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ホーム全日病ニュース(2023年)第1025回/2023年2月1日号2022年度補正予算と一体の予算で医療DXなどを推進

2022年度補正予算と一体の予算で医療DXなどを推進

2022年度補正予算と一体の予算で医療DXなどを推進

【2023年度厚労省予算案】コロナ禍からの経済社会の回復を支える保健・医療・介護の構築目指す

 政府は昨年12月23日、2023年度予算案を閣議決定した。厚生労働省予算案は33兆1,686億円で、対前年度比5,382億円増(1.6%増)。大部分を占める社会保障関係費は、こども家庭庁移行分を除き32兆8,514億円、同5,503億円増(1.7%増)となった。新型コロナ対応や医療介護DXなど夏の概算要求で要望した予算の一定程度が、2022年度補正予算で確保されており、両者を一体としてみる必要がある。
 政府全体の社会保障関係費と厚労省予算案の社会保障関係費は、主に子ども・子育て関連予算を内閣府と分け合っており、計数が一致しない。2023年度にはこども家庭庁が発足する。こども家庭庁の2023年度予算案は4兆8,104億円。厚労省予算案からは、こども家庭庁に移行する厚労省関係部局分(8,857億円)を除いている。
 厚労省予算案の社会保障関係費の内訳は、年金が13兆78億円で対前年度比2.5%増、医療が12兆2,356億円で同0.5%増、介護が3兆6,959億円で同2.7%増、雇用が539億円で同36.4%減、福祉等が3兆8,582億円で同2.8%増。
 年金の伸びがやや高いのは、物価スライド分の2,179億円があるため。公的年金は物価上昇分を保障するという機能がある。一方、一定の物価上昇があると、平均余命の伸びと被保険者の減少率を勘案し、年金額を調整するマクロ経済スライドが発動し、物価スライドによる伸びの一定部分が減額される。
 医療費の内訳をみると、協会けんぽが1兆2,688億円で対前年度比2.2%増、国民健康保険が3 兆1,166億円で同3.1%減、後期高齢者医療が5兆6,794億円で同3.9%増。3制度合計が10兆648億円で同1.4%増、公費負担医療が1兆8,454億円で同1.4%増となっている。

電カル標準化やオン資普及目指す
 予算案の重点事項では、「コロナ禍からの経済社会活動の回復を支える保健・医療・介護の構築」、「成長と分配の好循環に向けた『人への投資』」、「安心できる暮らしと包摂社会の実現」を3本柱とした。また、概算要求での要望事項の多くを2022年度補正予算で計上した。
 「コロナ禍からの経済社会活動の回復を支える保健・医療・介護の構築」の主な予算は、次のようになっている。
 新型コロナ対応は、2023年度予算案で97億円、2022年度補正予算で3兆3,584億円。2022年度補正予算で多くを手当てした(デジタル庁計上分を含む)。基本的には、これまでの新型コロナ対応を継続するための予算となっており、年度内の予算を確保している。
 具体的には、◇新型コロナ緊急包括支援交付金による支援◇新型コロナワクチンの接種体制の確保◇感染拡大等に備えた抗原定性検査キットの確保◇感染症拡大等に備えた医療用物資の備蓄◇水際対策を着実に推進するための検疫体制の確保─などがある。
 一方、2023年度予算案では、◇新型コロナ感染者等が発生した介護事業所等のサービス継続支援◇抗インフルエンザウイルス薬の備蓄◇保健所・地方衛生研究所の体制・機能強化◇薬剤耐性対策の推進─などを盛り込んだ。
 医療DXなどの予算も、2023年度予算案で19億円、2022年度補正予算で509億円と、2022年度補正予算で多くを確保した(デジタル庁計上分を含む)。
 2022年度補正予算では、◇マイナンバーカードと健康保険証の一体化に向けた取組み(オンライン資格確認の用途拡大等の推進)◇医療情報等の共有基盤となる全国医療情報プラットフォームの創設◇電子処方箋の安全かつ正確な運用に向けた環境整備◇保健医療福祉分野の公開鍵基盤(HPKI)の普及◇診療報酬改定に関するDX の取組みの推進◇整合的かつ効率的な審査支払機能の運用に向けた国保総合システムの整備◇予防接種事務デジタル化等のための環境整備◇科学的介護の推進に向けた体制・取組みの強化─などを盛り込んだ。
 一方、2023年度予算案では、◇電子カルテ情報の標準化の推進等◇医療分野等のDXを踏まえたサイバーセキュリティ対策の推進◇ICTの推進等を踏まえた薬局DXの推進、対人業務の充実等◇科学的介護データ提供用データベースの機能拡充─などがある。
 例えば、電子カルテ情報の標準化を推進するための保健医療情報利活用推進関連事業(5.3億円)では、異なる電子カルテの医療機関同士でも医療情報が共有できるよう、電子カルテ情報を速やかに標準化し、その情報を全国の医療機関等と患者本人が安全に閲覧できる仕組みの構築などを加速させる。
 医療分野におけるDXを踏まえたサイバーセキュリティ対策の推進では、昨今、国内の医療機関を標的としたランサムウェアによるサイバー攻撃被害が増加したことから、医療機関のサイバーセキュリティ対策の徹底を図る(1億円)。専門家の派遣による感染原因の特定や対応の指示などの初動支援体制の強化など、これまでのサイバーセキュリティ研修に加え、サイバー攻撃を想定した訓練など実用性のある研修を実施する。
 また、オンライン資格確認・電子処方箋の推進のため、医療情報化支援基金による支援で289億円を積んだ。オンライン資格確認では、2022年度に集中的なシステム導入経費の補助を行っており、2022年度予算には700億円以上を投入していた。

 

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