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ホーム全日病ニュース(2023年)第1032回/2023年5月15日号医療理念を念頭に、患者・地域の関係者・行政・職員、そして未来の職員に向けて「広報」を活用する

医療理念を念頭に、患者・地域の関係者・行政・職員、
そして未来の職員に向けて「広報」を活用する

医療理念を念頭に、患者・地域の関係者・行政・職員、
そして未来の職員に向けて「広報」を活用する

【シリーズ●先進的な病院広報活動の紹介――その⑥】社会医療法人ペガサス 馬場記念病院

 民間病院の広報活動を紹介するシリーズの第6回は、馬場記念病院(大阪府堺市)を取材した。
 同院の広報活動は、患者・地域の関係者・行政・職員に向けて展開。法人全体の医療理念として「どこから見ても、誰にでも、よくわかる病院であり続けます」と宣言しているが、それを具現化する柱の一つが広報活動だ。

 馬場武彦理事長が馬場記念病院に着任したのは、約30年前の1992年のこと。当時、1989年に都道府県医療計画の策定により病床規制がスタートしたこともあり、全国的にも病院経営が厳しい時代を迎えていた。そうした中で「コストが比較的かからずに効果的なこととして、広報活動と病診連携の2つに着目しました。どうしたら地域に見てもらいやすい病院になるのだろうかと常に考えて、その頃から広報に力を注いできました」と振り返る。


馬場武彦理事長

●医療理念「ペガサスの約束」を掲げて病診連携も推進
 病院の経営も広報も、馬場記念病院の設立母体である社会医療法人ペガサスが掲げる医療理念「ペガサスの約束」(下記)のもとに進められている。
 その約束では「真ん中にいるのは、患者さま」であり、「すべてを支えているのは、人と、町とのきずな」と明記。そして「どこから見ても、誰にでも、よくわかる病院であり続けます」とうたっている。患者や町(地域)を常に念頭において活動していると言えるだろう。
 馬場理事長は「病院がある堺市では急性期病院の棲み分け、機能分担がある程度できていました。そして私が着任する以前から当院は、特に脳卒中、脳神経外科に強いと他院からも地域の方々からも評価・信頼されていました。したがって、『そうした強みはより強くしていきます』と宣伝し、実行してきました」と話す。
 地域医療支援病院としての病診連携の推進については「当院は外来への受診を地域の皆さんに呼びかけるタイプの病院ではないので、開業医の先生方に向けた広報を重視しています。また地域の方には当院の役割を示して『最後は頼ってくださいね』といったスタンスで広報を進めています」。

「ペガサスの約束」
すべての真ん中にいるのは、患者さまです。
はりつめた瞬間(とき)も、案ずる時間(とき)も、そしてゆるやかな日々(とき)も、ともに過ごします。
すべてを支えているのは、人と、町とのきずなです。
どこから見ても、誰にでも、よくわかる病院であり続けます。
ふるえる心に、よりそい。
待ちわびる思いへ、語り。
新たな願いと、手をたずさえ。
一つひとつの生命(いのち)を、まっすぐにどこまでも見つめていきます。

●「継続ケア」をグループ全体で
 馬場記念病院は300床(急性期248、回復期52)の地域医療支援病院で、150床のペガサスリハビリテーション病院が隣接。二次救急病院として救急搬送は年間6,000件前後にのぼる。
 救急搬送後の「継続ケア」にも力を入れており、姉妹法人である「社会福祉法人風の馬」とともに医療・介護サービスを切れ目なく提供。
 馬場理事長は「救急、急性期、回復期、慢性期、在宅、介護施設、そして社会復帰に向けた作業所や、医療的ケア児と健常児がともに成長できる保育園もあります。そうした医療・介護の全領域をカバーする仕組みをグループ全体でつくっています」と説明する。

