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ホーム全日病ニュース(2022年)第1011回/2022年6月15日号第8次計画策定に向け本格的な議論を開始

第8次計画策定に向け本格的な議論を開始

第8次計画策定に向け本格的な議論を開始

【厚労省・第8次医療計画検討会】医療圏、基準病床数、指標がテーマ

 厚生労働省の第8次医療計画等に関する検討会(遠藤久夫座長)は5月25日、次期医療計画策定に向けた本格的な議論を開始した。同日は、医療圏・基準病床数・5疾病5事業および在宅医療の指標をテーマとした。第8次医療計画は2024年度から始まる。都道府県が2023年度中に計画を策定するためには、国は2022年度中に基本方針等の改正案をまとめる必要がある。

二次医療圏の人口規模の違い大きい
 二次医療圏は、一般的な入院医療が完結する単位として設定されている。2021年10月現在で335医療圏がある。これに対し、三次医療圏は基本的に都道府県ごとに1つで、北海道のみ6医療圏があり、2021年10月現在で52医療圏がある。三次医療圏は、特殊な医療を提供できる単位として設定されており、具体的には、臓器移植や特殊な疾病、広範囲熱傷などの救急医療などに対応できる単位としている。
 第6次医療計画の検討の際に、人口20万人未満の医療圏では、流入率が低く流出率が高い状況が確認された。人口20万人未満の医療圏については、一般的な入院医療が完結する区域として成り立っていない場合があると考えられ、そのように判断できれば、二次医療圏の見直しを都道府県に求めた。
 単独の二次医療圏では、医療資源が不足していても、近隣の二次医療圏に統合すれば、限られた医療資源を効率的に活用できることもあるためだ。
 第7次医療計画の検討時に、人口20万人未満で、患者流入率20%未満、患者流出率20%以上の二次医療圏は、344医療圏のうち78医療圏であった。ただ、実際に見直しが行われたのは6県で、第7次医療計画で二次医療圏は335医療圏となった。
 このため、第8次医療計画を検討する上で、二次医療圏の見直しの基準が示されているにもかかわらず、見直しが進まないことについて、委員からは、その理由を把握すべきとの意見が出た。
 一方、人口規模の大きい二次医療圏の問題を指摘する意見もあった。
 全日病副会長の織田正道委員は、「現在の二次医療圏は地域医療構想とほぼ一致しており、地域の医療提供体制を構築する上で、基本となっている。しかし人口規模は、10万人未満の二次医療圏から100万人以上の二次医療圏まで幅があり、同じような単位として考えることはできない」と指摘。特に、「100万人以上の医療圏については、分散化を含め、医療の内容により、医療圏の問題を考えるべきだ」と主張した。
 日本医療法人協会会長の加納繁照委員も、大阪府の事例をあげ、「二次医療圏の大阪市は270万人を超える。あまりに規模が大きいので、実際は4つの区域に分けて、個別に議論した上で、まとめる形にしているので、分けることが検討課題になる」と述べた。

基準病床数は地域医療構想が前提
 基準病床数については、経年的に減少傾向にある。今後も、人口減少や平均在院日数の短縮や病床利用率の設定により、減少が見込まれる。療養病床については、地域医療構想における病床の「介護施設・在宅医療等対応可能数」による減少分も加味される。
 基準病床数制度は、病床過剰地域から非過剰地域に病床を誘導することにより、病床の地域的偏在を是正することを目的としている。都道府県知事は、病床過剰地域において病院・診療所の開設についての許可の権限を持つ。ただ、病床過剰地域であっても、複数の医療機関の再編統合を行う場合などに、特例措置を講じることができる。
 病床数が増えると、医療費も増える傾向にあるので、病床数が増えることに国や自治体は基本的に慎重になる。
 地域医療構想では2025年に向けて、病床以外で対応可能な患者は介護施設・在宅医療等で対応することを目指している。具体的には、療養病床の医療区分1の患者の7割を介護施設・在宅医療等に移行させることや、療養病床の地域差を解消すること、一般病床の長期入院患者の一定部分も減らすことを目標としている。
 しかし、この目標を達成するには、介護施設・在宅医療等が、地域で整備されることが不可欠となる。それができなければ、目標は達成できないので、介護施設や在宅医療等の充実を求める意見が出た。

指標にロジックモデルを活用
 5疾病・5事業および在宅医療の指標については、実効性のある施策を実施するためのロジックモデルの活用が論点となった。ロジックモデルとは、ある施策がその目的を達成するに至るまでの論理的な因果関係を明示したもの。医療提供体制の政策立案から評価、見直しに至るPDCAサイクルの実効性を高める上で、効果的とされる。
 例えば、大阪府の第7次医療計画の救急医療体制のロジックモデルでは、「救急患者の生存率向上」という目的を設定し、指標は「救急入院患者の21日後生存率」で示し、その目的を達成するために、「二次救急医療機関数」や「30分以内搬送率」、「軽症患者の割合」などを指標としている。
 また、奈良県立医科大学教授の今村知明委員が指標作成における留意点を説明した。具体的には、指標が、「全国で比較可能な数字になっている」「数値の算出が実施可能なもので、厚労省から配布されるデータブックに載せられるもの」、「分母と分子が明確」、「ストラクチャ―、プロセス、アウトカムのどれかに分類できるもの」であることなどが望ましいことを示した。

 

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    体のモデルになるので枠組みが極め. て重要である。原因究明・再発防止 ... の負担が増えるというロジックのみ ... ロセスやアウトカムの臨床指標をもち.

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