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ホーム全日病ニュース(2022年)第1005回/2022年3月15日号電子カルテ・オーダリング等のシステム導入施設が8割超える

電子カルテ・オーダリング等のシステム導入施設が8割超える

電子カルテ・オーダリング等のシステム導入施設が8割超える

報告 2021年度 個人情報保護に関するアンケート調査報告 情報開示請求を受けた施設が過去最高に

 当会では、2006年より「個人情報保護法認定保護団体」の活動として、全会員施設を対象に個人情報保護管理に関する継続したアンケートを実施し、以来15年を経過した。
 アンケート結果は例年本紙にて簡易報告を掲載している。全体報告については、協会のホームページに掲載するので、詳細はそちらを参照されたい。
 なお、本年は経年評価は行わないこととした。

【調査方法等】
・調査票を病院個人情報管理担当者に①データ送信によるPDFファイル送信②メール利用による②郵送③FAXを併用送付し、自計記入後記名で、郵送、FAX、PDFにて返送された。・会員病院2,537病院(前年2,552病院(前年比▲15))・回答施設数419病院(前年623(前年比▲204))・回答率は16.5%(前年24.4%(前年比▲7.9ポイント))と回答施設数、回答率ともに前年比で大幅減少した。・経年評価のための連続提出施設は9年連続で21施設であった。・調査期間は2021年11月24日から12月24日、更に回収率向上の為、最終的に1月7日まで締切延長した。

【回答率】
 回答率は過去最も低い16.5%となり、初めて20%を割り込んだ。理由としては2点考えられ、1つは先行して設問が近しいコロナ禍の個人情報に関わるアンケートを実施したことである。2つ目は、その影響で、調査時期が年末年始の多忙期に後ろ倒しになった上に、期間が短くなったことだと推察している(表1)。
 以下、設問群毎に結果・考察を概要報告する。

【設問1.回答施設概要】
 設立主体、病床構成については例年と比して大きな変化は見られなかった。しかし、回答病院の病床規模を例年と比べると、①99床以下の割合は例年27~ 29%であったが、本年は43.4%と大幅に増加した。一方、②100~ 199床は例年35~ 39%程度であったが、本年は16.7% に減少、③200 ~ 499床も例年25 ~ 30%程度が14.1%へと落ち込み、規模が大きな病院からの回答数が減った。

【設問2.組織的対応】
 2(1)個人情報管理責任者、(2)監査責任者の設置の有無、設置職種についての設問では、全体として特に変化は見られない。
 2(3)規定、誓約書等整備では変化は見られなかった。(4)掲示物についてもホームページへの掲載を含めて60%程度が既に整備・対応している傾向に変化はない。
 2(5)から(8)は情報システムに関わる設問である。
 2(5)電子カルテ・オーダリングシステムの導入状況では、①の電子カルテ・オーダリングの両方を導入している施設割合が初めて7 割を超え71.4%となった。②オーダリングのみの9.1%と合わせると80.5%となり、ほぼ情報システム導入が標準といえる状態となった(表2)。
 (6)セキュリティ対策から(8)SNS制限までは、セキュリティ関連の設問だが、(7)個人情報の外部持ち出し制限実施内容の設問において、本年⑦持ち出しに当たって事前の申請および許可の項目を追加し、18%の施設で実施していることが新たにわかった。

【設問3.および4.研修への取り組み】
 設問3は院内、設問4は外部研修に関わる設問である。3.(1)院内研修実施の有無では、実施率は81.9%(前年81.1%)、(2)実施時期は入職時、単独、併催で約9割、(3)対象は全職員が93.9%、(4)開催回数は1回が60.1%、2 回が25.1%、3 回が14.3%で例年と全く変化はなかった。
 設問4の外部研修の活用では、昨年来のコロナ禍による影響が見られる。4(2)参加職種、(3)主催者に変化はない。4(1)の設問では外部研修参加は、例年30%程度で変わらなかったが、昨年は16.5%となり、本年は更に13.1%まで減少した(表3)。

【設問5.保険加入・苦情・補償/設問6.相談・問合せ】
 5(1)個人情報漏えい保険加入状況は、①加入しているが35.8%(前年30.7%)で、増加傾向にある。(2)苦情発生時の相談相手は、弁護士が41.7%(前年40.2%)だった。(3)苦情発生の有無と(4)金銭補償例の有無は、特に増加傾向はなかった。
 6(1)個人情報保護に関する相談・問い合わせの有無では、①相談有りは例年と変わらず7%前後で推移。自由記載欄でも特別な傾向は見られなかった。

【設問7.開示請求】
 7(1)病院で定める正規の手続きを経た診療情報開示の請求を受けた施設は85.7%(前年78.2%)と過去最高を記録した。(2)開示請求者で、年々、比率が上がってきた⑦弁護士が16.9%(前年14.0%)となり、ついに①本人の15.2%(前年14.1%)を抜いて1位となった。(3)不開示とした事例が1件以上あった施設は6.4%だった。(4)開示請求件数の傾向では、①増加したと回答した施設が29.4%だった(前年29.5%、過去年最高は35.9%)。(5)開示方法の周知方法、(6)開示費用について変化はなかった。

