医療部会が再開。第5次医療法改正を視野
医療部会 来年12月にまとめ。06年通常国会で医療保険と一体改正 |
社会保障審議会医療部会が9月14日、2年半ぶりに再開され、当協会佐々会長を含む25名の委員が臨んだ。2006年の医療保険制度改革と一体に医療提供体制のさらなる改革を進める目的で、第5次医療法改正を視野に、規制緩和の反映、機能分化の推進、患者選択に資する情報提供の拡大、医療の安全と質の向上、医師不足対策など広範囲の議論を進める。
「医療提供体制の確保に関する重要事項の調査審議」を行なう医療部会は、02年3月に「医療提供体制に関する意見」をとりまとめ、主に医療広告の大幅な規制緩和を実現した後、休会が続いた。その間、医業経営の近代化・効率化、医療分野における規制改革、看護業務の拡大、IT化、医療安全体制と事故情報収集制度、患者相談体制の整備、地域医療支援病院の要件改正、医師配置特例と医師数算定の端数見直しなど各種の個別改正が実現、新医師臨床研修制度も始まった。
しかし、第4次医療法改正による病床区分後の提供体制俯瞰は、03年4月の「医療提供体制の改革のビジョン」と“総論”の段階にとどまっている。
12月をめどに、病床分化に対応した必要病床数の算定ほか医療計画見直しの提案がまとめられるが、それ以外にも、医師偏在とかかわる地域医療の問題、国立病院機構後の公私格差、救急体制、一般病床における機能分担など課題は山積している。委員の多くが入れ代わって再開された同部会の初会合では、外国人看護師の就労問題を提起した委員もいた。
月1回のペースで医療保険制度改革と連動した効率的な医療提供体制の構築とともに「安心安全な医療提供や地域格差の解消」(岩尾医政局長)を軸に議論を進める。厚労省は、目先は論点掘り起こしを試みるが、1月には論点を明確化、05年末に意見の取りまとめを図るとしている。06年の通常国会で法改正を見込んでおり、来年秋口には改正内容がまとまると思われる。
株式会社参入や医療法人経営への出資参入など、規制緩和の流れによっては、意見集約が難しい局面も想定される。
なお、同部会に厚労省は、05年度に検討会を設置して医師需給見通しの見直しを行なう予定を明らかにした。

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補助金等の廃止・委譲
「地方格差は大きい。国として責任を果たせるか」
地方6団体の提案は医療提供体制整備へ懸念。医政局課長が意見表明 |
9月14日の医療部会は検討テーマの1つとして、05年度〜06年度で総額3.2兆円の国庫補助負担金等を廃止し地方に税源委譲するという地方6団体の提案を取り上げた。事務局(厚生労働省医政局総務課)は、厚労省関係予算(社会保障関係費)として2ヵ年で9,444億円が該当することを明らかにし、その内訳を詳しく示した。(2面に内訳を掲載)
原総務課長は「国立病院部を除くと、臨床研修補助金以外は、ほとんどの部局の国庫補助事業等が該当する」と提案の深刻さを説明した。とくに、医療提供体制の整備、看護職員確保関係の補助事業のほぼすべてが廃止対象となっており、医療機関に与える影響は際立って大きい。
医療部会委員をつとめる全国町村会山本文男会長は「提案は、政府からの要請でまとめたものだ。地方の側から廃止を求めたわけではない。我々はこうした事業の解消を求めているものではない。国庫補助としては廃止するが、その分を地方に移して別の形の事業に委ねるということだ。地方ではできないという心配があるようだが、必要な事業であれば広域行政を組むなど実施は可能だ」と釈明した。
その一方で、「財源難の時代である。地方に裁量を任せるとなると、今まで以上に格差が拡大するだろう。(要求した税源の)7〜8割は地方に移るだろうが、それらが(当該補助事業として)地方で持続するかどうかは心もとない」と、本音を吐露した。
さらに、「(三位一体改革によって)国の予算は削減される。しかし、国として(やるべき事業を)放棄したと言われないようにしてほしい」と厚労省に注文をつけ、「今からでも国ですべきことと地方ですべきことを明確にして国民の議論に委ねるべきである」と提起した。
これに対して原総務課長は「医療提供体制に関して地方格差は大きい。こうした形で国として責任を果たせるかどうか疑問である」と、担当部局の立場から異例の意見表明を行なった。
政府の命を受けて厚労省は11月半ばに廃止・税源委譲を行なう補助金等の案をまとめる。
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老健事業補助金等は「存続が望ましい」
中村老健局長、地方6団体の提案を批判 |
中村秀一老健局長は、9月13日に開かれた「老人保健事業の見直しに関する検討会」で、国庫補助負担金等を廃止し地方に税源委譲するという地方6団体の提案を取り上げ、「少子高齢化に向かう中、政策の優先度を考えると、もう少し別な考え方があってよい」と批判した。
中村局長は「9,000億円の廃止・税源委譲の対象には老健事業の補助金が入っている」ことから、「厚労省としてではなく、担当局長としての見解である」と断った上で、「(高齢化のピークを迎える)2015年問題を解決する立場からみると、政策の優先順位という点で、もう少し別の考え方もあろうかと考える。三位一体というが、何のための改革なのか、政策の優先度をどう考えているのかよく分からない点がある。(補助金等の)内容を見直しつつも、その存続を図ることが望ましい」と、率直な疑問を投げかけた。

