
 ポストコロナでは、その視点が重要だと思っています。いまはちょっと行くことができませんが、海外で類似の病院や施設をみて思うのは、そこに通っている人たちがおしゃれなんですよね。デイサービスに通っている男性は背広を着てネクタイ締めて、女性もそれなりの服装をして化粧もして…アクティビティも、ソーシャルダンスとかやっているじゃないですか。
 生活の再建を橋本先生のところではモットーに掲げていらっしゃいますが、生活を再建するということが回復期や療養病床に入院しているときに始まっているという、それによって、生活との連続性も出てくるのかもしれません。そう考えると食も連続していいと思いますね。病院の外食サービスがもっとビジネスになってもいいと思うんですよね。
 石川先生のところはいかがですか。
石川
 イベント食には力を入れています。患者さんが選べる食事というところでは、特に回復期では、脳卒中の患者さんは入院が長引きがちで、食事がマンネリ化すると楽しくないという声があるので工夫しています。
 配食では、クックチルの改良版が出て、おいしくできるようになってきています。ただ物流の問題が、地方では鍵を握っていて、どう届けるかが重要になります。配食だけではなく、買い物などをパッケージとして提供するということが、今後、必要なのかなと思います。
働き方改革への対応含め総合医をどう活用するか
松田
 働き方改革の話に移ります。
 医師の働き方改革の議論に参加していると、昭和時代の男性の頭で考えすぎていると感じます。でも、長い時間働かせることを前提にこれからの医療はできないと思っています。
 先生方からみて、時間外労働の上限はどのようにとらえていますか。
石川
 960時間を守るということは救急病院でも当たり前だと思います。それでも一般の方からすると、倍くらいの時間ですから。考え方の意識改革が必要です。場所や時間に縛られずにどう働くかを考えることが大事です。
 HITO病院は、高齢者医療が中心なので、救急のトリアージは総合診療医が行います。専門医と専門医の隙間を埋める人材を育成することが急務で、総合診療医が絶対必要です。それとあわせて、チーム医療などの多職種協働を活用する組織変革、意識変革です。
橋本
 医者が専門ではないのにやっていたことを、病棟薬剤師や管理栄養士、医療ソーシャルワーカーなどの専門職とのチーム医療でやれば、医師の仕事も少なくなり、専門に集中できます。
 チーム医療は田中先生のところも上手に行っていますね。
田中
 長けている人がいるのであれば、長けている人に任せようというところがあるのと、医局の先生たちもフラットなので、割とうまくチーム医療ができているのかもしれません。
 働き方改革で言えば、女性医師の問題は大きくて、かつての専門医の制度は結婚・出産ができないような建付けでした。子育てをしながら研修することがどれだけ大変か。本当になんとかしてほしいと思っていました。今でも様々な問題が指摘されていますが、いまの研修医制度になって本当によかったです。
 研修医をみていると、いまの若い女医さんたちは、賢くて強いと思います。クリアカットに物事を考えています。それでも結婚・出産をすると一線を離れなくてはいけないと思っているはずです。もっと女性経営者や女性教授などにフォーカスして、女性のあり方をもっと若い女性医師に教えていく必要があります。
松田
 ロールモデルが足りなさすぎるのだと思います。


