全日病ニュース
入院医療機能に応じた評価(入院料逓減制導入・体制強化加算廃止・医療区分精緻化)~回復期・慢性期病棟について~
入院医療機能に応じた評価
(入院料逓減制導入・体制強化加算廃止・医療区分精緻化)
~回復期・慢性期病棟について~
【診療報酬改定シリーズ●2024年度改定の解説④】全日本病院協会 医療保険・診療報酬委員会 委員 田蒔正治
■はじめに
2024年度診療報酬改定は6年ぶりの診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス報酬改定となった。大きな特徴は短期的課題として物価高騰・賃金上昇への取組み、長期的には少子高齢化を迎える2040年問題を見据えた、医療DX推進および医療と介護の連携推進等の改定であった。
その中で、高齢者救急の担い手として地域包括ケア病棟が浮上したが、13:1看護基準、夜間・休日での救急対応が困難等から、新たに地域包括医療病棟が新設された。
回復期入院医療としての地域包括ケア病棟入院料等には入院40日目を基準に逓減制が導入され、医療資源投入量を反映した評価となった。回復期リハビリテーション病棟入院料では、専従の社会福祉士の配置、適切な口腔ケア提供体制の確保、運動器リハビリテーション料の算定上限を1日6単位に引き下げた。
また、慢性期入院医療では療養病棟入院基本料の医療区分がこれまでの3区分から、「疾患・状態」・「処置」に係る9区分に細区分された27分類とし、スモンに関する3分類と合わせた30分類となった。
■回復期入院医療
【地域包括ケア病棟入院料等の見直し】
地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料では入院期間の短縮による医療資源を減らすために、入院40日以内と41日以上で評価を見直し、より早期の退院・転院を促す方向が示された(図1)。
施設基準では自院の一般病棟からの転棟患者割合・自宅等からの入棟患者割合、在宅復帰率の計算対象において、短期滞在手術等基本料1・3(短手1・3)の患者が除外された。短手3の算定件数の多い施設では平均在院日数が短く施設基準を満たしやすいことから、除外となった。
入院料1~5の在宅復帰率はすべて据え置かれ、在宅復帰・在宅支援の優れた在宅強化型・超強化型の介護老人保健施設への退院患者数の半数が加えられるようになった。200床以上の病院で一般病棟から転棟患者割合を満たせない場合に15%減算されるが、同入院料2・4の転棟割合が60%から65%未満に緩和された。
重症度、医療・看護必要度(看護必要度)は看護必要度Ⅰが12%から10%に緩和、看護必要度Ⅱは8%に据え置かれたが、その評価項目が大きく見直された。
地域包括ケア病棟入院料における「在宅医療等の実績」のうち、訪問看護に係る実績に「退院後訪問指導料」と介護保険の「(介護予防)訪問看護料」も対象に加え、その実績に合わせて要件が見直された。また、同一・隣接する敷地内の併設事業所の要件から「訪問看護」が外された。看護補助体制充実加算が3区分となり、身体拘束実施日は加算3で算定する。
在宅等からの緊急入院の受入を促進するために、受入負担を考慮した在宅患者支援病床初期加算が見直された。「介護老人保健施設からの入院」、「その他の高齢者施設・自宅からの入院」において、それぞれ救急搬送患者または救急患者連携搬送料を算定した他の医療機関からの入院患者と、それ以外の患者の場合では前者の点数が100点高くなった。
また、介護保険施設との連携が重視され、施設入所者が協力医療機関を受診して入院となった場合は、「協力対象施設入所者入院加算」が新設された。
【回復期リハビリテーション病棟入院料等の見直し】
医療資源の少ない地域で、病室単位で届出可能な回復期リハビリテーション入院医療管理料が新設された。回復期リハビリテーション病棟入院料の点数が引き上げられ、体制強化加算は廃止になった。医師は専従から専任に切り替わったが、入院料1・2での社会福祉士の専従配置1人以上が義務づけられた。
運動器リハビリテーション料の算定上限は現行の9単位から1日6単位に引き下げられ、入院料1~5で定期的(2週間に1回以上)にFIM測定してその結果を診療録等に記録することや、入院料1・3でのFIM測定に関する院内研修会の年1回以上開催が要件化された。
患者の栄養評価では入院料1 でGLIM基準が要件化、同2~5でもGLIM基準の活用が推奨となった。入院料1・2で口腔管理に必要な体制整備の要件化、地域リハビリテーション活動支援事業等の地域支援事業に地域医師会等と連携して参加すること等が推奨された。
■慢性期入院医療
【療養病棟入院基本料の見直し】
疾患・状態に係る3つの医療区分、処置等に係る3つの医療区分および3つのADL区分に基づく27分類およびスモンに関する3分類の合計30分類の評価となった。
