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かかりつけ医機能の制度整備の意見などまとめる
かかりつけ医機能の制度整備の意見などまとめる
【社保審・医療部会】医療機能情報提供制度の刷新とかかりつけ医機能報告制度の創設
社会保障審議会・医療部会(永井良三部会長)は昨年12月23日、かかりつけ医機能の制度整備を含む「医療提供体制の改革に関する意見」(意見書)を大筋でまとめた。国民・患者の医療機関の選択に役立てるための医療機能情報提供制度の刷新と、かかりつけ医機能の充実・強化を図るためのかかりつけ医機能報告制度の創設が柱となる。厚生労働省は、同日の議論を受け、修正した意見書を12月28日に公表している。
「医療提供体制の改革に関する意見」は、医療提供体制の改革に関する基本的な考え方を示した上で、◇かかりつけ医機能が発揮される制度整備◇医療法人制度の見直し◇地域医療構想の推進◇医療従事者に関する取組の推進─の具体的な改革の内容を示している。
基本的な考え方では、新型コロナ対応について触れ、「行政による事前の準備が十分でなかったため、全国的な感染拡大による急速な医療ニーズの増大に直面」したと表現した。これに関し、全日病副会長の神野正博委員は、「『行政による事前の準備が十分でなかった』というよりも、診療報酬を含め、病院が余裕のある体制を持つだけの制度的な対応がなされていなかったことに大きな原因がある」と指摘した。
意見書では、新興感染症対応と通常医療の両立を図るため、「平時から入院・外来・在宅にわたる医療機能の分化・強化と連携を図る」ことの重要性が、コロナ禍により改めて認識されたと強調し、今後の対応を図る必要があるとしている。一方、高齢者の増加と生産年齢人口の減少が続くことから、医療資源には限りがある。このため、「機能分化と連携、人材の確保を一層重視した国民目線での提供体制の改革」を進めることなどが、喫緊の課題であると位置づけている。
性急な制度改革は望ましくない
具体的な改革では、「かかりつけ医機能の制度整備」に多くの頁を割いた。
かかりつけ医機能については、2013年の日本医師会・四病院団体協議会の合同提言や、診療報酬における慢性疾患を有する高齢者などへの評価が行われてきた。しかし、医療計画等の医療提供体制に関する諸施策に位置付けた取組みは、これまで行われていない。
意見書は、人口構造の変化などにより、医療資源に限りがあることも踏まえ、「治す医療」から「治し、支える医療」を実現するためにも、かかりつけ医機能の制度整備が必要としている。
その際に、「国民・患者がそのニーズに応じてかかりつけ医機能を有する医療機関を選択し、利用することができる仕組みとし、医療機関は地域の実情に応じて、その機能や専門性に応じて連携しつつ、自らが担うかかりつけ医機能の内容を強化する仕組み」との基本的な考えを打ち出した。
かかりつけ医機能の制度制度をめぐっては、抜本的な改革を含め、これまでさまざまな意見があった。
しかし、意見書では、「我が国の医療制度が、フリーアクセスの保障、国民皆保険、医師養成のあり方と自由開業制、人口当たりの病床数といったさまざまな要素が微妙なバランスの上に成立していることに鑑み、エビデンスに基づく議論を行い、現在ある医療資源を踏まえ、性急な制度改革がなされないよう時間軸に十分に留意することが必要」であり、今回の改革案に至ったとしている。
医療機能情報提供制度の刷新
改革案の柱の1つが「医療機能情報提供制度」の刷新である。現状の「医療機能情報提供制度」に対しては、医療部会の議論において、「内容の具体性に乏しい」、「診療報酬点数(の項目)そのままでは理解しづらい」といった意見があり、実際に医療機関を選択する手段としては、「不十分」とされた。
このため、以下のような見直しを実施する。
まずは、「かかりつけ医機能」の定義を法定化する。定義は、現行の医療法施行規則で、「身近な地域における日常的な医療の提供や健康管理に関する相談等を行う医療機関の機能」とされていることを踏まえた内容とする。
医療機関は、国民・患者による医療機関の選択に役立つ情報と医療機関間の連携に係る情報を都道府県に報告するとともに、都道府県知事は、報告された「かかりつけ医機能」に関する情報を国民・患者にわかりやすく提供する。