田中志子理事長

田中
 先ほど話が出た総合診療医については、危険性も感じていて、教育者が少なく、“なんちゃって総合診療医”が多い。救急医療寄りの総合診療医と、地域医療寄りの総合診療医が混在しています。また、一般の人がどちらをイメージしているのかがつかめません。
橋本
 私も田中先生の意見に賛成で、地域医療を守る病院協議会に出ているのですが、いろいろな団体が入っています。“19番目の専門医”などと言われていますが、私としては「専門医?」と疑問に思います。総合診療医がこれから大事だというのですが、高齢者の医療になのか、どこに対してなのかわかりません。領域が広すぎて、議論している皆さんが全然違うことを考えているように思います。
松田
 私が考える総合医の一番大事な機能は、患者の代理人機能です。相談したときに、いろんなところにつなぐ。これをやっているのは、例えば小児科医です。母子健康手帳というツールがあり、生まれたときから小学校に上がるまで、母子健康手帳を通じて、診療もやるけど、困ったことがあれば、福祉や予防につなぎます。本当の小児科医は、総合診療をやっていると思います。
 もう1つ、総合診療が必要なのは高齢者です。複数の疾患をもち、介護保険には、そこは主治医意見書を書くことでつなぐ。老年科医を一つのひな形に総合診療とする考えもあるでしょう。
 総合医については、当面は2階建ての仕組みでもよいと思います。ずっと循環器でやってきた人が広くみたいので、リカレントの研修を受けて幅広にみられるようになっていく、そういう医者が総合医でいいように思います。
 総合医のこれからの重要な役割は看取りのデザインです。たくさんの人が死んでいくなかで、看取りをデザインしなくてはなりません。人の死をたくさん経験しないとできないことだと思います。自分自身でも、最初の10例目くらいまでの死亡症例は忘れられません。人の死をどれくらい見てきたかが決定的に重要です。これからの総合医とは、医師としての長い経験がある人がいいのではないかと考えています。
橋本
 私も賛成です。総合診療医というと、腎機能も悪い、肝機能も悪い糖尿病もある、貧血もある…そういうときに全部診るのが総合診療医ですよね。1つの専門をもったうえで、2階建て。総合診療医が、専門医より下にみられてしまうことも防げます。
田中
 地域医療をやる総合診療医であれば、慢性期医療なども医学教育に組み込むべきです。今の研修医の2年目の地域医療の研修は短すぎるので、医学教育で、5年生くらいの現場に出る意識が高くなったところで、せめて1、2か月くらい、看取りを含め高齢者の医療・介護を経験するべきです。
松田
 現場が変わってきているのに、医学・看護教育は変わっていません。
 最後に、先生方から、これからの医療の可能性について、10年程のスパンで考えていることを教えてください。
石川
 人生100年時代となり、機能回復を含めた再生医療やテクノロジーの活用が期待されます。また個別化した予防・未病に対応していくことも必要でしょう。医療分野のスペシャリストが、企業と共にヘルスケア事業にどう介入していけるのか、地域に根差した病院だからこそ蓄積されたノウハウを活かした対応ができると考えています。今後も新たな価値を様々な方達とつながり創出していきたいと思います。
橋本
 大学から一般の民間病院に入って、職業が違うと思えるくらい仕事が違うと感じました。それから30年経って、病床は半分以下でいいと思うようになりました。病院は特殊な場所なので、長くいる必要はありません。
 急性期は別ですが、回復期・慢性期は箱モノをたくさん作るのではなく、在宅にもっと資源を投入してほしい。東京で実際に訪問リハビリテーションをやると、びっくりするくらいによくなります。できるだけ家で医療をしていくという取組みを増やしていこうと思います。
田中
 教育が大事です。医師を始め、すべての職種で若い人に期待しています。研修医でさえ、身体拘束を体験すると、本当に縛ってはいけないんだということを、大なり小なり気づきがあるようです。その意味では若い人はピュアで力があります。ただ、その力を活かせる場を大人がつくっていない気がしています。
松田
 これからは在宅が大事で、究極はまちづくりです。高齢者も安心して暮らせるまち、そこには医療機関が必要で、まさかのときの入院機能がないと在宅を支えられません。それから介護も必要で、複合体という話になります。在宅の流れは止まりません。そこで、入院医療が連続性をもって支えるといううまい仕組み、うまいというよりおしゃれな仕組みをどのようにつくるかが大事です。
 今回、3人の女性経営者に参加していただいた大きな理由は、おしゃれなサービス事業者じゃないと若い人たちが入ってこないと思うからです。
 ぜひ、このままずっとおしゃれにやっていただきたいと思います。今日はどうもありがとうございました。

 

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  • [2] 病院のあり方に関する報告書(2021年版)

    https://www.ajha.or.jp/voice/pdf/arikata/2021_arikata.pdf

    加えて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で明らかとなった医療・介護分野に. おける諸課題は、国や各自治体、提供体制側それぞれにあり方の再考を迫るものである。

  • [3] 2021.9.15 No.994

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2021/210915.pdf

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