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ホーム全日病ニュース(2022年)第1017回/2022年9月15日号厚労省予算は33兆2,644億円で過去最大規模

厚労省予算は33兆2,644億円で過去最大規模

厚労省予算は33兆2,644億円で過去最大規模

【2023年度政府予算】電子カルテの標準化促進など医療DXで予算増額要求

 厚生労働省は8月25日、財務省に提出する2023年度予算の概算要求を公表した。厚労省予算は33兆2,644億円で対前年度比6,340億円増となった。過去2番目の水準だが、子ども家庭庁の来年度設立で、子育て関連の予算が除かれるため、実質的には過去最大規模となる。大部分を占める年金・医療等の経費は31兆2,694億円で同5,376億円増となっている。
 概算要求基準では、年金や医療等の経費は、2022年度当初予算の年金・医療等の経費に相当する額に、「高齢化等に伴ういわゆる自然増」を加算した5,600億円の範囲内で要求するとされていた。ただし、年末に向けての予算編成で、さらに歳出抑制努力を行うことが求められている。
 年金・医療等の経費の31兆2,694億円の内訳は主に、年金が12兆7,700億円、医療が12兆500億円、介護が3兆4,100億円となっている。増加額の5,376億円の内訳をみると、年金が900億円、医療が2,500億円、介護が1,000億円で、医療の増加額が最も大きい。
 医療費については、全国健康保険協会(協会けんぽ)が1兆2,673億円で254億円増、国民健康保険が3兆1,319億円で841億円減、後期高齢者医療制度が5兆7,780億円で3,137億円増。団塊世代が75歳に達し、後期高齢者医療制度への移行が進んでいる。3制度合計は10兆1,772億円で2,550億円増である。生活保護の医療扶助など公費負担医療は1兆8,723億円で2億円の増加にとどまる見込みだ。
 来年度に子ども家庭庁が設立されることから、子ども・子育て支援関連予算の8,857億円は内閣官房が要求する。このため、厚労省全体の33兆2,664億円からは除かれている。対前年度比増加額の6,340億円からも、その分は除かれている。
 政府予算にメリハリをつけるため、裁量的経費の削減額の3倍を要望できるという「重要政策推進枠」は2023年度予算案でも設定される。厚労省は1,694億円を要望した。「重要政策推進枠」に要望できるものは、岸田政権が重視する新しい資本主義の実現に向けた重要政策で、「人、科学技術・イノベーション、スタートアップ、GX、DX、エネルギー・食料を含めた経済安全保障の徹底等」とされている。

医療DXの予算要求は6倍以上
 厚労省の重点予算としては、3つの柱を立てた。①コロナ禍からの経済社会活動の回復を支える保健・医療・介護の構築②成長と分配の好循環に向けた『人への投資』③安心できる暮らしと包摂社会の実現」─である。
 第1の柱に、保健・医療・介護分野の多くの予算が含まれている。ただ、新型コロナ対策の多くは、金額を明示しない事項要求とされ、予算編成過程での今後の検討事項となっている。
 原油価格・物価高騰対策等を含めた重要政策や、骨太方針2022により引上げが決まっている出産育児一時金、薬価改定の取扱いについても今後の予算編成過程で検討される。
 新型コロナ対策で、金額を定めて予算要求しているものでは、次の感染症危機に備えるための体制の確保として、抗インフルエンザウイルス薬の備蓄や国立感染症研究所の検査・疫学調査等の体制強化、保健所・地方衛生研究所の体制・機能強化がある(97億円)。また、ワクチン・治療薬等の研究開発の推進として、ワクチンの大規模臨床試験等の支援や治療薬等の国際的な開発動向調査、臨床情報等のデータベースの充実などで43億円を要求した。
 医療・介護DXは、今回の概算要求で予算獲得に向けた重点政策として、特に目立つ項目だ。要求額は、デジタル庁分を含め2022年度の15億円の6倍以上となる96億円となっている。
 項目をあげると、◇オンライン資格確認の用途拡大等のデータヘルス改革◇電子カルテ情報の標準化◇電子処方箋の環境整備◇薬局DX、対人業務の充実◇診療報酬改定DX◇科学的介護のためのデータベース機能拡充◇国保総合システム─などがある。
 例えば、電子カルテ情報の標準化の推進では、医療用語の標準マスターなど厚労省標準規格を整備し、医療情報の標準化を促進する事業に、対前年度比3倍の約1億円を推進枠で要望する。医療機関からの相談対応も行う。
 地域医療構想、医師偏在対策、医療従事者の働き方改革の推進等の要求額は、対前年度比15億円増の910億円となっている。
 地域医療構想の実現などに向けては、地域医療介護総合確保基金(医療分)に対して、対前年度比同額の751億円を求める。医師偏在対策では、地域枠卒業医師などへのキャリア形成プログラム等運用支援事業を新規(5,000万円)で要求した。医師の働き方改革に向けては、新規で普及啓発事業(1.5億円)を推進枠で要求した。
 救急・災害医療体制等の充実のための要求額は、対前年度比28億円増の114億円(デジタル庁計上分含む)。項目としては、◇ドクターヘリ・ドクターカーの活用による救急医療体制の強化◇重症者治療の診療体制整備◇広域災害・救急医療情報システム(EMIS)の見直し◇医療施設等防災・減災対策、DMAT・DPAT体制◇医療コンテナの活用・訓練─などがある。

 

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