このため、情報提供項目を見直すとともに、都道府県ごとに公表されている医療機関に関する情報について、全国統一のシステムを導入する。
情報提供項目のイメージとしては、◇対象者の別(高齢者、障害者、子どもなど)◇日常的によくある疾患への幅広い対応◇医療機関の医師がかかりつけ医機能に関して受講した研修など◇入退院時の支援など他の医療機関との連携の具体的内容◇休日・夜間の対応を含めた在宅医療や介護との連携の具体的内容─を例示した。
なお、具体的な項目の内容などは、今後、有識者や専門家などが参加する会合で、詳細を検討する。また、医療機能情報の公表の全国統一化は2024年度以降に実施するとしている。
かかりつけ医機能報告制度の創設
特に、在宅を中心に、入退院を繰り返し、最後は看取りを要する高齢者が、今後さらに増加することから、そうした高齢者へのニーズに対応するかかりつけ医機能の充実・強化を図る必要がある。このため、かかりつけ医機能報告制度を創設する。
具体的なニーズとしては、①持病(慢性疾患)の継続的な医学管理②日常的によくある疾患への幅広い対応③入退院時の支援④休日・夜間の対応⑤在宅医療⑥介護サービス等との連携─をあげた。
かかりつけ医機能報告制度では、医療機関がこのようなニーズに対応する機能や、それを今後担う意向などを都道府県に報告する。連携して機能を発揮する場合には、連携する医療機関も報告する。この報告に基づき、都道府県は、地域における機能の充足状況や、これらの機能をあわせもつ医療機関を確認・公表するとしている。
その上で、都道府県は、医療関係者や医療保険者などが参画する地域の協議の場で、不足する機能を強化する具体的方策を検討し、結果を公表する。
その際に、多様なすべての機能を一人の医師・一つの医療機関だけで担うことは現実的ではなく、個々の医療機関の機能強化に加え、医療機関の適切な連携を通じて、機能の強化を図ることが重要であることも強調した。
医療部会では、これに関連して、次のような意見があった。
「個々の医療機関の機能を向上させるため、一定の報告基準を国が統一的に定めるべき」、「研修の受講を必須とすべき」、「医療機関からの報告だけでは不十分であり、公的な認定によって一定の質を担保する仕組みを設けるべき」、「全人的な診療に対応できる総合力を有する医師は重要である」、「こうした医師を養成するため、病院が研修を行う役割を担うべき」、「大学病院等の大病院から患者を逆紹介させる仕組みが必要」─。
都道府県が、地域の協議の場において検討する具体的方策については、以下のような事項を例示した。
◇病院勤務医が地域で開業し地域医療を担うための研修や支援の企画実施(例えば、在宅酸素療法、在宅緩和ケア、主治医意見書の書き方等。研修先の斡旋や研修中の受け持ち患者の診療支援も考えられる)◇地域で不足する機能を担うことを既存または新設の医療機関に要請◇医療機関同士の連携の強化(グループ診療、遠隔医療やオンライン資格確認の活用等)◇在宅医療を積極的に担う医療機関や在宅医療の拠点の整備◇多職種連携の推進◇地域医療連携推進法人の設立活用(個人立を含めた医療機関の連携を可能とする新類型を設ける)
神野委員は、こうした取組みを推進するための電子的な情報共有の基盤となる全国医療情報プラットフォームの構築について、「急性期、回復期、慢性期、介護等の情報を共有することが、かかりつけ医機能の制度整備においても、肝になってくる。その基盤作りをきちんと議論しないといけない」と指摘した。
書面交付のあり方にさまざまな意見
意見書はさらに、慢性疾患を有する高齢者が在宅で医療を受ける場合をはじめ、患者が継続的な管理を必要とし、患者が希望する場合に、医療機関がかかりつけ医機能として提供する医療の内容について、「書面交付」などを通じて、説明するとした。
神野委員は、「この書面交付においても、全国統一化を検討してほしい。また、病院団体の関係者からは、書面交付が煩雑となり、業務に負荷がかかることのないよう求める意見が出ており、できるだけシンプルなもの、そして必要かつ十分なものが望ましい」と述べた。
