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ホーム全日病ニュース(2023年)第1032回/2023年5月15日号猪口会長が2040年を見据えた地域医療構想について講演

猪口会長が2040年を見据えた地域医療構想について講演

猪口会長が2040年を見据えた地域医療構想について講演

【日本医学会総会】病院機能をわかりやすく表示する私案を提示

 第31回日本医学会総会が開催され、4月23日に実施された「2040年を見据えた地域医療構想─我が国の医療供給体制の課題と未来への提言」の企画で、全日病の猪口雄二会長(日本医師会副会長)が講演した。猪口会長の講演内容を紹介するとともに、各演者の講演や会場での議論を踏まえ、自治医科大学の永井良三学長らがまとめた地域医療構想の実現に向けた提言も示す。

地域の実情を踏まえた構想を策定
 猪口会長は最初に、地域医療構想の位置づけを整理。2025年の実現を目指して、将来の医療機能ごとの医療需要に医療供給、特に病床数を合わせるということを目的とした地域医療構想が、2026年以降は新たな地域医療構想として、再出発することが説明された。新たな地域医療構想を考えるため、「2023・2024年度は、非常に重要な時期になる」と強調した。
 次の目標は、2040年が想定される。その間に、「都市部での高齢化と地方での過疎化が加速し、これが顕著になる。地域医療構想は二次医療圏を基本単位とするが、人口100万人を超える医療圏がある一方で、人口10万人未満の医療圏がある。それぞれ実情が異なるので、地域医療構想を一つの考え方で整理するには、無理がある。二次医療圏を見直すべきだが、過去の経緯があり、難しいと言われる。そうであれば、例えば、都市部は区分けし、過疎地は隣接した地域を合わせるなどして、構想区域を考えるべきだ」と主張した。
 患者数について、「入院は、地域によりすでにピークアウトしたところと、これから増大するところがある。外来は、一部の地域を除き、縮小傾向にある。在宅患者は全体として増えていく。現状の地域医療構想はかなり古いデータを使って、病床の必要量などを計算している。早く直近のデータを使って、新たな地域医療構想を考える必要がある」と述べた。
 地域医療構想の仕組みを振り返ると、高度急性期、急性期、回復期、慢性期の医療機能は当初、診療報酬の出来高点数で区切った。急性期病床の長期入院と慢性期の一定割合が、在宅や高齢者施設に移行することを見込んで、全体の病床数は減ることを目標とした。しかし、病床数を減らすというメッセージが過度に伝わり、現場に混乱を引き起こすという事態が生じた。今後は、地域で必要な医療機能を確保するために、現状の医療機能の変更を医療機関に求める場合があるという地域医療構想の趣旨をより強く伝える必要があるとした。
 また、地域医療構想を考える上で、介護や在宅、外来医療との整合性を高めていく必要性を猪口会長は強調した。その場合に、介護は市区町村が所管しており、医療提供体制を所管する都道府県との間で調整を図ることの難しさがあることに懸念を示した。さらに、外来における機能分化も進んでいる。外来機能報告制度を踏まえ、200床以上の病院の多くが、紹介受診重点医療機関になっていく可能性がある。猪口会長は、これらを総合した地域医療構想を考えていかなければならないとの考えを示した。

病床機能よりも病院機能を表示
 病床区分については、「回復期の定義がずっと問題になってきた。急性期と回復期を区分するために、奈良方式や石川方式、大阪府の分析などがあり、地域によりさまざまな工夫が行われている」と述べた。例えば、奈良方式では、急性期を重症急性期と軽症急性期に分ける目安を設け、回復期は、「急性期を経過した患者への在宅復帰」と整理した。軽症急性期と回復期を合わせると、2025年の回復期の病床数の必要量とほぼ一致している。こうした地域の工夫により、病棟機能の選択が容易になることを説明した。
 一方で、「患者・住民に知ってもらうためには、病床区分はわかりにくい。病院機能として知ってもらったほうがわかりやすい」と述べた。そのための「私案」として、病院機能の整理を示した(下図参照)。
 これをみると、急性期病院は、二次医療圏単位で一般急性期・二次救急を担う病院としている。それとは別に地域連携病院があり、地域包括ケアやシステム・連携を担う。こちらは市区町村単位の病院である。猪口会長は、「最近、よく言われる地域密着型病院がこれに当たる」とした。一方、慢性期医療を担う療養病院は二次医療圏単位で整備する病院と位置づけた。
 その上で、「ほかにも専門病院など、これらに該当しない病院もあるが、このように病院としての医療機能の特徴が示される表記を使えばよいのではないかと思う」と述べた。
 また、「もちろん、地域によりこのような区分ができず、急性期病院と地域連携病院の両方を担う病院や、地域連携病院と療養病院の両方を担う病院もあるだろう。いずれにせよ、国民目線でわかりやすい表示が行われることが望ましい」と述べ、講演を締め括った。

演者の講演や議論を踏まえ提言
 同企画では、著名な演者が地域医療構想に関して講演し、その後の議論も経て、永井学長が提言をまとめた。以下がその内容で、演者は猪口会長、永井学長のほか、迫井正深氏(内閣官房新型コロナウイルス等感染対策推進室)、荒井正吾氏(前奈良県知事)、今村知明氏(奈良県立医科大学医学部公衆衛生学講座)、大屋祐輔氏(琉球大学病院)、猪熊律子氏(読売新聞東京本社編集委員室)となっている。
(地域医療構想の実現に向けて)
①最新の地域医療に関する情報を共有して、地域医療構想調整会議・協議会における懇談と議論を進める
②地域医療のデータ収集と医療連携のためのシステムを整備する
③医療機関の機能をわかりやすく表示し、分担と連携を地域に適した形で提供する
 急性期と慢性期
 かかりつけ医と高度医療機関
 入院医療と在宅医療
 専門医と総合医
④働き方改革と並行して、タスクシフト・タスクシェアを推進する
 看護師特定行為の推進と支援など
⑤社会システムとしての地域医療構想を学生に教育する

 

全日病ニュース2023年5月15日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 第 8章

    https://www.ajha.or.jp/about_us/60years/pdf/60years_08.pdf

    理事会・常任理事会で神野副会長が私案を ... 全日病の猪口雄二会長らが要望書を厚生労働省の ... 第4単位 2日目「病床再編、医療連携」.

  • [2] 公益社団法人 - 全日本病院協会 60周年記念誌

    https://www.ajha.or.jp/about_us/60years/pdf/60years.pdf

    2017/09/03 ... 症患者受入病床確保対策会議」を設け、病床確保に努めておりま. す。 このような状況の中、第8代会長である猪口雄二先生には、本.

  • [3] 診療報酬算定事務の効率化・合理化で対応方針示す

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2017/171015.pdf

    2017/10/15 ... 全日病会長猪口雄二委員は、. 「最近のレセコンは漢字から ... 類(K コード)に外保連手術試案の基 ... 日以内の評価が手厚い「緩和ケア病棟.

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