全日病ニュース
病院の控除対象外消費税問題の抜本的解決を求める
病院の控除対象外消費税問題の抜本的解決を求める
【四病協】2025年度税制改正に向けて16項目の要望を提出
四病院団体協議会は8月23日、厚生労働省に2025年度税制改正要望の重点事項を提出した。控除対象外消費税問題の抜本的解決など16項目の要望を盛り込んだ。要望書では、超高齢社会に突入し医療ニーズに変化が生じていることに対応できる医療体制整備が喫緊の課題であるとともに、医療を取り巻く昨今の状況が、利益率の低い医療機関経営をさらに厳しくしていることを強調。これらに対応する上で、「医業税制が必ずしも医療の実情を踏まえたものになっていない」と訴えた。
具体的には、◇将来の新興感染症にも対応できる医療提供体制◇業務の効率化◇医療DXのための設備投資◇人件費増、光熱費などコスト増などへの対応の必要性をあげた。
特に、物価高騰は建物や医療機器などの設備投資のコストを引き上げ、それに伴い控除対象外消費税の負担も増大することに危機感を表明し、抜本的な解決を求めた。16項目の要望のうち、1番目に掲げたのが「社会保険診療報酬等の非課税に伴う控除対象外消費税問題の抜本的な解決」としている。
要望の内容は、「診療報酬と介護報酬の非課税を見直し、診療所においては非課税制度のまま診療報酬上の補てんを継続しつつ、病院においては軽減税率による課税取引に改める」とした。
診療報酬が非課税であるため、医療機関は仕入税額控除を通じた仕入税額の還付を受けることができず、価格転嫁を行うこともできない。このため診療報酬の上乗せによる補てんが行われているが、医療機関種別ごとに補てんの水準にばらつきがあり、高額な設備投資を行った場合などに補てん不足が生じてしまう。
与党の2019年度税制改正大綱では、補てん方式の精緻化によりこの問題を解決しようという方針が示されているが、精緻化には限界があり、「不公平性」は解決しないというのが四病協の主張。将来的に消費税率が10%を超えることが想定される中で、病院の消費税に対しては軽減税率による課税化が必要と考えている。
認定医療法人の優遇税制延長求める
そのほかの要望項目は以下のとおりとなっている。
◇医療機関に対する事業税の特例措置の存続◇賃上げ促進税制における税額控除上限の緩和要望◇社会医療法人・特定医療法人・認定医療法人の収入要件における補助金等の収入の取扱いの見直し◇認定医療法人制度の存続と認定期限の緩和等◇持分のある医療法人に係る相続税・贈与税の納税猶予・免除制度の創設◇社団医療法人の出資評価の見直し◇社会医療法人に対する寄附金税制の整備および非課税範囲の拡大等◇高額医療用機器の特別償却制度の適用期限延長等◇中小企業関係設備投資減税の医療界への適用拡大◇医療機関同士での再編による資産の取得を行った場合における登録免許税及び固定資産税の軽減措置◇病院用建物等の耐用年数の短縮◇医療機関における医療DXへの対応及び省エネルギー対策への設備投資等に対する税制措置◇医療法人の法人税率軽減と特定医療法人の法人税非課税◇医療従事者確保対策用資産および公益社団法人等に対する固定資産税等の減免措置◇介護医療院への転換時の改修等に関する税制上の支援措置の創設─。
このうち、「賃上げ促進税制における税額控除上限の緩和要望」では、税額控除額が法人税額または所得税額の20%を上限としていることについて、上限の緩和を求めた。
政府は医療機関に対し2024・2025年度の2年間で7%(2024年度+2.5%、2025年度+4.5%(2023年度比))の賃上げを求めている。しかし、2024年度診療報酬改定によるベースアップ評価料等と現行の賃上げ税制、医療機関の自主財源では賃上げ目標達成は難しい。特に人件費比率が高く利益率が低い医療機関の場合、税額控除の恩恵を十分に受けることができないため、上限の緩和が必要とした。
