全日病ニュース

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社会とかかわる統合医療の実践

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【静岡学会・特別講演4】プラネタリーヘルスからみた地方の医療機関の可能性

 富士山西麓に広がる朝霧高原に、山本竜隆氏が院長の朝霧高原診療所がある。山本氏は、神奈川県や東京都で育ったが、14年前に自然豊かな朝霧高原にやってきた。そこで、統合医療を実践している。統合医療により、「自然療法や伝統医学を使った医療、健康増進や予防医学の医療をやりたいと思った」という。
 プラネタリーヘルスとは、「人類と地球は一体であり、人類の健康は地球の健康と切り離せない」という考え。2015年の科学誌『ランセット』により世界に広がった。山本氏は、「統合医療と変わらない考え方だと思う」と述べた。プラネタリーヘルスを考えることで、グローバルな視点を持ちながら、身近な環境や地域コミュニティの課題に向き合っていくことができると説明した。
 一方、統合医療の範疇は、狭義では、医療機関内で行う「現代西洋医学+伝統医学&自然療法(代替医療)」であり、広義では、身近な環境や地域コミュニティの中で行う「医療モデル+社会モデル」であると整理している。
 その上で、広義の統合医療が本当の統合医療であり、身近な環境や地域コミュニティへの社会的処方になり得ることを強調した。
 社会的処方の海外の取組みについては、患者の美術館への訪問を治療として行うカナダの医師会の取組みや、ドイツやイタリアで実施している森林環境の中で過ごす治療を紹介し、保険診療の範囲であるかは別として、「日本でもやってみる価値がある」と提案した。
 世の中が、「大規模・集中」から「小規模・分散」の時代に変化していることを踏まえ、個人にとっても医療機関にとっても、「画一的ではなく、地域性を意識したヘルスケアが必要になってくる」と指摘。あわせて、「治療型のみならず予防型」、「医療系のみならず社会系」を意識することが重要になっており、「これは、現在国が進めている地域包括ケアシステムと重なる」と述べた。
 医療を取り巻く環境は厳しい。山本氏は、急速な日本の人口減少により、社会保険制度の持続可能性が危ぶまれ、医療費削減が予想されることや、将来的に、相対的に医師は過剰となり、収入の減少が予想されること、日本の発展途上国化が進み、医薬品は高騰し入手困難となる状況が予想されるとした。そのような状況に対応するためにも、「予防分野や保険外分野、ツーリズム分野への取組みが重要になる」とした。
 地方の医療機関の強みとしては、◇地域社会・生活とのつながりが深く、社会的意義が高い◇地域の独特の資源や人材を把握している◇観光や自然資産、農業などとのコラボレーションを展開しやすい◇環境意識が高く、自然療法分野に関心のある看護師を集めやすい─などをあげた。


山本氏

 

全日病ニュース2022年11月15日号 HTML版

 

 

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