▲老人保健事業の見直しに関する検討会
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「国庫補助負担金等の廃止・委譲に強く反対」
四病協が大臣、与党幹部・議員、地方6団体に要望書 |
四病院団体協議会は9月15日、地方6団体による「国庫補助負担金等を廃止し地方に税源委譲する」提案に反対する意見を要望書にまとめ、谷垣財務大臣、麻生総務大臣、安倍幹事長をはじめとする自由民主党幹部と関係議員、北側政務調査会長ほか公明党関係幹部、さらに全国知事会ほか地方5団体各会長宛提出した。(2面に要望書)
要望書(反対意見書)は、社会保障施策は国のセイフティネットとして重要との認識に立って、国による補助金が廃止され、移譲された財源が地方公共団体の裁量に委ねられた場合に医療提供体制整備の面で格差が生じることへの強い懸念を表明。「全国民に均等、良質、安全な医療を提供する体制に影響を及ぼすことは必定」として、「画一的な国庫補助負担金の改革」に強く反対する病院団体の立場を打ち出した。
9月10日の8人委員会(委員長・全日病西澤副会長)で意見表明と要望書の作成を決定。与党内協議への反映を急ぐため、次回総合部会を待たずに、個別に四会長の承諾を得て提出したもの。
提出先は2所管大臣と与党幹部・関係議員82名そして地方6団体各会長の計90名に及んだ。また、厚生労働省の2つの記者クラブにも配布した。

▲8人委員会は要望書の作成を決めた
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清話抄 |
親友のサカちゃんが2004年7月4日午後4時45分、北海道旅行中に交通事故で亡くなった。享年38歳であった。
サカちゃんはK大理工学部卒業後、大手都市銀行に就職してからメキメキと頭角を現した。NY、ホンコン、ロンドンで最先端のデリバティブ業務に携わり、その後、外資系投資銀行にヘッドハンティングされた。難解な金融発生商品の開発と販売に携わり、世界中を飛び回っていた。私が米国に留学をしていた時も、何度かボストンまで足を運んでくれた。
出会いは20年ほど前の六本木のディスコ。多忙な理工学部の成績優秀な特待生でありながら、ディスコ「マハラジャ」の「黒服」店員であり、モデルのバイトもしていた。長身でハンサム、話も面白く、女性にモテないはずがなかった。
その反面、たいへんな勉強家で努力家、好奇心に溢れていた。学生時代は、週のうちの大半は私の家で議論を交わした。ナンパや恋の話はいつも前奏曲で、政治、経済、社会問題、人生観と幅広く意見をぶつけ合った。彼は元々医学部志望だったと私に語ったことがある。父を肝臓癌で失った経験があり、とりわけ医療問題にはお互いに熱が入った。
彼の口癖は「僕たちは命を削って生きている」という言葉だった。いつも、真剣で、精一杯の努力を惜しまなかった彼は、世の中の不条理なことにはいつも挑戦的であり、戦っていた。公認会計士協会を批判する論文を業界誌に書き、裁判で戦っていた。
何が彼をそこまでかき立てているドライビングフォースだったのか?死後、彼の部屋に「死への恐怖に立ち向かう16章」という本が枕元に置いてあった。彼は自分の死期が近いことを悟っていたのだろうか?
仮に、自分の余命があと1年だとしたら? これからはそういう気持ちで真摯に人生に取り組まなければならないと思うようになった。(浩)
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