全日病ニュース

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消費税分を除く社会保障費は2020年度まで年5千億円増に抑制

消費税分を除く社会保障費は2020年度まで年5千億円増に抑制

【骨太方針&日本再興戦略】
16年度改定の評価に「病床機能に応じた点数と要件」「収益」の視点を求める

 経済財政諮問会議は6月30日に産業競争力会議と合同会議を開催し、総理大臣に対する答申として「経済財政運営と改革の基本方針2015」(骨太方針2015)を決定するとともに、「日本再興戦略」の改訂版(「日本再興戦略」改訂2015)をとりまとめた。
 諮問会議後に安倍政権は臨時閣議を開催、「骨太方針2015」、「再興戦略改訂2015」、「まち・ひと・しごと創生基本方針2015」、さらに、規制改革会議が6月16 日にとりまとめた「規制改革実施計画」をそれぞれ決定した。

 骨太方針において、政府は、2020年度の基礎的財政収支黒字化をめざす「経済・財政再生計画」を定めた。
 その「経済・財政一体改革」を強力に進めるために、経済財政政策担当大臣の下に政府横断的な組織(プラットフォーム)を設け、健康増進・予防等の社会保障サービスと公共サービスのイノベーションの2 領域を対象に、新たな市場創出のモデル事例を全国展開につなげる取り組みを展開する、としている。
 また、経済財政諮問会議に専門調査会(経済・財政一体改革推進委員会)を付設。社会保障等のWGを設けて、主要な改革に前倒しで取り組む集中改革期間(16~18年度)を中心に経済・財政一体改革の進捗管理・点検・評価を行なう方針だ。
 閣議決定された政府方針において、社会保障関連の施策は、財政健全化という錦の御旗の前に、歳出改革の恰好のターゲットとされた。
 骨太方針は、安倍政権の過去3年間に社会保障関係費の実質的増加が高齢化による増加分に相当する伸び(1.5兆円程度)となっていることを踏まえ、「その基調を2018年度まで継続していく」とし、かつ、「2020年度に向けて、社会保障関係費の伸びを、高齢化による増加分と消費税率引上げとあわせて行う充実等に相当する水準におさめることを目指す」とした。
 消費税率引上げ分は、もっぱら、医療介護総合確保基金と介護労働者の賃金引上げなど改革目的に適合した社会保障の充実に投入されるので、レギュラーな施策の財源の増加は、20年度まで、高齢化にともなう自然増として年間5,000億円以上は認めないというわけだ。かくて、向う5年間、診療報酬の引き上げは見込めない公算が強い。

医療費目標 1人当たり医療費の都道府県別格差半減を目指す

 歳出改革として、骨太方針は、社会保障における「公的サービスの産業化」として、「企業等が医療機関・介護事業者、保険者等と連携した新たなサービス」と「健康サービスや在宅医療・介護の拡大に対応した新たなサービス」の市場化をめざす方針を打ち出した。
 「インセンティブ改革」については、「後発医薬品の利用率向上など保険者の努力に応じて負担すべき金額や交付を受ける金額を増減させること」や「診療報酬・介護報酬を活用したインセンティブの改革を通じて病床再編、投薬の適正化、残薬管理、医療費の地域差是正等を促す」方向を提示した。
 その中で、公的保険外サービスの産業化を促す観点から、「医療法人や医療関係者が実施可能な業務の範囲など、障壁となっている規制がないか検証し、グレーゾーン解消制度等の活用も含めて必要な対応を検討・実施する」ことが明記された。
 具体的施策をみると、医療提供体制については、地域医療構想による病床の機能分化・連携や都道府県ごとの医療費水準と医療提供の目標を設けた医療費適正化計画の策定(国は15年度中に目標設定の標準的算定方式を示す)など、概ね既定の方向を掲げている。
 このうち、医療費目標に関しては、「都道府県別の1人当たり医療費の差を半減させることを目指す」ことが明記された。字句どおり解釈すると、「20年度までに1人あたり医療費の都道府県格差を半分に圧縮せよ」となる。
 この医療費適正化計画に関連して、「高齢者医療確保法第14条の診療報酬の特例の活用の在り方の検討」を行なうことも書き込まれた。
 外来医療費に関しても、「重複受診・重複投与・重複検査等の適正化を行いつつ、地域差の是正を行う」ことが盛り込まれた。関連して、「かかりつけ医の普及の観点からの診療報酬上の対応や外来時の定額負担」の検討を求めている。
 16年度改定に関しては、①費用対効果の試行的導入、②機能に応じた病床の点数・算定要件上の適切な評価、③収益状況を踏まえた適切な評価、④患者本位の医薬分業に向けた調剤報酬の見直し、などの方針が示された。
 「日本再興戦略改訂2015」では、「農林水産業、医療・介護、観光産業の基幹産業化」が大きな目標にあげられた。
 そのうち、医療・介護に関しては、①次世代ヘルスケア産業の創出支援、②医療の国際展開、③医療等分野における番号制度の導入、④地域医療情報連携ネットワーク・電子カルテの普及促進、⑤医療等分野の政策へのデータ活用の一層の促進の5つが「鍵となる施策」とされた。
 このうち、医療の国際展開においては、「高品質な日本式医療サービス・技術の国際展開(医療のインバウンド)」を、2020年までになしとげるべき中核的プロジェクトである「改革2020」(成長戦略を加速する官民プロジェクト)の1つに位置づけている。
 番号制度に関しては、17年7月以降の早期に医療保険のオンライン資格確認システムを整備し、「医療機関の窓口で個人番号カードを健康保険証として利用する」ことを可能とする方針が掲げられた。
 また、ICT化推進の一環として、「次期改定時に、診療報酬におけるICTを活用した医療情報連携の評価の在り方を検討する」ことが盛り込まれた。