全日病ニュース
妊産婦等の出産に関する支援策等の検討会が初会合
妊産婦等の出産に関する支援策等の検討会が初会合
【厚労省・妊産婦等支援策等検討会】2025年春のとりまとめに向け検討スケジュール示す
厚生労働省の「妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策等に関する検討会」(田邊國昭座長)は6月26日に初会合を開いた。2025年春頃のとりまとめに向けた今後の検討スケジュールを了承した。
2023年12月に閣議決定された「こども未来戦略」において、「2026年度を目途に、出産費用(正常分娩)の保険適用の導入を含め、出産に関する支援等のさらなる強化について検討を進める」とされている。これを踏まえ、検討会では妊娠・出産・産後に関する様々な支援等のさらなる強化の方向性について具体的な検討を行う。
月1回程度の開催を予定し、2024年夏頃にヒアリングを実施。秋以降、出産に関する支援策等や妊娠期・産前産後に関する支援策等などについて検討する。具体的な制度設計に関しては、とりまとめ後に各担当局の審議会で別途議論していく見通しだ。
出産費用の保険適用で慎重な意見
会議冒頭には、厚労省医政局、保険局、こども家庭庁成育局が、妊産婦等の支援策等をめぐる現状について報告。検討会設置の契機となった出産育児一時金の42万円から50万円への引上げや、分娩施設情報のウェブサイト『出産なび』の開設のほか、周産期医療の集約化・重点化、妊産婦健診の実施、産前・産後サポート事業、産後ケア事業などについて説明した。
その後の自由討議では、正常分娩の保険適用の是非を念頭に、妊産婦とその家族の負担軽減を図ることの影響をめぐり意見が交わされた。委員からは主に出産費用の保険適用に関する意見が相次いだ。
日本産科婦人科学会常務理事の亀井良政構成員は、「保険適用により、経営が成り立たず分娩を取りやめてしまう施設が突然大量発生するといった事態のないようにしてもらいたい。大学病院や総合病院にもローリスクの正常分娩が押し寄せ、勤務が破綻することも危惧している」と述べた。
日本産婦人科医会副会長の前田津紀夫構成員は、「正常分娩といっても様々な過程があり、保険適用された場合の判断がどうなるのか、疑問に思う点も多々ある。現状、出産育児一時金よりも出産費用が高い都道府県もある。保険適用となって(現在の出産費用を下回る点数が設定され)、多くの医療機関が減収となれば、経営が立ち行かなくなる」との懸念を示した。
日本医師会常任理事の濵口欣也構成員は、日本の妊産婦の死亡率の低さに言及し、「この医療水準を維持してきたのは現場の医療従事者である」と強調。その上で、「妊産婦の費用負担ばかりに論点が集中するが、その結果地域の医療が崩壊するということになれば、妊産婦が不幸になる。周産期医療体制と費用負担がバランスよく維持され、よりよい医療提供が実現されなければならない」との見解を示した。
健康保険組合連合会会長代理の佐野雅宏構成員は、「医療保険者にとって最大の関心対象になるが、現時点では賛成とも反対とも言えない」とした上で、今後の論点として①保険適用の目的の明確化②データのさらなる見える化③給付と負担のバランスの整理④地域の産科医や分娩施設をどう維持するか─をあげた。
三重県鈴鹿市長の末松則子構成員は、「地方と都市部では出産費用も周産期医療体制も異なる点が課題。妊婦がお産難民にならず、産科医療機関の安定運営が可能となるよう、公定価格の設定については十分な議論を求めたい」との考えを述べた。また、「医師の偏在を防ぐ支援策であるべき。保険適用により出生率が向上するのかといった観点からの検討が必要」と指摘した。
株式会社ベネッセクリエイティブワークスたまごクラブ前編集長の中西和代構成員は、妊娠・出産・子育て世代向け情報誌で実施した最新のアンケート結果を紹介。「日本は妊娠・出産がしづらい」との回答が母親で75%、父親で59%にのぼり、さらに約8〜 9割がその理由として「経済的・金銭的負担」をあげたことを踏まえ、「妊産婦とその家庭の負担軽減のために、お財布を気にせずに妊娠・出産ができて、産後ケアが整うことが重要」と述べた。一方で、「保険適用だけが話題として独り歩きしている。実情がよくわかっていない人も多いのではないか」と指摘した。
研究事業で出産費用等のデータを収集
同日の検討会では、「分娩を取り扱う医療機関等の費用構造の把握のための調査研究」について、研究班の代表を務める早稲田大学政治経済学術院教授の野口晴子参考人より報告された。同研究は、正常分娩を取り扱う医療機関を対象に、出産等の費用構造等の実態を把握することを目的とする。
2023年度の調査では有効回答数が少ない、比較的経営状態のよい施設からの回答が多いなど、収集データに偏りがあったため、2024年度の大規模調査においては結果の代表性の確保が重要であり、ウェイトをかけたオーバーサンプリングの実施などの工夫が必要とした。
これに対し、亀井構成員は、「短期間の調査で回答負担が極めて大きく、当学会内でも大きな反発があった。今回調査でも回答施設に偏りが生じ、実態と乖離した結果が出てしまい、それをもとに保険適用の議論が行われ、費用に反映されるのではないかとの危機感を抱いている」と強い懸念を示した。
厚労省は、調査手法や項目設定など、引き続き研究班で検討していくとの考えを示した。
全日病ニュース2024年7月15日号 HTML版
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[1] 第 8章
https://www.ajha.or.jp/about_us/60years/pdf/60years_08.pdf
全日本病院協会(以下、全日病)が主催する. 2018年度診療報酬改定説明会が3月13日に東京・. 中央区のベルサール汐留で開かれた。全国の会員.
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[2] 2023.5.1 No.1031
https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2023/230501.pdf
2023/05/01 ... 「妊産婦モニタリング支援事業」で. は、周産期母子医療センター ... 参加者との間で討議する。本研修は病院管理士の継続要. 件③と看護管理士 ...
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[3] 2024.6.1 No.1056
https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2024/240601.pdf
2024/06/01 ... 医師偏在があり、病院の医師は不足し ... 【主な討議事項】. ○ 新たな地域医療構想について、厚生. 労働省の「新たな地域医療構想等に. 関する検討会」 ...
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