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ホーム全日病ニュース(2023年)第1028回/2023年3月15日号10年施設の100%が電子カルテ・オーダリングシステム導入

10年施設の100%が電子カルテ・オーダリングシステム導入

10年施設の100%が電子カルテ・オーダリングシステム導入

【報告 2022年度 個人情報保護に関するアンケート調査報告】
診療情報開示請求を受けた施設は8割超 請求者1位は弁護士
個人情報保護担当委員会 委員 森山 洋

 当会では2006年より「個人情報保護法認定保護団体」としての活動として、全会員施設を対象に個人情報保護管理に関する継続したアンケートを実施して以来16年を経過した。
 アンケート結果は例年本誌にて簡易報告を掲載し、全体報告については協会のホームページ上に掲載するので、詳細はそちらを参照されたい。

【調査方法等】
・調査票を病院個人情報管理担当者に①データ送信によるPDFファイル送信②メール利用による②郵送③FAXを併用送付し、自計記入後記名で、郵送、FAX、PDFにて返送された。
・会員病院2,537病院(前年2,537病院(前年比+-0)
・回答施設数404病院(前年419(前年比▲15))
・回答率は15.9%(前年16.5%(前年比▲0.6%ポイント))
・経年評価のための連続提出施設は10年連続で15施設(前年は8年連続施設抽出で31施設)
・調査期間は2022年11月16日から12月21日、更に回収率向上のため、最終的に2023年1月9日まで締切延長した。

【回答率について】
 回答率は過去最も低い15.9%となり、昨年初めて20%を割り込み、更に今年度微減となった(表1)。未だコロナ禍継続下ではあるが、他のアンケート調査も多く送付されていること、昨年に続き調査時期が年末年始の多忙期になり、更に期間が短いことも影響したと考える。
 委員会としては来年以降アンケート実施時期変更を検討している。
 以下、設問群毎に結果・考察を概要報告する。

表1 回収率等推移(過去10年抜粋)

【設問1. 回答施設概要】
 設立主体、病床構成については前年、例年と変化は見られなかった。以下今年度より⑤介護医療院を項目として追加した病床構成別表を提示する(表2)。

【設問2. 組織的対応について】
 「2.(1)個人情報管理責任者、(2)監査責任者の設置の有無、設置職種について」「2.(3)規定、誓約書等整備」の設問では、特に変化は見られない。
 「(4)掲示物について」は複数回答であるが、改正の影響なのか、総合案内周辺やホームページへの掲載などが昨年比では増加し、全体的に掲示箇所を増やした施設が多かったように見受けられた。
 2.(5)①~⑦は本年度の新設問であり、2021年改正の焦点の一つであった第三者提供の厳格化に関わる症例検討、学会発表などへの利用に際した同意取得方法についての設問であった。回答選択肢はどの設問も同様で「①掲示による黙示の同意」「②個別の同意」「③その他」「未回答」であったが、当然ではあるが①と②の必要性の場面分け(治療目的であるかどうか)判断に未だ混乱があると推察された。以下、判断が割れている3つの設問を抜粋する。

②症例検討会(治療を目的としない、外部者も参加)(表3)

③学会・論文での発表(表4)

④院外への学術目的での情報提供(表5)

 2.(6)以降は情報システムに関わる設問である。「2.(6)電子カルテ・オーダリングシステムの導入状況について」では、①の電子カルテ・オーダリング両方を導入している施設割合は昨年から7割を超え今回も73.3% となった。②オーダリングのみの8.2%と合わせると8割を超えた。nは15ではあるが、10年連続施設では①②合計でなんと100%であった。
 個人情報保護とは直接関連はないが、2022年診療報酬で義務化された400床以上の病院への情報システムのセキュリティ対策については、今次アンケート2(. 7)の設問ではPWのみが54.7%等対策に変化は見られなかった。
 以下、設問2(8)個人情報の外部持ち出し制限内容については規定文書による制限22.1%、メディア使用の禁止19.3%など、2.(9)SNS制限について制限していない施設が52.5%等、昨年・例年と変わらない結果であった。

【設問3および4. 研修への取り組みについて】
 3.は院内、4.は外部研修に関わる設問である。
 「3.(1)院内研修実施の有無」では実施率は82.4%(前年81.9%)、「(2)実施時期」は入職時、単独、併催、「( 3)対象」は全職員など全体の9割が年1回以上開催している。「(5)の研修で工夫している点」ではコロナ禍の影響もあり、③DVD/ビデオの視聴が初めて3割を超え(32.5%、前年26.4%)、逆に外部講師の招致は減少した。(16.2%、前年19.1%)
 「4.の外部の研修活用について」は、コロナ禍影響からの回復傾向が見られ、4.(1)の参加有無を問う設問で昨年の13.1%から24.0%まで回復した(過去最高値2015年36.3%)(表6)。

