全日病ニュース

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病床機能報告と診療報酬とで病棟機能の整合性がないとの指摘が多数

病床機能報告と診療報酬とで病棟機能の整合性がないとの指摘が多数

【16年度診療報酬改定の基本方針】
医療保険部会は基本認識と基本的視点を了承。医療部会は異論・修正の声が多数

 2016年度診療報酬改定の基本方針策定に向けた議論が、社会保障審議会の医療保険部会(9月11日)と医療部会(9月16日=写真)で始まった。
 厚労省は、両部会に、16年度改定をめぐる「基本認識」、改定の「基本的視点」と「検討の具体的方向」に関する考え方を示し、「具体的方向」に検討テーマを例示した。
 その一方で、医療部会には別途「医療提供体制改革の観点からの主な論点」を提示、①医療需要の変化への対応、②医療従事者の確保、③質の高い医療の効率的な提供、④医薬品・医療機器の産業振興の4テーマからなる具体的な論点を示した(別掲)。
 両部会に提起した基本認識は、「基本的視点」の前提となり、16年度改定をどう位置づけるか、改定をどう方向づけるかという問題意識となる。
 厚労省は、そこに、(1)超高齢社会における医療政策の基本方向、(2)地域包括ケアシステムと効率的で質の高い医療提供体制の構築、(3)経済・財政との調和の3点を掲げた。
 超高齢社会と地域包括ケアシステムは改定方針のベース部分には初めて登場するキーワードだが、(1)には、「『治す医療』から『治し、支える医療』への転換」や「費用対効果の考慮」といった理念的な方向性が、(2)には医療・介護一体改革を推進するという戦略的な方向性が打ち出されている。
 「経済・財政との調和」も初めて提起される考え方で、16年度改定を牽引するコンセプトに据えたいとする厚労省の意向がうかがわれる。
 こうした提案を医療保険部会は大筋了解とした。しかし、医療部会では厚労省案に数多くの質問や異論が相次ぎ、総論をめぐる意見集約にはいたらなかった。

 基本方針には、毎回「基本的な視点」として、(1)医療機能の分化・連携の推進、(2)患者にわかりやすくQOLを高める医療、(3)充実が求められる領域の評価、(4)効率化できる領域の適正・効率化という4つの考え方が掲げられてきた。
 両部会で基本方針にかかわる資料を説明した厚労省保険局の渡辺医療介護連携政策課長はそのことに言及し、今回も、「基本的にこれまでの基本的な視点を踏襲してはいかがか」と提案した。
 同時に、時々の情勢認識を反映して、「病院勤務医(医療従事者)の負担軽減」「救急・産科・小児・外科医療の再建」「医療と介護の役割分担の明確化」「医療機関の機能分化・強化と連携、在宅医療の充実等」といった重点的に配分すべきテーマを「重点課題等」として明確にしてきたとも説明。
 その上で、16年度改定に際した基本認識として、①超高齢社会における医療政策の基本方向、②地域包括ケアシステムと効率的で質の高い医療提供体制の構築、③経済・財政との調和の3点を検討、基本方針に加味すべきではないかと提案した。
 このうち、②については、「次々回の介護との同時改定を念頭に置いた介護報酬との連携」という視点が含まれると指摘した。
 ここに明記された「超高齢社会」「地域包括ケアシステム」というキーワードは、改定基本方針の基本的視点や重点課題等には初めての登場となる。
 また、これも初めてとなる「経済・財政との調和」という点については、その具体的視点に「骨太方針2015、日本再興戦略2015、規制改革実施計画等の指摘事項への対応」を例示した。
 渡辺課長は、さらに、基本認識を踏まえた「改定の基本的視点」を4点あげ、それぞれに「検討の方向」となる課題を例示した(別掲)。

□医療保険部会における議論

 9月11日の医療保険部会は正味1時間ほどを使って16年度改定基本方針にかかわる議論を行なったが、医療保険制度の持続可能性を重視する見地から、「経済・財政との調和」など基本認識や基本的視点を容認した上で、プラス評価をいましめる観点からの意見が多く出た。
 その中で、白川委員(健保連副会長)は、厚労省の提案を首肯した上で、「かかりつけ医、かかりつけ歯科医、かかりつけ薬剤師・薬局等の評価」を取り上げ、「これは薬局に新しく点をつけると読める。しかし、薬局が本来果たすべき機能はまだ不十分ではないか。機能の充実というのであれば分かるが、評価という表現はやめてほしい」と批判。
 かかりつけ医やかかりつけ歯科医を評価することにも懐疑的な意見を述べ、この一文の書き直しを求めた。
 一方、武久委員(日慢協会長)は、かかりつけ薬剤師の評価という提案に、薬剤師外来があるなどの例を示して、病院薬剤師の評価も検討の俎上にのぼらせるよう求めた。
 一方、病床機能報告における病棟単位の機能区分と診療報酬の病棟種別の間に整合性がないと指摘する声も多く出た。この問題を指摘した白川委員は、「この2つの関係を将来的にどうしていくのか。次回改定はともかく、この方向性について医療部会、医療保険部会、中医協で議論していく必要がある」と論じた。
 武久委員も同様の指摘を行ない、「とくに地域包括ケア病棟で機能報告をする上の混乱が生じてる」と指摘、医政・保険両局の緊密な協議を求めた。

□医療部会における議論

 9月16日の医療部会は正味1時間半を使って16年度改定基本方針の議論を行なったが、厚労省の提案に対して、とくに医療系の委員から異論が示された。
 西澤委員(全日病会長)は「医療提供体制改革の観点からの主な論点」に明記されている「医療従事者の確保」が「改定の基本的視点と具体的方向性」にはないことを指摘し、「ぜひ重点課題として取り上げるべきではないか」と提案。
 さらに、質向上の取り組みも診療報酬でフォローされるべきとして、基本方針に盛り込むよう求めた。
 このほか、中川委員(日医副会長)は調剤技術料を改定の主たる論点にすべきとの見解を表わすとともに、「4つの病床機能のどれを選択しても安定した医療提供が担保される報酬が必要である旨を基本方針に明記すべきではないか」と主張。
 また、相澤委員(日病副会長)は、「地域で異なる人口減少に医療提供体制がどう対応していくか。そのためには、改定基本方針に、医療提供体制と地域包括ケアシステムを合体させた視点を盛り込むべき」と論じた上で、以下のように機能分化に疑問を唱えた。
 「機能分化とは病床のことか、それとも病棟あるいは病院のことを言うのか。これが巧みに使い分けられているため、病院界は混乱している。これに関連して、今の入院基本料は病院単位だが、(病棟単位で臨むならば)病棟群という考え方もある。それとも病床単位の評価とするのか、考え方を整理してほしい」さらに、加納委員(医法協会長)は、高齢者の救急に対応した提供体制の整備が急務として、2次救急の評価を重点課題にするよう求めた。