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ホーム全日病ニュース(2024年)第1060回/2024年8月1日号2023年度病床機能報告は2025年見込みまで約3千床に迫る

2023年度病床機能報告は2025年見込みまで約3千床に迫る

2023年度病床機能報告は2025年見込みまで約3千床に迫る

【厚労省・地域医療構想WG】速報値が示され、進捗を評価

 厚生労働省の地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ(尾形裕也座長)は7月10日、2025年を目標とする地域医療構想の進捗を確認した。2023年度病床機能報告の速報値は合計119.3万床となり、2022年度病床数より6千床減少。2025年見込みの119.0万床まで約3千床に迫ったことから、全体として必要量に近づいていると評価した。
 ただ、2023年度病床機能報告において、病棟単位(有床診療所の場合は診療所単位)で休棟と報告されている病床は3万5,571床存在した。非稼働病棟の病床数は都道府県によってばらつきがあるが、病床機能報告上の許可病床数に占める割合として、最大の都道府県は6%であった。
 2025年の病床の必要量との乖離については、2015年から2023年にかけて、病床機能計の乖離率は5.0%から0.1%に縮小しており、必要量に近づいている。
 病床機能別にみても、高度急性期は+29.9%から+22.3%、急性期は+48.8%から+31.2%、回復期は▲65.2%から▲45.6%、慢性期は+24.7%から+6.6%となっており、それぞれにおいて乖離率は縮小しており、必要量に近づいている。
 病床機能計について、病床機能報告上の病床数と2025年の必要量との乖離の変化を構想区域別にみても、全体として乖離は縮小傾向にある。
 また、地域医療構想調整会議における検討状況等の調査結果についても報告された。2024年3月末時点での各都道府県の地域医療構想の担当部局に対し、各医療機関の対応方針の策定や検証・見直しの状況を確認した。
 地域医療構想の推進に係る年度目標の策定状況については、全構想区域のうち312区域で設定しており(2023年9月時点より+72区域)、そのうち、対応方針の策定率を目標としている構想区域は209区域(同+26区域)、対応方針の実施率を目標としている構想区域は53区域(同+30区域)、その他の目標を設定している構想区域は50区域(同+18区域)であった。
 2023年度までに医療機関の対応方針の策定率が100%となった構想区域は、246区域(2023年9月時点より+146区域)となった。
 全医療機関の検討状況について、2023年3月末時点の調査結果と比較すると、措置済を含む「合意・検証済」の医療機関単位の割合が60%から91%、病床単位の割合が76%から96%に増加。再検証対象医療機関では、措置済を含む「検証済」が61%から93%に増加しており、公立・公的病院以外のその他の医療機関でも措置済を含む「合意済」の医療機関単位の割合が55%から90%に増加している。
 都道府県知事の権限行使の状況については、非稼働病棟への対応は調整会議での協議が514区域だが、命令・要請・勧告を行った区域はなかった。厚労省は「権限行使前の段階で調整が行われている」と説明した。

今後は在宅医療の議論が必要
 2023年度病床機能報告を受け、委員の多くは地域医療構想の進捗に関して一定の評価ができるとの考えを示した。
 奈良県立医科大学教授の今村知明構成員は、「病床機能報告の本来の議論は高齢化に伴う30万人分の入院患者の減少であり、機能分化の考えに基づき対応してきた。2024年まできて、少なくとも30万人の行き場がなくなったというわけではないので、本来の地域医療構想の目的からみてうまくいっているという点を説明してほしい」と述べた。
 全国自治体病院協議会会長の望月泉構成員は、非稼働病棟が約3万5,000床との報告について、「私も地域の調整会議に参加しているが、人口減少が続く中で非稼働病棟が今後活用されることは難しいと考える」と述べた。その上で、都道府県知事の命令・勧告等の権限行使がゼロであった点を指摘し、知事権限の取扱いについて検討が必要との考えを示した。
 全日病副会長の織田正道構成員は、厚労省が一定の進捗を認める一方で、今後の対応方針案の中で「依然として必要量との大きい乖離が残っている」「進捗状況に差が生じている」などの表現がされている点について、「各都道府県の努力が見えない形になっており、留意する必要がある」と指摘した。
 また、「急性期が多く回復期が少ないと繰り返し議論してきたが、一方が病床単位、もう一方が病棟単位と、もともと違うものを比較している。この議論はもう終わってもよいのではないか。当初の目標通り、30万床分が在宅医療などに問題なく移行している点が重要であり、今後は在宅の議論を進めるべき」との考えを示した。