【設問8.マイナンバー制度・個人情報保護法改正】
 2015年改正についての認知度は71.8%だった(前年70.1% 過去6年間の最高79.2%)。(2)改正への自院対応は80.7%(前年78.0%)。(3)法への対応内容では、規定の改訂、職員教育、システム改訂の順に多くなっており、過去の傾向通りであった。(5)の具体的対応の自由記入欄からは、マイナンバー手順の規定化、入院ネームプレートの撤去、電話取次方法の厳格化、外来呼び込みの番号化などの対応が多かった。

【設問9.2020年改正/ 設問10.2021年改正の認知度】
 設問9 の2020年改正の認知度は75.4%(前年49.6%)、設問10の2021年改正の認知度は63.2%で、それぞれ認知度が上がっており、対応について検討している様子が窺えた。

【設問11.(新設)COVID-19に関連した個人情報の取り扱い】
 (1)COVID-19 患者の行動歴など患者情報を保健所から求められたときの患者同意については、①同意を取るが51.6%(前年57.3%)、②同意は要らないが46.3%(前年37.6%)で、同意は必要ないという回答が8.7ポイント増加した。
 自由記述では、「非常事態であり個人情報保護より感染拡大防止が重要あるいは優先」、「感染症法15条や個人情報保護法16条、23条等法令の定めるものだから」という回答が多くあった。(2)COVID-19 患者である職員の勤務中の行動歴を保健所から求められたときの職員同意については、①同意を取るが48.0%(前年49.1%)、②同意は要らないが50.6%(前年44.8%)だった。理由の自由記述欄は(1)と同様であった。
 (3)感染者等情報把握・管理支援システムを用いた陽性者等情報を、本人の同意を得ることなく把握・管理することについては、②やむをえないが52.7%(前年49.4%)、①公益のために必要が24.5%(前年21.7%)、③監視は良くないが6.0%(前年17.7%)となった。
 ( 4)感染者等情報把握・管理支援システムの効果については、①ある15.3%( 前年14.6%)、② ややある40.1%(前年45.9%)、③あまりない33.4%(前年28.1%)④ない7.6%(前年3.9%)となり、「あまりない」が5.3%増加していた。
 (5)職員が感染、または濃厚接触者となった場合に、院内で氏名を公表してもよいと思うかの設問(本年新設)では、①公表してよい13.1%、②同意を得ればよい40.6%、③公表してはいけない44.2%と意見が割れた。
 (6)ワクチン接種を受けたか否かの情報提供を職員に要請することをどのように考えるかでは、①問題ない28.2%、②状況により許容される58.7%、③してはいけない11.2%となり、こちらは①②合計で86.9%という高い割合となった。
 昨年新設した(7)新型コロナウイルス感染症に関して、個人情報保護の観点から困ったことや迷ったことでは、①困ったことがあると回答した施設が前年の9.6%から6.6ポイント増加し16.2%となり、現場での混乱が増加した印象である。

【設問12.当協会の個人情報保護法への取り組みについて】
 (1)認定個人情報保護団体としての研修会開催の認知度から、(6)当協会ホームページ上の個人情報保護方針や規定集の例示の活用まで、ほぼ例年とかわらない認知度、参加率であった。
 (7)当協会の個人情報保護Q&A本(事例集)については、『医療・介護における個人情報保護Q&A―改正法の正しい理解と適切な判断のために(2020)』の認知度が46.1%となり、前回同様に5割(2017版)にとどまった。(8)担当者として困っていること(自由記述)では、変わらず法律的判断や、教育・研修についての内容が目についた。

【まとめ】
 個人情報保護法は、法施行後15年が経過し、マイナンバーへの対応や個人情報保護委員会設置などを主旨とした2015年改正(2017年全面施行)に続き、2020年には、AI、ビッグデータ、越境する個人データ等に対応する改正が行われた。2021年改正では、制度の官民一元化や医療・学術分野における規制の統一など、環境の変化に対応するため、大きな改正がなされた。
 そして、コロナ禍における医療機関の個人情報保護管理はかなりシビアな環境となっている。結果として現場での迅速な判断が必要になる場面は増えており、今年もWEBで開催した当委員会主催の研修やQ&A書籍発行を通して、医療・介護業界の現場に即した「リーガルマインドを持つ対応者」を養成していく必要があるとあらためて感じた。
 最後となるが、本アンケートの回答・結果報告を自院の個人情報保護管理体制を見直す機会として、ぜひ活用頂きたい。

 

全日病ニュース2022年3月15日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 2021.3.15 No.982

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2021/210315.pdf

    2021/03/15 ... 新型コロナの感染状況を踏まえ、 ... 境にもよるが、コロナ禍による影響と ... 電子カルテ・オーダリングシステム導入が7割超え、電子化が進展.

  • [2] 2020 年度 個人情報保護に関するアンケート調査の中間報告

    https://www.ajha.or.jp/about_us/nintei/pdf/210416_1.pdf

    (5)電子カルテ・オーダリングシステムの導入状況について ... 事例 21)コロナ禍において、来院による感染リスクを減らすために、通院日等の照会について、こ.

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