全日病ニュース

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□都会で在宅医療を担う病院(10対1)として
点数のシミュレーションから14年改定のメッセージを読みとる

<会員病院の報告●2014年度診療報酬改定をこう受け止める>
□都会で在宅医療を担う病院(10対1)として
点数のシミュレーションから14年改定のメッセージを読みとる

社会医療法人社団慈生会 等潤病院・常楽診療所 理事長 伊藤雅史 

 今回の診療報酬改定では、在宅不適切事例の適正化による集合住宅などへの訪問診療・在宅時総合医学管理料(在総管)が大幅に減算され波紋を呼んでいる。紹介患者ビジネスへの対応として評価する一方で、今後急増する高齢者の住居として期待される集合住宅の在宅医療が後退するとの懸念の声もある。本稿では自施設の実績をもとに、在宅医療における診療報酬改定の影響を検討する。
 当法人の中核である等潤病院は164床のケアミックス病院で、病床の内訳は一般122床(亜急性8床)、回復期リハ42床である。DPC対象病院で入院基本料は10対1、平成25年度実績で医療機関係数は1.1950、一般病床平均在院日数14.0日、全病床稼働率89.5%、救急搬送件数2,214台(二次救急)である。
 東京都足立区は大学病院などの中核病院がなく、救急や地域医療を守るために急性期機能を堅持すべく、320列CTや3T-MRI、バイプレーン血管造影装置などを導入し、情報共有ツールとしてのIT化にも注力している。
 さらに強化型の在宅療養支援病院であり、近隣特養2施設の協力機関として年間4例の看取り実績があるものの、今後は、常楽診療所在宅診療部門との統合を視野に入れている。
 実質的に在宅医療を担っているのは強化型の在宅療養支援診療所である常楽診療所で、週4.5日体制で実施している。平成25年1年間の月平均患者数は146名で、自家などへの訪問(同一建物以外)患者数は103名、集合住宅などへの訪問患者数はグループホーム43名であった。同期間の訪問診療回数は月平均276回、往診回数は月22回で、深夜・緊急などの加算は年間23件、看取り件数は29件、希望による死亡直前の病院搬送は5名であった。
 同期間に等潤病院退院時、在宅に直接新規移行したのは30名で、その多くは退院調整困難となり易い癌末期患者であった。在宅から等潤病院への入院は延142名、うち救急搬送は98名であり、在宅医療は中小病院における入口出口問題解決の一助となっている。
 緊急時の対応・連携に関し、電子カルテにフルアクセスするモバイルPC(独自開発)を訪問診療に導入し、病院、診療所、介護事業所がリアルタイムに情報共有しているが、この意義は大きい。
 表には平成25年1年間の診療報酬額の理論値を示した。自家など(同一建物以外)の在総管と訪問診療料の合計(b)は75,268千円、グループホーム(同一建物)の合計(c)は12,894千円、さらに、往診料や在宅ターミナル・看取り加算などを加えた総額(a)は93,480千円であった。
 同一建物以外は、1日につき医師1名が終日4日間、同一建物は医師1名が半日で診療しており、同一建物は効率が約40%高かった。在支診(病)と「それ以外」も参考にして頂きたい。
 平成26年4月改正による試算では、同一建物以外(b)は微増だが、同一建物を従来と同じく月2回訪問した場合に(c)は45.7%の大幅な減額、総額(a)も7.7%の減額となり、同一建物・医師1名あたりの効率は逆転して約26%低くなるなど、その影響は甚大である。
 その一方で、在支診(病)以外の施設のみ、同一建物以外(b)が24.4%もの増額となることが注目される。
 なお、同一建物であっても月1回は個別訪問、あるいは往診、末期癌患者等では減額はなく、しかも医療機関の区分に関係なく在総管・訪問料が一律で増額となった。当施設の規模では患者の同意、算定要件をクリアできれば、理論的には同一建物のカウントを免れることは可能で、その場合(c)の部分は85.6%の大幅な増額となる。
 総額(a)も10.4%増で、注目すべきは、在支診以外では34.0%もの増額となる。
 現実的には困難が予想されるため、必要な往診を充実させる方針ではあるが、患者数が少ない医療機関では十分検討に値する。
 また、機能強化型の実績要件は厳格化され、複数医療機関の合計だけではなく個々の医療機関にも実績を求めており、その影響は少なくないと予想される。その一方で、強化型の要件を満たさなくても十分な緊急往診及び看取り実績を有する在支診(病)には、看取りを中心に新たな加算項目が追加された。
 以上、今回の改定から読み取れる在宅医療の方向性は、強化型要件を厳格化して人員配置などの規模に対する評価は頭打ちとして、看取り実績への評価を高めることで看取りを担う医療機関の裾野を広げ、集合住宅においては集団ではなく患者の真のニーズに合わせた個別訪問を、地域に根差した規模の小さな医療機関が協力して担うことを求めている。
 在宅医療においてもStructure 評価からOutcome 評価への転換が明らかとなってきた。