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ホーム全日病ニュース(2022年)第1001回/2022年1月1日・15日合併号医師事務作業補助体制加算や地域医療体制確保加算の充実を議論

医師事務作業補助体制加算や地域医療体制確保加算の充実を議論

医師事務作業補助体制加算や地域医療体制確保加算の充実を議論

【中医協総会】看護職の賃上げでは基本診療料の引上げ主張

 中医協総会(小塩隆士会長)が2022年度診療報酬改定に向けた議論を続けている。12月8日には、社会保障審議会がまとめた基本方針で重点課題に位置付けられている医師等の働き方改革への論点が示された。
 勤務医の負担軽減効果が中医協の診療報酬改定結果検証部会の調査などで確認されている医師事務作業補助体制加算については、医師事務作業補助者が実施可能な業務を新たに整理した通知が出されていることや、実務経験のある医師事務作業補助者だと、勤務医負担軽減の効果がより高くなるとのデータを踏まえた評価の見直しが論点となった。
 評価の考え方には概ね了解が得られたほか、診療側からは、急性期だけでなく、回復期・慢性期の病棟でも医師事務作業補助者を活用できる方向での要件緩和を求める意見が出た。
 医師への時間外労働の上限規制の施行に向けた対応として、2020年度改定で創設された地域医療体制確保加算については、現在年間2千件以上の救急搬送などが要件となっている。
 しかし、産科救急・小児救急・精神科救急医療では、救急搬送の受入れ件数が少なくても地域医療に必要な医療機関の場合があるなどの指摘を踏まえ、見直しが論点となった。特定の診療科に配慮することには、支払側・診療側の双方が賛意を示した。
 一方、医師の時間外労働の特例水準が認められる病院が策定する義務のある、医師労働時間短縮計画に沿った取組みを実施することを加算の要件に組み入れることに対しては、診療側が慎重な対応を求めた。
 また、政府の方針により看護職員の収入引上げが2022年2月から補助金で実施され、2022年10月以降は診療報酬での対応を含めた措置が検討されていることを踏まえた議論を行った。
 診療側は、10月以降も引き続き補助金で手当てすることが望ましいとしつつ、診療報酬で対応するのであれば、医療機関ではさまざまな職種がチームで医療を提供していることから、基本診療料の引上げを主張した。
 支払側は、介護報酬における処遇改善加算を参考に、確実に看護職員の収入引上げにつながり、それが検証できる仕組みの導入を提案した。実施前に故意に収入を下げる医療機関が出ないようにする対応も必要とした。基本診療料の引上げには反対した。
 日本看護協会の専門委員は、看護師の平均賃金が全産業平均よりも高いと指摘されていることについて、◇全産業は非正規も含むが看護師は正規職員が多い◇夜勤があり月額3~4万円の夜勤手当が含まれている◇賃金の伸びが他産業より低い―を主張した。その上で、政府が明言する収入の3%引上げの確実な実現を求めた。
 また、診療報酬の要件となっている対面を原則としている会議について、ビデオ会議などを認めるなどさらなる緩和でも概ね了解が得られている。

湿布薬の算定可枚数の制限で賛否
 中医協総会は12月8日、薬剤給付の適正化を議論した。湿布薬の保険給付範囲の見直しが論点となり、支払側がさらなる枚数制限を提案し、診療側は反対した。
 湿布薬については、2016年度診療報酬改定で外来患者に対し、1処方につき70枚を超える分は薬剤料を算定できないことにした。ただし、医師が医学上の必要があると判断すれば、その理由を処方箋および診療報酬明細書に記載することで算定できる。
 2020年度の処方枚数の分布をみると、64~ 70枚の区分で最も多く、次が29~ 35枚となっていた。このため、支払側の委員が、35枚までとすることを提案した。診療側は、「副作用が少なく高齢者への有用性が高い。枚数制限で必要量が満たせなくなり、内用薬等が増え、多剤服用になることは避けるべき」と主張した。

DPC データ提出で被保険者番号
 中医協総会は12月8日、DPC データベースと他のデータベースを連結して解析するため、退院患者調査(DPCデータ)を見直すことを了承した。
 2019年に成立した改正健康保険法により、DPC データとNDB・介護DBとの連結解析を行ってよいことにした。連結解析では、個人単位化された被保険者番号を識別子の一つとして活用することにしている。
 DPC データについては、2020年度改定により、K ファイル(生年月日、カナ氏名、性別から生成した一次共通ID)の収集を開始しているが、被保険者番号は含まれていない。見直しでは、病院が、従来のDPC データに加え、被保険者番号をDPC 調査事務局に提出。事務局でハッシュ化し、匿名化した状態の被保険者番号を格納する。この作業により、DPC データベースとNDB、介護DB の連結精度を向上させることができる。

複数再診でも逆紹介で選定療養
 中医協総会は12月10日、選定療養に追加する項目を了承した。病床数が200床以上(一般病床に限る)の病院の再診について、同一病院で複数科を受診し、ある診療科で他医療機関への逆紹介を受けたにもかかわらず、その診療科を受診した場合は、別の診療科で逆紹介が行われていない場合であっても、特別の料金を徴収することを認める。
 現行でも200床以上の病院で、200床未満の医療機関への逆紹介を受けた再診患者に対しては、特別の料金を徴収することができる。ただし、これまでは同一の病院で2以上の傷病で再診を行った場合、すべての診療科から逆紹介を行わない限り、特別の料金を徴収することはできなかった。

コロナPCR 検査の価格を引下げ
 中医協総会は12月8日、新型コロナの検査の保険収載価格の見直しを了承した。保険診療として実施しているPCR 検査などの価格を下げる。保険収載価格が自費検査価格に影響を与え、価格が高止まりしているとの指摘を踏まえ、実勢価格を踏まえた価格とする。
 具体的には、核酸検出(PCR)検査(委託)の場合、1,800点が700点に下がる。委託以外の場合は1,350点から700点に下がる。抗原検出検査(定性)では600点が300点、抗原検出検査(定量)では600点が560点に下がる。
 実施は12月31日だが、核酸検出(PCR)検査(委託)については、経過措置として、2021年12月31日から2022年3月31日までは1,350点とし、2022年4月1日から実施する。

 

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