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ホーム全日病ニュース(2023年)第1028回/2023年3月15日号コロナ対応の診療報酬特例の見直しに向け議論

コロナ対応の診療報酬特例の見直しに向け議論

コロナ対応の診療報酬特例の見直しに向け議論

【中医協総会】感染対策は継続し増える業務もある。診療側は「特例の継続」を主張

 中医協(小塩隆士会長)は3月1日、新型コロナに対応するための診療報酬の特例の見直しに向けた議論を行った。感染症法上の類型変更に伴う医療提供体制全体の見直しの政府方針に沿って、具体的な診療報酬項目の取扱いが今後見直される。診療報酬の特例は新型コロナの感染状況に応じて、診療報酬項目の点数の増点や算定できる診療報酬項目の追加など、さまざまな対応が図られてきた。内容は多岐にわたり、医療機関への影響も大きい。引続き、新型コロナ対応を継続できるよう、慎重な対応を図る必要がある。
 政府は、2020年以降、新型コロナの感染拡大に伴い、新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金など補助金での対応とあわせ、外来・入院・在宅等のそれぞれで診療報酬の特例や施設基準の緩和などの対応を図ってきた。感染者が激増する一方、重症者の割合は低下していく状況の中で、自宅・宿泊療養者や回復患者への医療の診療報酬の特例も充実させてきた。

病院は空間分離、ビル診は時間分離
 厚生労働省は同日、新型コロナの診療実態に関するヒアリング調査の結果を示した。2023年1月24日~2月3日にかけて、12病院、8診療所に対して実施したものだ。
 その結果、外来診療においては、病院や敷地面積の大きい診療所であれば、新型コロナの疑い患者と一般患者の動線を分ける空間分離を行っている場合が多かった。ビル診など敷地面積が小さい施設であれば、時間帯を分ける時間分離により対応している場合が多かった。これらの対応により、人手がより多く必要となり、受入れ患者数は少なくなる。
 一方で、発熱外来の設備整備や発生届の簡略化などにより、一部の業務が効率化されている実態も示された。
 入院診療においては、新型コロナの入院患者が高齢化する一方で、入院後に中等症、重症になる患者の割合が低下している。看護職員の配置は通常の7対1等と、4対1~5対1が半々であった。多くの施設では専用病棟を設け、新型コロナ患者担当の看護師は、同じ勤務帯では、それ以外の患者を担当しない場合があった。
 新型コロナ発生当初と比べれば、業務・人員配置は効率化されていた。一方で、院内クラスター防止のための感染対策は続いているほか、入院患者の高齢化に伴い介護・リハビリ、退院支援に関する業務が増大していることが示された。
 このように、重症化率の低下や業務の効率化により、医療機関への負荷は感染拡大当初と比べれば一部で軽減したものの、必要な対応を継続していることがわかった。また、感染症法上の類型見直しに伴い、今後は、自治体や保健所の役割が縮小し、療養指導や入院調整における医療機関の負担が増大する。これらを踏まえ、議論が行われた。

状況見極め慎重に判断すべき
 診療側からは、日本医師会常任理事の長島公之委員が、「感染症法上の類型が変わっても、医療機関での新型コロナ対応が変わるわけではない。保健所が行っていた業務も医療機関が担う。基礎疾患を抱える高齢者の入院が増え、介助の負担がかかっている。医療従事者の感染も増えている」と述べ、診療報酬の特例の継続を主張した。
 日本病院会副会長の島弘志委員は、「罹患者は減っておらず、院内クラスターが発生すれば患者の制限を行わなければならない。感染防御などの体制は引続き必要だ。早くコロナ前に戻りたいが、タミフルのような治療薬はなく、インフルエンザ並みとはなっていない」と現状を説明した。
 日本慢性期医療協会副会長の池端幸彦委員は、「まだ支援体制を緩めるべきではない。特例の何を廃止すべきかということについては、状況を見極めながら、慎重に検討するべきだ。特例を一気に下げてしまうことはせずに、慎重に様子をみながら、少しずつ落としていくことが必要になる」と訴えた。
 支払側からは、健康保険組合連合会理事の松本真人委員が、「引続き発熱外来や新型コロナ病床での対応が必要であることは理解する」と述べた上で、「当初生じたかかり増し経費のあり方も、ノウハウの蓄積により状況が変わってきたと思う。ソフトランディングするために一部は残すとしても、平時に戻す対応を図っていくべき」との考えを示した。
 具体的には、外来診療において感染予防策等を評価した「二類感染症患者入院診療加算」の特例的な算定の廃止や、「救急医療管理加算」の特例的な算定の見直し、入院診療において「特定集中治療室管理料」など3倍の点数が算定できる特定入院料の算定の見直し、電話・オンライン診療における特例的な対応の廃止などを求めた。

 

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