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厚労省 ポスト&サブアキュートを担う病棟の機能を提示。地域一般病棟と一致

厚労省 ポスト&サブアキュートを担う病棟の機能を提示。
地域一般病棟と一致

【病床機能情報の報告・提供のあり方検討会】
病棟機能に医療過疎地限定「地域多機能」を提案。「都市部に認めるべき」との意見も。

 

 5月30日の「病床機能情報の報告・提供の具体的なあり方に関する検討会」に、事務局(厚労省医政局総務課)は「病床機能情報の報告・提供のあり方案」を示し、とりまとめに向けた議論を促した(1面記事を参照)。
 「あり方案」は、病棟単位で報告する医療機能のカテゴリーとして急性期、亜急性期(仮称)、回復期リハ、地域多機能(仮称)、長期療養の5つをあげ、各機能の定義と判断基準、報告事項の具体案、都道府県による病床機能情報提供様式案等を示した。
 この日は「地域多機能」の解釈に多くの時間を費やすなど議論は医療機能区分の検討に終始、提案内容の全体を検討するにはいたらなかった。
 医療機能区分の説明で、事務局は、亜急性期を「主として、急性期を経過した患者(ポストアキュート)、在宅・介護施設等からの患者であって症状の急性増悪した患者(サブアキュート)に対し、在宅復帰に向けた医療を提供する機能」と定義した。
 この考え方は、同日の中医協「入院医療の調査・評価分科会」に保険局医療課が示した亜急性期機能と一致する(2面記事を参照)。今まで「回復期」としてきた機能に関しては、あらためて回復期リハビリテーションという名称を採用した。
 他方で、これまで「地域一般」と表現してきた医療機能を「地域多機能」と言い換え、その内容を「一つの病棟で複数の医療機能を持ち、幅広く対応できる機能」とあらためて定義した。この日は、この「地域多機能」をどう解釈するかをめぐって、様々な意見が出た。
 「地域多機能」について、事務局は「医療資源が少なく機能分化ができない地域の医療機関で、2病棟以下の医療機関が報告する」とした。
 「機能分化ができない地域」とは、「地域で自己完結した医療提供をしており、医療従事者の確保等が困難かつ医療機関が少ない地域が想定されるが、都道府県で、地域の実情等を踏まえて判断する」こと、さらに、「3病棟以上の医療機関が『地域多機能』として報告しようとする場合にも、都道府県が医療機関の事情等を踏まえて判断する」と提案した。
 この考えに、相澤委員(日病副会長)は、「多機能の医療機能を担うのは地方に限らない。むしろ、高齢化の下で、都市部の、病棟が少ない小規模病院にもそうした機能が求められている。都会の中小病院を多機能病棟として認めるべきである」と疑問を呈した。少なからぬ委員から賛同の意見があがった。
 事務局は、都市部にそうした中小病院があることを認めた上で、「都市部は基本的には地域全体で機能分化が求められる。そうした機能を認めるか否かの最終判断は各都道府県であるが、考え方としては別途定義される地域に限られる」との回答を繰り返したため、両者の間で見解が平行線をたどった。

 

「地域多機能」の提案で議論が複雑に

 相澤委員は、また、「亜急性はポストアキュートに限定すべきではないか」と述べ、サブアキュートを急性期に位置づけるべきと論じた。
 一方、事務局は、「亜急性期(仮称)」の医療機能の名称を論じる中で、地域一般病棟について、「社会保障・税一体改革で、地域によっては機能分化ができないという事情に配慮し、多様な機能を併せ持つ病床という趣旨で『地域一般病床』という名称が用いられており、誤解が生じるおそれがある。また、『地域一般病棟』は病棟の名称であり、医療機能の名称とする必要がある」と論じ、「当面は『亜急性期』という名称を用いる。医療界からさらにより良い提案があれば検討していく」とした。
 地域の一般病院は、急性期後の患者、在宅等を含む救急の患者、軽症急性期の患者を引き受け、経過に応じて在宅ほかの次ステージへ患者を送り出しており、亜急性期とは限らない。その役割は、高齢社会の進展とともに必要性を増し、地方だけでなく、都市部でも重要なものとなっている。こうした、地域の一般病院が病棟で提供している多様な機能を概念化したものが地域一般病棟である。
 事務局の説明は、地域一般病棟は亜急性期に限定された概念であると誤解させる余地があるが、今回提示した3つの医療機能は地域一般病棟の機能と重なるものだ。
 しかし、「地域多機能、西澤委員がいう地域一般病棟を医療過疎の地域に限定するのは間違いである。高齢化のもとで地域多機能は都市部でも必要である」といった意見が示されるなど、「地域多機能」を地域一般病棟とみなし、「地域多機能」との整合性を求める意見も出るなど、新たに提案され「地域多機能」が議論に混乱を与えた。
 こうした展開に、西澤委員(全日病会長)は、まず、一体改革の「地域一般病床」は中都市を想定しているにもかかわらず、事務局案は「2病棟以下」であることを取り上げ、「一体改革は、もう少し大きな病院、恐らく200~300床ほどの大きさを想定しているのではないか。“2病棟以下”というのは、へき地を想定した、前改定で導入された病棟評価と似ている。今後、この2つをどう考えるかについて議論してほしい」と、議論俎上にあげることを求めた。
 その上で、都市部に代表される、地域の事情で軽症急性期から在宅等の急性増悪患者まで幅広く患者を受け入れている地域の一般病院があることを指摘、それが地域一般病棟のイメージあると説明。
 さらに、複数の委員から「都会にこそ必要だ」という指摘があったことに言及。「それは地域一般病棟のことではないか。そうした病院は急性増悪だけでなく軽度の急性発症も受ける。したがって基本的には救急もやる病院である。そこで、我々は地域一般病棟を一般病床(10対1)に位置づけた。各委員が必要だと言っているのは、まさしく、我々が言う地域一般病棟のことである」と説明した。
 亜急性期および「地域多機能」など医療機能をめぐる議論は次回以降も行なわれるが、こうした議論状況に、四病協は地域一般病棟の概念の整理と深化を図る方針を決めている。

 

ビジョンを2年早め、16年度に現行医療計画に導入の方針

 5月30日の「病床機能情報の報告・提供の具体的なあり方に関する検討会」に、事務局(厚労省医政局総務課)は病床機能情報報告制度の導入と地域医療ビジョン策定にいたる日程的な展望を示した。この日程を踏まえ、事務局は6月いっぱいに報告制度の骨子を決めたいとしている。
 当初案では、2014年度に各医療機関による報告をスタートさせ、17年度に各都道府県が地域医療のビジョンを策定するとしていたが、今回の日程案は、14年度後半から各都道府県は地域医療ビジョンの検討を開始し、15年度後半にビジョンを策定、「13年度から始まっている現行医療計画に追記する」としている。
 当初の予定を2年早めた上で、18年度からの次期医療計画の基礎にするとしていた方針を、現行医療計画に16年度から導入すると変更したものだ。
 社会保障制度改革国民会議でビジョン策定と医療計画への反映を前倒しするよう求める意見が出たことが背景にあるものとみられる。
 当初の日程案では、各医療機関の報告結果を踏まえてビジョンのGLを作成、それにもとづいて都道府県は地域の医療ビジョンを策定するという手順であった。しかし、新たな日程案は、各医療機関の報告と並行してGLを作成する手順になっている。
 これでは、各地の病床機能実態を無視した、予見や規制データを踏まえてビジョン作成上の指標等の考え方が導かれる恐れがある。
 同日の検討会で西澤委員(全日病会長)はその恐れを指摘、日程を見直すよう求めた。