全日病ニュース

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産科補償制度見直しで合意

産科補償制度見直しで合意

15年1月から実施。今後は省内に制度検討の場を設置

 

 1月20日の医療保険部会は産科補償制度の見直しについて検討、同制度を運営する日本医療機能評価機構が示した案のうち一般審査と個別審査の各基準を見直すことで合意、2015年1月から実施することを決めた。
 この結果、分娩に関連して発症した重度脳性麻痺(身体障害者障害程度等級1級または2級相当)の補償対象とする一般審査の基準を、在胎週数は33週以上から32週以上へ、出生体重は2,000g以上から1,400g以上へと拡大。
 一律に補償する基準を下回る場合の個別審査基準には「心拍数基線細変動の消失」などの所見を追加した。
 評価機構の提案には、日本産婦人科医会など7学会が支持する「在胎週数を31週以上とする」考え方があった。
 しかし、同部会は、「脳性麻痺の発生率には31週、32週と33週との間に統計学的な有意差はない」ことを根拠にした31週説を「統計学的な根拠は乏しい」と判断、32週説が採用された。
 評価機構は、「先天性要因や新生児期の要因等の除外基準、重症度の基準および補償申請期間の基準の見直しは行なわない」としたほか、補償水準(3,000万円)と支払方式(一時金600万円+毎年120万円を20回)についても現行方法を維持すると提案、了承された。
 2009年1月に開始された産科補償制度は5年後に見直すとされていた。
 したがって、厳密には14年1月からの見直しとなるが、保険会社から評価機構に返還される剰余金と制度変動リスク対策費の考え方などをめぐり、健保連や協会けんぽなどの保険者が評価機構に強く再考を迫るとともに、在胎週数を31週以上とする案に難色を示した結果、当初予定した14年1月の保険契約に間に合わず、見直しの実施は15年1月の保険契約へと延期された。
 在胎週数ごとの発症率をめぐる議論で、評価機構は脳性麻痺のデータ掌握の困難さを再三指摘した。
 これに関して、部会の委員からは、「無過失補償は本来は国の仕事。調査も運営も評価機構に任せ切りにして不満ばかり述べるのはいかがなものか」などの意見が出た。
 一方、保険者は、「保険者も負担する公的制度の見直しを民間組織である評価機構の提案にもとづいて議論するのは不合理。厚労省内に検討作業の場を設けるべき」と主張した。
 このため、この日の部会は、見直し案にもとづく補償対象児の推定値、掛金水準、剰余金と制度変動リスク対策費のあり方など積み残しの問題、さらには脳性麻痺に関する調査などを検討する場を医政局に設けることで合意した。