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ホーム全日病ニュース(2022年)第1021回/2022年11月15日号「しぞーかルネッサンス」静岡の芸術・文化を発進

「しぞーかルネッサンス」静岡の芸術・文化を発進

「しぞーかルネッサンス」静岡の芸術・文化を発進

【静岡学会・市民公開講座】「感幸都市」の創造に向けたアートと、大井川鐡道の挑戦

 イベントプロデューサーでもある甲賀雅章氏(シーアイセンター代表取締役ディレクター)は、1992年から静岡市で開催されているアジア最大規模の大道芸フェスティバル「大道芸ワールドカップin静岡」を手掛け、まちづくりにも取り組んでいる。講演は、アートとウェルビーイングの関係が中心となった。
 健康とは、「単に病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にある」というウェルビーイングの考え方が、WHO(世界保健機関)により示されている。健康状態を判断する上で、幸福度が指標となる場合があり、幸福とアートは密接に関わっている。
 甲賀氏は、「30年前、私たちが目指した静岡市におけるまちづくりの目的は、50年先の国際的芸術文化創造都市、「感幸都市」の実現であり、社会や人々の幸せである」と強調した。「50年先を見据えて、人々が幸せになれる『感幸都市』に向け、その仕掛けとして大道芸をツールに取り組んだ。これは、過去の歴史的文化資源の活用という従来の行政のまちづくりの発想ではない」と述べた。
 「経済の活性化」よりもむしろ、「シビックプライド」と「芸術の日常化」を大事にした。「人々が、町に対する愛着と他人に対する思いやりの精神を持ち、一人ひとりの感受性が豊かになり、生活を心から楽しめると同時に、訪れた人が幸せ感と元気を持ち帰ることのできるような」取組みが、国際的芸術文化創造都市・感幸都市の創造であるという。
 最後に、「アートには社会的な価値がある。ウェルビーイングへの効果も大きい。みなさんのような医療関係者が、より積極的にアートに参画することで、アートがウェルビーイングに与える効果はより高くなると思う。アートとウェルビーイングの相互作用を一緒に研究していきたい」と投げかけた。


甲賀氏

SLを「動態保存」し観光に使う
 台風15号の被災で全線運休中である大井川鐵道の広報担当の山本豊福氏(大井川鐡道経営企画室次長)は、同鉄道の魅力を紹介した。
 1925年創立で、間もなく100周年を迎える大井川鐵道は乗客の増加に向け、観光列車の運行などさまざまな工夫を行っている。 特にSL(蒸気機関車)を運行可能な状態で整備・保存する「動態保存」を行っていることで有名だ。
 SLは1976年から運行を開始。現在は4両が走っている。また、海外アニメの「きかんしゃトーマス」の意匠をまとった蒸気機関車「きかんしゃトーマス号」は2014年から運行。さらに、急勾配を上るための鉄道システムであるアプト式列車としては日本唯一の「南アルプスあぷとライン」は、90パーミルという日本一の急勾配や日本一の高さの鉄道橋である関の沢橋梁を走る。
 大井川鐵道は、大井川上流部の電源開発と森林資源の輸送の手段として出発した。しかし、貨物輸送の需要はほぼなくなった。山本氏は、SLを走らせた理由について、「貨物輸送が激減し、沿線外の人が来ないと生き残れない状況になった。SL投入は、夢を求めて、というよりも、差し迫った困難への対応だった」とした。きかんしゃトーマス号についても、新たな顧客層の獲得が目的で、「団体客が激減したため、小さな子どもとその親に来てほしい」と述べた。
 目下の取組みでは、今年2月にSLを購入した。復元し来年1月から走行させるために、整備を行っている。また、修繕費用の一部をクラウドファンディングで募っているという。 山本氏は、「我々は公共交通機関であると同時に、楽しい思い出をつくることのできる鉄道にしたい。また来たいと感じさせる鉄道にするには、どうすればよいかをいつも考えて仕事をしている」と述べた。


山本氏

 

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