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ホーム全日病ニュース(2024年)第1064回/2024年10月1日号生活習慣病を中心とした管理料、処方箋料等への厳しい見直し~外来医療について~

生活習慣病を中心とした管理料、処方箋料等への厳しい見直し~外来医療について~

生活習慣病を中心とした管理料、処方箋料等への厳しい見直し
~外来医療について~

【診療報酬改定シリーズ●2024年度改定の解説⑤(最終回)】
全日本病院協会 医療保険・診療報酬委員会 委員長 津留英智

■はじめに
 医療保険・診療報酬委員会による診療報酬改定シリーズ連載の最終回は、主に外来医療について解説する。昨年末、診療報酬本体改定率は全体プラス0.88%と発表されたが、厚生労働・財務の両大臣折衝事項として「生活習慣病を中心とした管理料、処方箋料等の再編等の効率化・適正化」が唯一マイナス0.25%と記された。外来医療における生活習慣にかかる疾病管理の評価については厳しく見直しされ、【特定疾患療養管理料】の対象から、「糖尿病」「脂質異常症」「高血圧」が除外された。これまで外来診療では生活習慣病の患者に対して【特定疾患療養管理料】【外来管理加算】【特定疾患処方管理加算】を併算定し、これが収益の大きな柱であったが、今回外来診療において厳しい見直しが断行された。

■生活習慣病にかかる疾患管理の見直し
1.【生活習慣病管理料】の評価及び要 件の見直し

 従前の【生活習慣病管理料】については、やや緩和する形での【生活習慣病管理料(Ⅰ)】として40点増点した。これまで問題となっていた療養計画書も簡素化されるとともに、電子カルテ情報共有サービスを活用する場合、血液検査項目についての記載を不要とするなど、医療DXを踏まえた見直しが行われている。また「歯科医師、薬剤師、看護師、管理栄養士等の多職種との連携による生活習慣病管理」を努力義務とした。診療ガイドライン等を参考として疾病管理を行うことを要件とした。生活習慣病の診療の実態を踏まえ、少なくとも1月に1回以上の総合的な治療管理を行う要件は廃止となった。

2.生活習慣病管理料(Ⅱ)の新設
 検査等を包括しない【生活習慣病管理料(Ⅱ)】333点(月1回に限る)が新設となった。《算定要件》としては以下の通り。
 (1)生活習慣病管理に関する総合的な治療管理ができる体制を有していること。なお、治療計画に基づく総合的な治療管理は、歯科医師、看護師、薬剤師、管理栄養士等の多職種と連携して実施することが望ましい。
 (2)患者の状態に応じ、28日以上の長期の投薬を行うこと又はリフィル処方箋を交付することについて、当該対応が可能であることを当該保険医療機関の見やすい場所に掲示すること。
 (3)生活習慣病管理料(Ⅱ)を算定すべき医学管理を情報通信機器を用いて行う場合に係る厚生労働大臣が定める施設基準情報通信機器を用いた診療の届出を行っていること。

3.【特定疾患療養管理料】の見直し
 【特定疾患療養管理料】の対象疾患から、生活習慣病である「糖尿病」「脂質異常症」「高血圧」を除外することとなった。一方「アナフィラキシーショック」「ギランバレー症候群」が新たに対象疾患に加わった。
 中医協の議論では、1号側から、「これまで【生活習慣病管理料】の要件が厳しいので、【特定疾患療養管理料】を算定しているのではないか。【特定疾患療養管理料】と【外来管理加算】と併算定が行われているが、どの点数が何を評価するのか曖昧で分かり難い」と指摘されていた。

4.【特定疾患処方管理加算】の見直し
 リフィル処方及び長期処方の活用並びに医療DXの活用による効率的な医薬品情報の管理を適切に推進する観点から、処方料及び処方箋料の特定疾患処方管理加算について、28日未満の処方を行った際の【特定疾患処方管理加算1】を廃止し、【特定疾患処方管理加算2】の評価を見直した。
 また、特定疾患処方管理加算について、リフィル処方箋を発行した場合も算定を可能とした。

■かかりつけ医機能に係る見直し
 かかりつけ医機能の評価である【地域包括診療料】等について、かかりつけ医と介護支援専門員との連携の強化、かかりつけ医の認知症対応力向上、リフィル処方及び長期処方の活用、適切な意思決定支援及び医療DXを推進する観点から、以下の通り要件及び評価を見直すとした。
【地域包括診療料】
《算定要件》として(地域包括診療加算についても同様)

  • ◇患者又はその家族からの求めに応じ、疾患名、治療計画等についての文書を交付し、適切な説明を行うことが望ましい。その際、文書の交付については電子カルテ情報共有システムにおける患者サマリーに入力し、診療録にその記録及び患者の同意を得た旨を残している場合は、文書を交付しているものとみなすものとする。
  • ◇当該保険医療機関に通院する患者について、介護支援専門員及び相談支援専門員からの相談に適切に対応するとともに、当該対応が可能であることを当該保険医療機関の見やすい場所に掲示すること。
  • ◇患者の状態に応じ、28日以上の長期の投薬を行うこと又はリフィル処方箋を交付することについて、当該対応が可能であることを当該保険医療機関の見やすい場所に掲示するとともに、患者から求められた場合に適切に対応すること。