医療区分の精緻化による「処置等」の区分が「疾患・状態」と同じか、高い場合は改定前より点数が増えるが、低い区分になる場合は低い点数となった。今後、「処置等」の区分が高い患者の受入促進に取り組む医療機関が増えていくと思われる。
医療区分3の中心静脈栄養の対象患者は広汎性腹膜炎、腸閉塞、難治性嘔吐、難治性下痢、活動性の消化管出血、炎症性腸疾患、短腸症候群、消化管瘻、急性膵炎を有する患者または中心静脈を開始してから30日以内の患者に限定となり、これらの患者以外で30日を超えた中心静脈栄養の患者は区分2に引き下げた。ただし、中心静脈栄養は終了後7日間に限り、終了前の医療区分を算定できる。
また、「静脈経腸栄養ガイドライン」等を踏まえて栄養管理に係る説明を実施した上で、新たに経腸栄養を開始した場合に「経腸栄養管理加算」300点が新設された。入院中1回に限り、経腸栄養を開始した日から7日を限度として所定点数に加算する。施設基準は栄養サポートチーム加算を届け出ていること、経腸栄養管理を担当する専任の管理栄養士を1人以上配置すること、内視鏡下嚥下機能検査または嚥下造影を実施する体制を有すること。なお、他の医療機関との協力による確保でも差し支えない。
療養病棟入院料の医療区分・ADL区分ともに1である入院料27については、一日につき2単位を超える疾患別リハビリテーション料は包括範囲に含まれた。
療養病棟入院基本料の注11に規定する経過措置は2024年3月31日で廃止されたが、3月末に注11既届病院は「医療区分2・3の患者割合50%以上とみなす緩和措置」については、2024年9月30日までの経過措置が設けられた。看護補助体制充実加算が3区分となった(図2)。
【障害者施設等入院基本料の見直し】
障害者施設等入院基本料、特殊疾患病棟入院料および特殊疾患入院医療管理料において、透析を行う慢性腎臓病患者について、療養病棟入院基本料に準じた評価となった。
人工腎臓、持続緩徐式血液濾過、血漿交換療法または腹膜灌流を行っている慢性腎臓病の患者であって、医療区分2に相当する患者については、下記の病棟区分に従った点数(7対1および10対1入院基本料1,581点、13対1入院基本料1,420点、15対1入院基本料1,315点)で算定する。
重度肢体不自由児(者)等の患者割合の基準を明確にして、従前の「おおむね7割以上」を「7割以上」とし、歴月で3か月を超えない期間の1割以内の一時的な変動に限り施設基準の変更届が不要とした。また、看護補助体制充実加算が3区分となった。
【特殊疾患病棟入院料の見直し】
人工腎臓、持続緩徐式血液濾過、血漿交換療法または腹膜灌流を行っている慢性腎臓病の患者であって、医療区分2に相当する患者については、特殊疾患病棟入院料1が2,010点、同2が1,615点で算定する。
重度の肢体不自由児(者)等の患者割合について、従前の「おおむね8割以上」を「8割以上」とし、歴月で6か月を超えない期間の1割以内の一時的な変動に限り施設基準の変更届が不要とした。
【緩和ケア病棟入院料の見直し】
緩和ケア病棟緊急入院初期加算における事前の文書による情報提供について、ICTを活用して患者の診療情報等が確認できる体制が構築されている場合は、事前の文書による情報提供がなくても要件を満たすとされた。
全日病ニュース2024年9月1日号 HTML版
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[1] 第5章 医療提供体制:「病院のあり方に関する報告書」(2015-2016 ...
https://www.ajha.or.jp/voice/arikata/2016/05.html
一方、長期的入院を余儀なくされる患者には、慢性期(現行の医療療養病床)における入院が必要となる。 入院医療の機能分化は、病院単位、病棟単位、病床単位のそれぞれの ...
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[2] 慢性期の医療について
https://www.ajha.or.jp/guide/pdf/070911.pdf
回復期リハ. ビリテーシ. ョン病院. 療養型病院. 亜急性期病床. 【医療療養】. 【介護療養】. 亜急性期医療. 慢性期医療. 慢性期医療を提供する病院は、病気の治療をし、 ...
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[3] 地域医療構想:みんなの医療ガイド | 公益社団法人全日本病院協会
https://www.ajha.or.jp/guide/28.html
これは、回復期機能が不足しているのではなく、高度急性期、急性期、慢性期のいずれかの病棟にも回復期に該当する患者が多数入院していることから生ずる違いです。これを ...
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