2014年度税制改正で創設された認定医療法人に対する相続税・贈与税の納税猶予等の特例措置については、2026年12月末が期限となっているが、2027年1月以降も延長することを要望した。あわせて相続発生後に移行申請を行う際の申請期限の緩和も要望した。また、認定医療法人が移行期限内に持分なし医療法人に移行できずに、認定取消となった場合は、再度認定を受けることができる見直しを求めた。
一方、持分のある医療法人に対しては、中小企業の事業承継における相続税・贈与税の納税猶予・免除制度と同様の制度の創設も要望項目に入れた。中小企業の事業承継に関しては、「非上場株式等に係る納税猶予・免除制度」が設けられている。
医療法人は2006年医療法改正で持分なしが原則となり、社会医療法人などへの移行が進んでいる。しかし、現状でも7割以上が持分のある医療法人である。持分のある医療法人は決して暫定的な存在ではなく、事業承継せずに消滅してしまうべき存在でもない。むしろ、医療の公共性を考えれば、消滅した場合の損失は営利企業よりも大きいと言える。
これらを踏まえ、持分のある医療法人に対して、中小営利企業と同様の相続税・贈与税の納税猶予・免除制度を創設することを主張した。
「高額医療用機器の特別償却制度の適用期限延長等」では、2024年度が期限の特別償却制度の延長と対象の大幅拡充を要望。現行では1台500万円以上で①高度医療②医薬品医療機器等法の指定後2年以内のいずれかに該当すると12%の特別償却が認められる。
「医療機関における医療DXへの対応及び省エネルギー対策への設備投資等に対する税制措置」では、建物附属設備、構築物、器具備品、ソフトウェアといった設備投資について、即時償却または税額控除を選択適用できる措置、一定期間の固定資産税(償却資産税)の非課税措置の創設を要望した。
政府は、医療DXの実現に向けて、「全国医療情報プラットフォーム」の創設、電子カルテの標準化、診療報酬改定DXなどを推進している。医療機関がこれらに対応すると必ず負担が生じる。補助金も交付されているが、設備投資を補完する施策として、税制措置を要望した。省エネルギー効果の高い設備投資を支援する税制措置の要望も行っている。
また、要望項目とはしていないが、来年度以降も継続して検討していく課題として、以下をあげた。
◇新興感染症関係(新興感染症の影響による税金等の納付猶予期間の延長、欠損金の取扱いの拡充、感染対策のための設備投資、消耗品等の支出への税制上の支援措置◇特定医療法人関係(特定医療法人の存続と要件の緩和)◇訪日外国人向け医療提供体制関係(社会医療法人、特定医療法人、認定医療法人の診療単価の制限緩和)。
全日病ニュース2024年9月1日号 HTML版
-
[1] 控除対象外消費税問題に対する 調査へのご協力のお願い
https://www.ajha.or.jp/topics/jimukyoku/pdf/180711_7.pdf
2018/07/11 ... 四病院団体協議会. 一般社団法人 日本病院会. 会 長. 相 澤 孝 夫. 公益社団法人 全日本病院協会. 会 長. 猪 口 雄 二. 一般社団法人 日本医療法人 ...
-
[2] 控除対象外消費税問題の抜本解決を改めて求める|第931回/2018 ...
https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20181215/news09.html
2018/12/15 ... 控除対象外消費税問題の抜本解決を改めて求める|第931回/2018年12月15日号 HTML版。21世紀の医療を考える「全日病ニュース」は、全日本病院協会が ...
-
[3] 控除対象外消費税問題解消のための新たな税制上の仕組みについて ...
https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20181001/news09.html
2018/10/01 ... ... 病院団体協議会. 1.新たな仕組みの提言. 医療機関等(病院、一般診療所、歯科診療所、薬局。以下同じ)の控除対象外消費税問題の解消に向け、日本医師 ...
以下のキーワードをクリックすることで、全日病サイト内から関連する記事を検索することができます。