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ホーム全日病ニュース(2024年)第1064回/2024年10月1日号2024年6月の経常利益は100床当たりマイナス1,732万円

2024年6月の経常利益は100床当たりマイナス1,732万円

2024年6月の経常利益は100床当たりマイナス1,732万円

【3病院団体病院経営定期調査】病院の経営状況が急速に悪化。特例的な救済措置・財政支援を要望

 全日病、日本病院会、日本医療法人協会は9月18日、2024年度の病院経営定期調査の中間報告(緊急速報)を公表した。2024年6月の状況を含め、病院の医業損益の減収・減益が著しく、新型コロナの補助金も解消となったことで、経常利益もマイナスになるなど、病院の経営状況が急速に悪化していることが明らかとなった。病院の経営不振は、地域医療に少なからず影響を与えるおそれが高いことから、特例的な救済措置・財政支援を政府に要望している。
 病院経営の状況は、かねてから低調であったが、新型コロナの感染拡大を通じて悪化した。政府が実施した新型コロナ対応の補助金や診療報酬特例により黒字を確保し、病院経営は何とか維持されたが、新型コロナの感染症法上の取扱いが2類相当から5類に変更されたことに伴い、補助金や診療報酬特例は解消に向かった。
 ポストコロナの状況下でも、病床利用率の低下は止まらず、物価・賃金の高騰により医療提供のコストは上昇し続けている。今回の調査結果で、病院経営の厳しい状況は明確に示されている。
 調査は2024年7月22日~8月30日にかけて実施。3団体所属の会員病院に調査票を送付し、541病院から回答を得た(回答率12.2%)。そのうち、有効回答数は480病院となっている。

2023年度の病院経営状況
 2023年度の全病院の100床当たりの医業損益をみると、医業利益はマイナス2億29万円、経常利益はマイナス3,412万円。医業利益率はマイナス7.1%の赤字、経常利益率はマイナス1.2%となっている。
 医業利益のマイナスは2022年度がマイナス2億978万円、医業利益率はマイナス7.7%で、どちらも2022年度のほうが赤字幅が大きい。しかし2023年度は、新型コロナ関連の緊急包括支援事業の補助金が大幅減となった。
 2023年度の補助金を除く損益差額はマイナス1億6,106万円、新型コロナ関連の補助金を除く経常利益はマイナス8,391万円である。この結果、全病院の経常利益率は、2022年度のプラス4.9%の黒字から、2023年度はマイナス1.2%の赤字に転落した。

2024年6月の病院経営状況
 2024年6月の医業利益はマイナス2,181万円、経常利益はマイナス1,732万円となっており、2023年6月と比較すると、医業利益はマイナスが241万円拡大、経常利益はマイナスが353万円拡大している。医業外収益もマイナスが158万円の拡大である。
 2024年6月の医業利益のマイナスの拡大は、医業収益が0.1%の減収になったこと、医業費用が0.9%の増加になったことによる。2024年度診療報酬改定が本体プラス0.88%、薬価がマイナス0.97%、医療材料がマイナス0.02%であったことが医業収益に影響している。医業費用の増加は昨今の物価・賃金の高騰の影響が考えられる。
 経常利益のマイナスの拡大は、医業外収益が20.2%の減少になったことが大きい。2024年度に新型コロナ関連緊急包括支援事業補助金、水道光熱費補助金は、減額ないしほぼゼロとなった。この結果、2024年6月の医業利益率はマイナス10.0%の赤字、経常利益率はマイナス7.9%の赤字となった。

2018~2023年度の6年度の状況
 100床当たりの医業利益・経常利益の比較を2018年度から2023年度までの6年度の期間でみると、医業利益はすべての年度でマイナスであり、新型コロナの感染拡大が生じた2020年度の赤字が最も大きく、2023年度まで大きな赤字が続いている。
 一方、新型コロナ対応の補助金のおかげで、経常利益は2020~2022年度まで黒字になった。しかし、2023年度は新型コロナ対応の補助金が減少し、経常利益も赤字に転落した。なお、2018年度と2019年度の経常利益はわずかにマイナスであった。
 新型コロナ対応の補助金を除いた経常利益をみると、2020~2023年度はすべて赤字である。赤字幅は2020年度、2022年度、2023年度で同程度となっている。新型コロナ対応の補助金があり、2020~2022年度で黒字を確保した経常利益が、2023年度になって、赤字に転落というのが病院経営の実態だ。

WAMの病院経営動向調査結果
 福祉医療機構(WAM)の病院経営動向調査の結果(2024年6月調査)をみても、同様の傾向が確認できる。
 病院の医業利益率は、急性期(一般病院)で、2020年度(マイナス1.1%)、2022年度(マイナス1.1%)、2023年度(マイナス2.0%)となっている。精神科(精神科病院)の場合は、2020年度(0.4%)、2021年度(0.6%)、2022年度(0.7%)とプラスを保っていたが、2023年度にマイナス0.7%に転落した。慢性期(療養型病院)の場合は、黒字を維持している。2020年度は2.1%、2021年度は3.5%、2022年度は2.0%、2023年度は2.0%である。
 病院の経常利益率をみると、3団体の病院経営定期調査と同様に、2022年度から2023年度に急激な経常利益率の悪化が生じたことが顕著である。急性期(一般病院)は3.7%からマイナス0.1%になった。精神科(精神科病院)は4.3%から0.7%になった。慢性期(療養型病院)は4.8%から3.3%になった。2020年以前と比べても、2023年度の経常利益率が低い水準であることがはっきりとわかる調査結果となっている。

 

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