全日病ニュース

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療養病床必要数の鍵は在宅に移る「医療区分1の70%」への対応

療養病床必要数の鍵は在宅に移る「医療区分1の70%」への対応

松田教授 データを活用し議論する場の設置が地域医療構想の最大の重要な点

2025年の医療機能別必要病床数推計結果に関する松田晋哉産業医大教授の発言
「医療・介護情報の活用による改革の推進に関する専門調査会」(6月15日)後の記者会見から *1面記事を参照

●この病床数でうまくいくと考えるか。
松田教授 これはあくまでも病床数の推計であって患者数の推計ではない。GLにもとづいて療養病床の医療区分1の7割が在宅に移ったと推定した場合の病床数である。我々は、同じ定義でみた場合に患者数はこのぐらいで、(病床稼働率で割り戻すと)病床数はこのぐらいだろうという目安を出したに過ぎない。在宅医療と介護施設で医療を受ける人も含めて慢性期としているが、この慢性期の患者を病床で診るのか、在宅あるいは介護施設で診るのかは、それぞれの構想の中で決めていただくわけで、実際に利用可能な資源をどう活用していくかは、調整会議で議論していただくものと理解している。
●これを絵に描いた餅に終わらせないためはどういうことが大切か。
松田教授 まずは、医療の現状をきちんと理解していただくことが大切なのではないか。20年前の急性期と今の急性期はかなり違う。患者の主体が60歳前後だった頃はまさに急性期だったと思う。しかし、後期高齢者がかなり増え、慢性期疾患をベースに肺炎や骨折といったイベントを起こしていくときに必要な急性期は、(昔と)意味合いが違うように思う。介護や在宅で予防的なことをしていかなければならないし、認知症という問題も出てくる。やはり、データにもとづいて、医療提供体制を変えていく必要があるのではないか。
 こうした医療の現場で起こっていることをたぶん国民は理解していない。もしかしたら医師も明確には意識していないかもしれない。したがって、大学病院の入院患者が平均70歳を超えている時代に、急性期から慢性期、在宅さらには介護まで、どういう提供体制が望ましいのかということで共通認識をもっていただくことが、色々な議論をしていく上で前提となる。
 これは(関係者)皆が考えなければならない。そうした意味で、データにもとづいて考え、議論していく場ができたということが、この一連の事業でもっとも重要なことではないか。
●療養病床の減少は受療率の効き目が大きいからか。
松田教授 パターンA、B、Cの差は受療率であるが、一番効くのは医療区分1の人が7割外に出るということだ。これが外に出れるか出れないかは、それぞれの地域での話し合いにもよるだろう。要するに医療ニーズの低い人たちを地域でどのようにみていけるかを、患者の視点に立って考えていくということではないか。
●地域医療構想を創る都道府県に、この推計をどのように活用してほしいと考えているか。
松田教授 都道府県にはデータが行っており、国として都道府県対象に研修会を行なう。研修会では、推計ツールの使い方を覚えてもらい、その上で、それぞれの地域でデータから何に着目するかなど各地域の医療の現状を把握してもらった上で、2025年にどうなるかを考えてもらう。
 では、2025年に医療介護をどのように提供する体制を整えることがこの地域は望ましいのか、それは療養病床のところが中心になると思うが、それを考え、そのシナリオを書いていただくという研修になる。
●パターンA,B,Cのどれを現実的と考えているのか。
松田教授 どれが現実的であるかは分からない。それはそれぞれの調整会議で、その区域ではどうしていくかを考えていただくテーマではないか。私どもはGLに書き込まれた定義にしたがって推定をするための資料をつくってきたわけだが、実際の推計は、我々が触れないデータもあるため、厚労省でやってもらっている。我々はあくまでも、この基準でやるとどうかるかということを考えるためのロジックを提示したに過ぎず、そこに一切の価値判断を入れていない。価値判断をするのはそれぞれの区域の調整会議だと考えている。

厚労省 急性期からの病床転換を妨げない診療報酬上の基準等を設定

「地域医療構想の実現に向けた今後の対応について」6月15日の専門調査会に厚労省が提示

○今後、都道府県が策定する「地域医療構想」の実現に向けて、以下の対応を図っていくことが必要。
1. 回復期の充実(急性期からの病床転換)
2. 医療従事者の需給見通し、養成数の検討
3. 慢性期の医療ニーズに対応する医療・介護サービスの確保について
1. 回復期の充実(急性期からの病床転換)等について
○急性期中心の病棟から回復期(リハビリや在宅復帰に向けた医療)の病棟への転換など自主的な取組を進める必要。
○その際に必要な施設・設備の整備は、「地域医療介護総合確保基金」により補助を行い、病床転換を誘導。
○また、各機能の必要な看護師等の人数も異なることなどを踏まえ、転換に当たって妨げとならないような適切な診療報酬の設定が必要。
2. 医療従事者の需給見通しと養成数の検討について
○「地域医療構想」による病床推計等を踏まえ、医療従事者の需給について見直していく。
※回復期病床の充実のためには、リハ関係職種の確保を進めていく必要があるなど、病床の機能分化・連携に対応して医療従事者の需給の見直しを検討。
○こうした見直しの中で、医学部入学定員等についても検討していく。この夏以降にも、検討会を設置して、検討を開始する予定。
3. 慢性期の医療ニーズに対応する医療・介護サービスの確保について
(1)基金を活用した在宅医療、介護施設等の計画的な整備
・「地域医療介護総合確保基金」を有効的に活用して、在宅医療・介護施設等を着実に整備。
・特に、平成30年度から始まる第7次医療計画及び第7期介護保険事業計画には、必要なサービス見込み量を記載し、計画的・整合的に確保。
(2)慢性期の医療・介護ニーズに対応できるサービス提供体制の見直し
・(1)に加えて、厚生労働省に有識者による検討会を直ちに設置し、慢性期の医療・介護ニーズに対応するサービス提供体制のあり方について、検討を開始。年内をメドに見直しの選択肢を整理。
【検討内容】
①介護療養病床を含む療養病床の今後のあり方
② ①以外の慢性期の医療・介護サービス提供体制のあり方
【スケジュール】
・6月下旬を目途に第1回会議を開催し、年内をメドに制度改正に向けた選択肢を整理。
・来年以降、厚生労働省社会保障審議会において、制度改正に向けて議論。(介護療養病床は、現行法では平成29年度末をもって廃止されることとなっている。)