【5. 保険加入・苦情・補償/ 6. 相談・問合せ】
 「5. (1)個人情報漏えい保険加入状況」は、「①加入している」が37.9%(前年35.8%)で、微増傾向が続いている。「(2)苦情発生時の相談相手」は弁護士が39.8%(前年41.7%)、「(4)金銭補償例の有無」は変化なかったが、「(3)苦情発生の有無」では年間5件までの少数の苦情発生割合が72.8%(前年65.5%、一昨年56.8%)と増加傾向が見られた。
 「6(. 1)個人情報保護に関する相談・問い合わせの有無」は、①相談有りは例年と変わらず、自由記載欄でも特別な傾向は見られなかった。

【7. 開示請求に関して】
 「(1)病院で定める正規の手続きを経た診療情報開示の請求」を受けた施設割合は84.2%(前年85.7%)と高値で安定となった。「(2)の開示請求者」は集団肝炎訴訟支援CMの影響か、年々比率が上がってきた⑦弁護士が昨年に続き16.5%(前年16.9%)で1位となっている(本人15.1%、前年15.2%)。「( 3)不開示とした事例が1件以上あった」率は6.4%、「(4)開示請求件数の傾向」では①増加したと回答した施設が30.9%(前年29.4%、過去年最高は35.9%)、「(5)開示方法の周知方法」では④問い合わせがあった時に口頭説明45.9%(前年48. 7%)、「(6)開示費用」(①コピー代中央値20円)についても変化はなかった。

【8. マイナンバー制度・個人情報保護法改正について】
 「(1)2021年改正についての認知度」は71.3%(前年71.8%)、「(2)改正への自院対応した」74. 3%(前年80. 7%)、「(3)法への対応内容」では、「①規定の改訂(29.8%)、③職員教育(25.3%)、②システム改訂(15. 6%)と「(4)具体的に実施したもの」でも①外来患者への同意取得が10.7%(前年7.2%)と増加した以外、回答率、順位ともに過去の傾向通りであった。
 8.(6)に新設した「個人情報の漏洩時に個人情報保護委員会に報告する事態(複数回答)」では、クイズ形式に近い設問となっているが、8.(1)の改正の認知度とほぼ同様の正答率(約75%程度)となり、逆に25%、1/4の施設では改正内容を把握していないということであり、ある意味憂慮すべき結果となった(表7)。

【9.  当協会の個人情報保護法への取り組みについて】
 「(1)認定個人情報保護団体としての研修会開催の認知度について」では①知っているが64.9%(前年66.3%、連続施設15施設の認知度93. 3%)、「(2)研修会参加」では①ベーシックコース、②アドバンストコース合わせて50.3%(前年51.1%)、「(3)当協会が認定個人情報保護団体であること」では、①知っているが55.7%(前年61.1%)と6割を切り、寂しい結果となった。その後の「(4)活動内容」「(5)相談経験」では①相談したことがあるが過去最高の7.7%(昨年7.4%)となった。「(6)当協会ホームページ上の個人情報保護方針や規定集の例示の活用について」までほぼ例年とかわらない認知度、参加率であった。
 「(7)当協会の個人情報保護Q&A本(事例集)について」では『医療・介護における個人情報保護Q&A―改正法の正しい理解と適切な判断のために(2020)』の認知度は45.3%(前年46.3%)にとどまった。今般3月出版される『医療・介護における個人情報保護Q&A―改正法の正しい理解と適切な判断のために(第3版 2022)』での認知度アップを目指したい。

【まとめ】
 法施行後16年、個人情報保護法も2015年改正(2017年全面施行)、AI、ビッグデータ、国境を超えるデジタル化の波により複雑化する社会の変化に伴い、個人情報保護、そして組織的な管理の精緻化が求められた2020年改正、そして2021年と、環境変化対応を含めた複数改正がなされた。そして更には3年以上にわたるコロナ禍と、一般企業以上に医療機関の個人情報保護管理は厳格化が求められる環境となった。当会も本アンケートはもとより、ここ数年はWeb、現地開催と両建てでの研修会を開催、更に今般は上記のQ&A第3版発行を通して、直接的に会員施設、法人の現場支援となる施策を実施した。しかし、相談窓口としての認知度、研修会の参加率の向上など課題も多く認識できたアンケート結果となった。本結果が今後の委員会活動の改善、そして各会員施設での取り組みの参考になることを祈念して、報告と致します。

 

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