地域包括医療病棟は急性期・回復期で報告
 同日のWGでは、2024年度の病床機能報告についても議論を行った。
 病床機能報告では病棟が担う医療機能をいずれか一つ選択して報告することとされているが、実際の病棟にはさまざまな病期の患者が入院していることから、当該病棟でいずれかの機能のうち最も多くの割合の患者を報告することを基本とする。
 それを踏まえて、2024年度診療報酬改定で新設された地域包括医療病棟の病床機能報告上の取扱いについて、地域包括医療病棟入院料を算定する病棟は「病棟が主に回復期機能を提供している場合は回復期機能を選択し、主に急性期機能を提供している場合は急性期機能を選択するなど、個々の病棟の役割や入院患者の状態に照らして、医療機能を適切に選択する」との案が了承された。
 織田構成員は急性期・回復期ともに選択できる点に賛意を示した。
 また、前回のWGで「救急医療体制の確保」や「医師以外の医療従事者の確保」「医師の確保」を課題にあげた構想区域が多かったとの調査結果が報告されたことを受けて、病床機能報告において時間外、夜間、休日の手術・処置の件数についても新たに報告することが了承された。具体的には、手術・処置の時間外加算、休日加算、深夜加算1および2の算定件数を新たな報告項目として追加する。
 日本医師会常任理事の江澤和彦構成員は「深夜帯は救急搬送件数が少ないとはいえ、重篤な患者がいるかもしれない。これらの加算がどのような病態像に合致するかといった点も含めて、調整会議で議論しやすいようなデータを提示してほしい」と求めた。

推進区域・モデル推進区域を設定
 あわせて、前回のWGで報告された推進区域およびモデル推進区域についても報告された。2025年に向け、地域の実情に応じた地域医療構想の取組みをさらに推進するため、推進区域・モデル推進区域の設定を行い、モデル推進区域では、国がアウトリーチ型の伴走支援を行う。
 厚労省は、都道府県との調整を踏まえ、次の観点から推進区域を選定。
 ① データの特性だけでは説明できない合計病床数の必要量との差異が特に生じていること。
 ② データの特性だけでは説明できない機能別病床数の必要量との差異が特に生じていること。
 ③ 2023年9月末調査において再検証対象医療機関における対応状況として検証中または検証未開始の医療機関があること。
 ④ その他医療提供体制上の課題があって重点的な支援の必要性があると考えられること。
 モデル推進区域は、都道府県との調整を踏まえ、推進区域の中から、医療提供体制上の課題や重点的な支援の必要性、地域医療構想の実現に向けた取組み状況等を総合的に勘案して設定。技術的支援として、◇都道府県コンシェルジュ(ワンストップ窓口)の設置◇区域対応方針の作成支援◇構想区域内の課題の把握◇分析結果を踏まえた取組みに関する支援─などを行う。なお、これらは従来の重点支援区域への支援とは異なる新たな支援策である。
 財政的支援としては、重点支援区域への支援と同様に地域医療介護総合確保基金において優先配分を行うほか、個別医療機関の再編統合を実施する場合には上乗せの財政支援を行うとしている。
 7月5日時点で、モデル推進区域に設定されたのは以下の通り。◇秋田県【大館・鹿角、能代・山本】◇山形県【庄内】◇栃木県【宇都宮】◇群馬県【伊勢崎、藤岡】◇石川県【能登北部】◇山梨県【峡南】◇三重県【松阪】◇滋賀県【湖北】◇京都府【丹後】◇山口県【宇部・小野田】◇高知県【中央】◇長崎県【長崎】。
 委員からは、推進区域・モデル推進区域の取組みへ期待する意見が多くあがった。地域の特性を踏まえた対応や、財政支援を求めた。
 織田構成員は、従来の重点支援区域との違いについて質問。厚労省は、「重点支援区域は複数医療機関の再編を前提に、都道府県からの申請で設定された。一方で、今回のモデル推進区域は事前に都道府県と調整した上で、厚労省が設定している。重点支援区域についてもこのたび取扱いをやめるのではなく、これまでの取組み状況も踏まえ一貫した対応を進めていきたい」と説明した。
 これに対して、織田構成員は、「データだけを見ず、慎重に、丁寧に対応してもらいたい」と求めた。

 

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