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 第602号 (2004年9月15日号)
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主張
療養病床の使命を果たす上で評価・支援を期待する
 アテネオリンピックで日本の選手は多くのメダルを取った。予想以上といわれているが、よく話を聞いてみると、地道に選手層の拡大、スポーツ医学や科学に基づいた練習、経済的支援が行われた結果と言えそうである。
 慢性期の医療も1983年に「老人の専門医療を考える会」が発足以来、医療・看護・介護の質の向上のために地道に訴え続けてきた成果がやっと陽の目を見てきた。
 しかし、12年の診療報酬改定で療養病床の看護師配置は6:1から5:1へと増加したが、介護が3:1から4:1と逆に減ったので看護・介護合計では患者100人当たり51人から45人に減っている。
 介護報酬改定でも介護療養型医療施設の3:1介護が廃止された。これは療養病床の医療やサービスの質の向上を目指す努力を踏みにじるものとの感が強いが、めげることなく更により良い高齢者医療に取り組んでゆくことが療養病床使命であると考える。
 患者は、医療にしろ介護にしろ良くなろうと期待をして病院に来ている。この期待を裏切ることなく、単に病気を治す事だけでなく、生活の質が良くなるような取り組みをしなければならない。急性期病院ではできない事だと思っている。
 地域での療養病床の役割を確立しなければならない。
 しかし、老人の専門医療を考える会で作成した老人病院機能評価マニュアルに拠る職員の意識調査では、「自分の勤務している病院に家族や知人を入院させたいですか」の問いに「ぜひ入院させたい」は28%にすぎない。いろいろ理由はあると思うが、今後は、この比率を高めてゆく努力が必要である。さらに、自分が入院したい病院作りが望まれる。
 それは、病院職員が一体となって初心に帰って必要な医療に取り組むこと、更に、必要なリハビリテーションを効率よく行うことである。その基礎として看護・介護が重要であることはもちろんである。
 そのために費用がかかることは当然だと思う。官邸、財務省、厚労省そして経営者もこのことを理解すべきである。
成果を挙げるためには、経済的裏づけが必要なことはアテネオリンピックが示しているとおりである。(K)

小泉首相が混合診療解禁を指示
経済財政諮問会議 規制改革年末答申への書き込みで「決着」か?
 9月10日の経済財政諮問会議で小泉首相は、混合診療について「年内に解禁する方向で結論を示すように努力をして欲しい」と発言、規制改革推進の現段階を報告した金子規制改革担当大臣と宮内規制改革・民間開放推進会議議長に、解禁の具体的方法と手続き面の検討に入るよう指示した。
 これに対して坂口厚生労働大臣は、9月14日の記者会見で「混合診療を全ての分野で認めることは反対である。ルールを作って一定の範囲内で認めていくことが望ましい」と反発、小泉首相の“指示”に難色を示した。ただし、9月下旬の内閣改造で坂口大臣は退任が噂されている。
 小泉首相の発言は、規制改革・民間開放推進会議の中間まとめと年末答申に向けた取り組みを報告した金子大臣と宮内議長に、総論的な要求から具体的な施策提案へ検討を深化させるよう求めたもので、「年内」とは、規制改革の年末答申を意味するものと思われる。


 小泉政権の下で混合診療の解禁は必至の情勢を迎えている。竹中金融・経済財政担当相は9月10日の記者会見で、小泉首相の意図を「年内に混合診療解禁の方向性をしっかりと示してもらうように議論をお願いした」と説明した。
 つまり、賛成か反対かの議論を打ち止めにして実効性ある解禁の方法を具体的に示すことが、今回の指示であるとみられる。
 混合診療の禁止について、健康保険法で直接に規定した条文はない。したがって、解釈によっては、3月に閣議決定される「規制改革推進3か年計画(改定)」にもとづいて、厚生労働省が省令などの改正を進めることで解禁は可能となる。あるいは、法的に混合診療の実施を妨げているとみなされれば、健康保険法第44条や保険療養担当規則第5条などを改正し、特定療養費制度を廃止する手続きがとられよう。
 諮問会議の席上、竹中大臣は、金子大臣と宮内議長に対して「12月の答申に向けてしっかりと議論をし、11月頃に再度諮問会議で、その中間報告をする」よう求めた。したがって、来春の通常国会における法改正は考えにくい。
 ただちの全面解禁は考えにくく、構造改革特区を活用した限定導入あるいは高度先進医療と同種の認可型導入などを踏まえた段階的な導入が見込まれる。だが、そうした手順をどう描くか、また、それによって生じる医療保険制度への影響をどう予測するのか。混合診療解禁の議論は、導入方法をめぐる具体的な議論の局面に入った。