《施設基準》として(地域包括診療加算についても同様)

  • ◇当該保険医療機関に、慢性疾患の指導に係る適切な研修を修了した医師(以下この区分において「担当医」という)を配置していること。また、担当医は認知症に係る適切な研修を修了していることが望ましい。
  • ◇次に掲げる事項を院内掲示していること。ア 健康相談及び予防接種に係る相談を実施していること。イ 当該保険医療機関に通院する患者について、介護支援専門員及び相談支援専門員からの相談に適切に対応することが可能であること。ウ 患者の状態に応じ、28日以上の長期の投薬を行うこと又はリフィル処方箋を交付することについて、当該対応が可能であること。
  • ◇介護保険制度の利用等に関する相談を実施している旨を院内掲示し、かつ、要介護認定に係る主治医意見書を作成しているとともに、以下のいずれか一つを満たしていること。ア~ケ(略)コ 担当医が、「認知症初期集中支援チーム」等、市区町村が実施する認知症施策に協力している実績があること。
  • ◇以下のア~ウのいずれかを満たすこと。ア 担当医が、サービス担当者会議に参加した実績があること。イ 担当医が、地域ケア会議に出席した実績があること。ウ 当該保険医療機関において、介護支援専門員と対面あるいはICT等を用いた相談の機会を設けていること。なお、対面で相談できる体制を構築していることが望ましい。
  • ◇当該保険医療機関において、厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容を踏まえ、適切な意思決定支援を義務化(要件化)する―とした。

■その他
1.外来腫瘍化学療法の普及・推進

①外来腫瘍化学療法診療料の見直し
 悪性腫瘍の患者に対する外来における安心・安全な化学療法の実施を推進する観点から、外来腫瘍化学療法診療料について、要件及び評価を見直すとともに、診察前に薬剤師が服薬状況等の確認・評価を行い、医師に情報提供、処方提案等を行った場合について新たな評価を行うとした。
②外来腫瘍化学療法診療料3の新設
 やむを得ない理由等により専任の医師、看護師又は薬剤師を院内に常時1人以上配置することが困難であって、電話等による緊急の相談等に24時間対応できる連絡体制を整備している医療機関の評価を新設した。
(新)【外来腫瘍化学療法診療料3】
イ.抗悪性腫瘍剤を投与した場合
(1)初回から3回目まで540点
(2)4回目以降280点
ロ.イ以外の必要な治療管理を行った場合180点
③外来腫瘍化学療法診療料1の施設基準の見直し
 外来腫瘍化学療法診療料1について、実施医療機関における更なる体制整備等の観点から、要件及び評価を見直した。
④がん薬物療法体制充実加算の新設
 悪性腫瘍の患者に対する外来における安心・安全な化学療法の実施を推進する観点から、医師が患者に対して診察を行う前に、薬剤師が服薬状況や副作用の発現状況等について収集・評価を行い、医師に情報提供、処方に関する提案等を行った場合の評価を新たに設けた。
(新)【がん薬物療法体制充実加算】
 100点(月1回に限り)

2.慢性腎臓病の透析予防指導管理の算定要件及び施設基準
 慢性腎臓病の患者に対して、透析予防診療チームを設置し、日本腎臓学会の「エビデンスに基づくCKD 診療ガイドライン」等に基づき、患者の病期分類、食塩制限及び蛋白制限等の食事指導、運動指導、その他生活習慣に関する指導等を必要に応じて個別に実施した場合の評価を新設した。
(新)【慢性腎臓病透析予防指導管理料】
管理料1 初回の指導管理を行った日から起算して1年以内の期間に行った場合300点
管理料2 初回の指導管理を行った日から起算して1年を超えた期間に行った場合250点
※情報通信機器を用いて行った場合は、それぞれ261点、218点

3.在宅療養指導料の見直し
 慢性心不全患者に対する退院直後の支援を強化する観点から【在宅療養指導料】の対象に退院後1か月以内の慢性心不全患者を追加し、ガイドラインに基づく支援を評価するとした。

■最後に
 今回の外来診療の見直しについては、2023年11月20日財政制度等審議会にて「令和6年度予算の編成等に関する建議」が示され、その中で「診療所・病院・調剤ごとに異なる経営状況や課題があり、令和6年度診療報酬改定では十分に踏まえたメリハリをつけた改定」を主張し、「診療所の経常利益率8.8%を、全産業やサービス産業平均の経常利益率の3.1%から3.4%と同程度に合わせるには、報酬単価を5.5%程度引き下げるべき」とした。
 このように診療所と病院を分断するような内容が見られ、外来診療の厳格化への伏線とも見て取れる。次回改定でも(診療所=外来医療)をターゲットとし、さらに厳しい改定とするのか、十分に注意が必要だ。

 

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