「書面交付」に関してはそのほか、「子どもを含め幅広く対象とすべき」、「継続的な管理が必要と判断される患者に限定すべきではない」、「情報の一元化やその調整窓口を想定し、患者と医師との関係は1対1にすべき」、「その情報を都道府県に登録し保険者が把握できるようにすべき」、「複数の医療機関から書面の交付を可能とすべき」との意見が出た。
これらの取組みについては、今後設置される有識者や専門家による会合で、詳細が検討される。
また、医療法に基づく「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を図るための基本的な方針(告示)」など関係法令を改正する。2025年度を目途に、個々の医療機関からの機能の報告を受けて、地域の協議の場における「かかりつけ医機能」に関する議論を開始する。具体的な方針が決定した段階で、医療計画に反映する(第8次医療計画の中間見直しを想定)とのスケジュールを描いている。
医療法人経営情報DBを構築
医療法人制度の見直しでは、医療法人の経営情報のデータベース構築がある。これについては、「医療法人の経営情報のデータベースの在り方に関する検討会」が2022年11月にまとめた報告書に基づき、「医療法人の経営情報を把握・分析し、医療機関の経営状況を踏まえた政策の企画・立案に活用するとともに、医療の現状と実態を国民に丁寧に説明するため、新たな制度として医療法人の経営情報を収集してデータベースを構築する」との考えを示した。
新たな制度の対象については、施行後に決算期を迎える医療法人から対象とし、「施行時期は2023年度の可能な範囲で早期」とすることを提案した。
なお、「職種別の給与費については、医療現場の負担等を踏まえ、任意報告事項とすべきとの意見があった一方で、公的価格評価検討委員会からの職種別給与費データは確実に提出すべきとの要請を踏まえ、制度発足時は任意報告事項とするが、施行後早期に提出状況を評価し、義務化も含め検討すべきではないかとの意見があった。こうした意見に鑑み、制度発足時は任意の報告事項としつつ、制度施行後の状況を踏まえ、必要な対応について引き続き検討すべきではないか」との文言を明記した。
地域医療連携推進法人については、「個人立を含めた医療機関がヒト(医師等)やモノ(医療機器等)の融通を通じた連携を可能」とする新類型を設け、個人立医療機関の参画を可能とする。
その際に、◇個人立医療機関は個人用資産と医療資産の分離が困難であることなどに鑑み、カネ(資金)の融通(出資、資金の貸付)は不可とする◇カネの融通をしない場合には、公認会計士または監査法人による外部監査を不要とする─などの対応を講じる。
また、地域医療連携推進法人について、「複数の構想区域にまたがる場合の理由」や「大学病院が参加している影響、特に医師確保の観点から法人に参加する医療機関等への影響や参加していない地域の医療機関等への影響」などを検証する必要性を指摘した。
認定医療法人制度では、持ち分の定めのない医療法人への移行を促す観点から、相続税・贈与税の税制優遇措置を行っている。これについて、期限である「2023年9月」を延長するとともに、移行期限を認定から「3年以内」を「5年以内」に延ばすことを提案した。
2025年以降の地域医療構想
地域医療構想は当面、2025年までの計画となっているが、今後、高齢者人口がピークを迎えて減少に転ずる2040年頃までを視野に入れつつ、コロナ禍で顕在化した課題を含め、中長期的課題について整理し、新たな地域医療構想を策定するとの考えで一致した。
今後の取組みについては、「必要な医療を面として提供するための医療機関ごとの機能分化と連携が重要である、かかりつけ医機能や在宅医療を取り込むため、外来医療、在宅医療の整備計画の中で新たな方向性や目標を踏まえながら、2025年以降の入院需要を推計していくべき」であることなどを示した。
そのほか、意見書では、医療従事者に関する取組みの推進として、◇医療従事者のタスク・シフト/シェアの推進と医師の働き方改革◇医師偏在対策等、医療の担い手の確保に関して、意見をまとめている。
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