●患者・地域の関係者・行政・職員に向けて「広報」を活用
 そんな特徴をもつ馬場記念病院の広報は、職員の広報委員会が中心となって進めている。具体的には、編集(広報誌)・院内掲示・ホームページ・イベントの各グループにわかれて活動している。
 同院では職員の自主性を徹底して尊重しており、「“放し飼い”が当院・法人の特徴のひとつです」と馬場理事長は破顔する。広報委員会のメンバーも、上司等からの強制ではなく、希望者が参集している。
 広報誌は◇ペガサス情報誌「つばさ」◇ペガサスニュース◇循環器科ニュース(循環器科が独自に制作)の3種類がある。いずれも院内に配置して誰でも自由に読めるようにしており、ホームページにも掲載。また「つばさ」は、開業医や近隣の病院・関係機関・行政など、広報が必要な配付先をリスト化して毎号郵送している。
 メインの「つばさ」には、「開業医の先生や関係団体などの関係者を意識した内容も盛り込むようにしています。厚生労働省や自治体に向けたメッセージの発信を考慮した誌面にするという工夫もしています。そしてもう一つのターゲットは職員です」と馬場理事長。
 「病院・法人がめざしていることは何か。何に力を入れているか等について、『つばさ』を通じて職員に知ってもらう。『読むように』と職員に言っているわけではありませんが、読んで勉強するだろうと考えてつくっています」。
 その「つばさ」では毎号、特集を組み、全国的な課題や地域課題とそれに対する病院や法人の対応を、写真もたくさん使ってわかりやすく丁寧に紹介している。
 テーマや内容の検討では「読み手がおもしろいと思うか否かを常に考えているので、ボツになった企画も少なくありません。また毎号、なるべく多職種が登場するように配慮しています」(馬場理事長)。
 最近のテーマは右上のとおりで、いずれの号にも参考にしたい視点や取り組み、今後の方向が盛り込まれていると言えるだろう。またコロナ禍への対応は2号連続で特集した。第2特集では近隣の診療所や事業所を紹介しており、病診連携や地域包括ケアを積極的に進めるという姿勢が、広報においても貫かれている。

●働き方改革も従前から推進
 医療従事者の特徴として、所持している資格ひとつで日本全国どこでも働けて転職しやすい、ということがある。同時に実際の医療現場での経験の積み重ね、レベルアップ・スキルアップも非常に大切だ。
 馬場記念病院は、職員の確保と養成にも力を入れてきた。「来年4月から勤務医の時間外労働の上限規制が始まりますが、働き方改革について私は以前から医療従事者全体の課題として、自院においても、また大阪府レベルでも、自らのライフワーク的なものとして取り組んできました」と馬場理事長は話す。
 特に新人・若者の定着を重視している。「どうしたらモチベーションを持って、ハッピーと思って楽しく働き続けてもらえるのか。その仕組みをどうつくるかについて常々、心を砕いてきました」。
 その一環として20年近く前の2006年に導入したのが「ペガサスメンター制度」だ。具体的には職種がなるべく異なる新人6~7人でグループをつくり、そこに先輩職員のメンター(助言者)1人を配置して、一定期間メンターが新人をフォローする。「それぞれの職場内でのトラブルやプライベートでの悩みなどがあっても、他に相談したり解決しやすくしたりして、辞めていかないようにしてきています」。
 また同制度により、自分の専門だけにとらわれない幅広い視野が育まれている。「それ以外のさまざまな取り組みも、例えば運動会のチームのメンバー構成や職員旅行なども、多職種で行うことを基本にしています」(馬場理事長)。

●広報誌でも「働き方改革」を紹介
 広報誌「つばさ」の2022年冬号でも「ペガサスの働き方改革は今。」と題して特集を組み、病院や法人の取り組み・挑戦を掲載。
 その特集では◇障害を持つ方のための「ペガサス就労支援システム」◇外国人職員の活躍◇増えている再雇用のプラチナナース◇高齢者も積極的に雇用、といった改革の到達点が浮き彫りにされている。
 また人事課・庶務課・厚生課・健康保険組合を集約して2015年に設置した「職員サポートセンター」を詳しく紹介。さらには働き方改革に対する馬場理事長の思いや、社会に向けたメッセージがわかるインタビューと盛りだくさんだ。

●就職したいと思う人に向けた広報の充実も必要
 広報の役割について馬場理事長は「人材確保は今後ますます困難になるので、当院・法人に就職したいと思う人の掘り起こしという面をより一層重視して進めることが大切になると思います」と指摘する。
 「広報委員会のイベントグループの仕事は、その大半が職員の採用活動のアシストです。この間はコロナ禍で出来ませんでしたが、病院見学は小学校入学前の子どもから学生まで幅広く積極的に受け入れています」。
 おわりに他の病院へのアドバイスを馬場理事長に聞いた。「利用者を増やすなど目の前の課題を中心にするのではなく、視野を少し広げて、地域や将来の担い手などに向けて広報してはどうでしょうか。そのほうが担当する職員も楽しいし、やりがいを感じるのではないかと思います」。

【病院の概要】
所在地 大阪府堺市西区浜寺船尾町東4- 244
病床数 一般病棟:231床、脳卒中ケアユニット:12床、ハイケアユニット入院医療管理料2:5床、回復期リハビリテーション病棟:52床、計300床
開設者 社会医療法人ペガサス
理事長 馬場武彦
診療科目 内科・循環器科・呼吸器科・外科・消化器科・脳神経外科・整形外科・神経内科・形成外科・皮膚科・泌尿器科・眼科・リハビリテーション科・麻酔科・放射線科

 

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