坂口大臣「全面解禁すると皆保険制度が崩壊する」
  坂口厚生労働大臣は9月14日の記者会見で、小泉首相の混合診療解禁指示について要旨以下のように語った。
 「混合診療や特定療養費について、今後、どういうふうに進めていくかというルール作りをやれということなら反対ではないが、この混合診療というものを全ての分野で認めろというふうに言われると、これは、現在の皆保険制度が崩壊することになるので、そういう趣旨であれば反対だと、意見を求められれば私はそう申し上げたい。混合診療は一つのルールを作って、そして一定の範囲内で認めていくということが私は望ましいのではないかというふうに思っている」

四病院団体協議会
「国庫補助負担金の改革」に関する要望について(反対意見)
 9月15日
 我が国の医療は、国民皆保険制度の下、全国民に等しく良質で安全な医療が提供されなければなりません。
 殊に、緊急に治療処置を必要とする救急医療の確保や、山間、離島等いわゆる過疎、へき地住民に対する都市部と格差のない医療提供体制の整備については、全国的な観点に立って調整すべき政策の展開が必要であり、国は医療法第1条の3(国及び地方公共団体の責務)により国民が安心できる医療を確保する責務を負っています。
 今般、地方六団体は、平成18年度までに総額3.2兆円の補助金廃止、3兆円程度の税源移譲をすることで合意しました。
 廃止対象補助金の項目には社会保障関係補助金が含まれており、平成16年度補助金予算額をみると、医療施設に対する施設整備費180億円、設備整備費34億円、運営費194億円(救命救急134億円、へき地20億円他)計408億円に上ります。
 補助金が廃止され、移譲された財源が各地方公共団体の自主的裁量に委ねられた場合、医療提供体制の整備確保について地方により格差が生ずることが深く懸念され、全国民に均等、良質、安全な医療を提供する体制に影響を及ぼすことは必定です。
 地方分権の理念を実現するために、国と地方の役割分担と税源配分の不均衡是正の改革を目的とする趣旨を否定するものではないが、社会保障関係は、国のセイフティネットとして重要なことは言うまでもありません。
我われ病院団体は、画一的な「国庫補助負担金の改革」に強く反対します。

地方6団体提案「国庫補助負担金等廃止」の対象 (05・06年度厚労省関係事項)
【総額】 約 9,444億円
●施設整備関係 約 1,677億円
(主なもの)
 社会福祉施設等施設整備費負担金・補助金 約 1,300億円
 保健衛生施設等施設整備費補助金 約  100億円
 医療施設等設備整備費補助金 約  170億円  等
●運営費・事業費関係 約 7,766億円
(主なもの)
 保健事業費等負担金 約 290億円
 精神保健対策費補助金 約 20億円
 医療施設運営費補助金 約 190億円
 医療関係者養成確保対策費等補助金 約 90億円
 疾病予防対策事業費補助金 約 60億円  等
【医政局関係における廃止の影響例】
 ○小児救急医療など救急医療体制の確保 150億円→3.1億円
 ○へき地医療体制の確保 26億円→0.4億円
 ○医療施設整備 188億円→ 0億円
 ○看護職員確保対策関係 131億円→ 27億円
 ○8020運動の推進関係 6.8億円→ 0億円
 ○電子カルテ導入推進関係 4億円→ 0億円

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