全日病ニュース

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15年度介護報酬改定の議論本格化。厚労省が各論を提示

15年度介護報酬改定の議論本格化。厚労省が各論を提示

【介護給付費分科会】
在宅中重度への対応を評価。事業所・サービス間の連携へ、算定要件等を弾力化

 社会保障審議会・介護給付費分科会における2015年度介護報酬改定をめぐる議論が本格化した。
 10月3日に2014年介護事業経営実態調査(実調)の結果が示され、それを踏まえて10月15日に2015年改定の基本的視点について議論を行なった介護給付費分科会は、その後、週1回のペースで各論を論じる日程に入った。
 事務局(厚労省老健局老人保健課)は、11月下旬にかけて、居宅サービスを2回、施設サービスを2回、その他(処遇改善、区分支給限度基準額、地域区分など)1回と、総論と合わせて6回の議論を行ない、12月に改定の基本的な考え方をまとめ、12月上中旬に運営基準(省令)案の答申を終える予定だ。
 2014年実調は、(1)介護サービス21種類のうち19が黒字を示し、多くのサービスで収支差率が5%以上となった、(2)介護保険3施設の収支差率は特養8.7%、老健施設5.6%、介護療養型8.2%と黒字ながら、いずれも前回調査よりは率は下る、という結果となった。
 実調結果に対して、少なからぬ委員からは「実態を反映していない。これを基に報酬を決めるのは危険だ」など、大幅なマイナス改定を危惧する声があがった。
 10月15日は、(1)在宅中重度者や認知症高齢者への対応のさらなる強化、(2)介護人材確保対策の推進、(3)評価の適正化と効率的な提供体制の構築と、3点に集約した今回改定の「基本的な視点」が了承された。
 「基本的な視点」に「規制緩和等を進めていくことが必要」とある点について、迫井老人保健課長は「算定要件等の弾力化を念頭においている」と説明。  効率化に向けて、事業所・サービス間の連携を進める上で人員配置の緩和などを想定していることを示唆した。
 同日の議論で、多くの委員は処遇改善加算の継続を訴えたが、保険者の委員は「打ち切りが当然」とした。
 10月22日には、事務局から、訪問看護等5種類の居宅サービスに関する「報酬・基準案」が示された(1面に掲載)。
 それは、多くのサービスに在宅の中重度要介護者への対応を評価する項目が並ぶ、15年度改定の最大ポイントがうかがえる方針であった。

□2015年度介護報酬改定に向けた基本的な視点(要旨10月15日)

第1の視点は、地域包括ケアシステムの構築に向けた、在宅中重度者や認知症高齢者への対応の更なる強化である。今般の制度改正は在宅医療・介護連携の推進を地域支援事業に位置づけたが、今回の介護報酬改定も、医療と介護の連携も含め、在宅中重度者や認知症高齢者への支援を強化することが必要である。
 また、2014年度診療報酬改定や地域医療構想に基づく病床機能の分化・連携による在宅復帰促進の流れによって在宅医療・介護のニーズが高まり、在宅要介護者の中重度化が見込まれることからも、在宅生活の限界点を更に高めるための対応が必要である。
 第2の視点は介護人材確保対策の推進である。介護人材の確保に当たっては、事業者自らの意識改革や自主的な取組を推進するとともに、国・都道府県・市町村が役割分担しつつ、事業者の取組がより促進される仕組みを構築していくことが必要である。
 第3の視点は評価の適正化と効率的な提供体制の構築である。限りある資源を有効に活用するためには、より効果的で効率的なサービスを提供することが求められている。
 このような観点から、必要なサービス評価の体系化・適正化や規制緩和等を進めていくことが必要である。

□2014年介護事業経営実態調査結果の概要

調査時期/2014年4月(14年3月中の収支等の状況を調査)
有効回答率/48.4%(介護老人保健施57.5%、介護療養型医療施43.2% 等)
*前回11年調査との比較については調査対象が同一でないことに留意が必要

●調査結果のまとめ
①施設系サービス
・収支差率は、介護老人福祉施設8.7%(前回比-0.6ポイント)、介護老人保健施設5.6%(-4.3ポイント)、介護療養型医療施設8.2%(-1.5ポイント)と、介護老人福祉施設は微減、介護療養型医療施設と介護老人保健施設は下降している。
・収入に対する給与費の割合は、介護老人福祉施設57.6%(+0.1ポイント)、介護老人保健施設56.5%(+4.3ポイント)、介護療養型医療施設56.3%(+1.1ポイント)と、介護老人保健施設は上昇しているが、他の2施設は変動が小さい。
②訪問系サービス
・収支差率は、訪問リハビリテーション5.3%(+2.2ポイント)、訪問看護ステーションは5.0%(+2.7ポイント)。
・給与費の割合は、訪問看護ステーション76.6%(-3.4ポイント)、訪問リハビリテーション68.1%(+7.3ポイント)となった。 ③通所系サービス(略)
④その他のサービス(略)

●総括
・多くの介護サービスで、職員1人当たりの給与費と利用者数等稼働率の上昇を伴いながら、収支差率は5%以上となり、10%以上となったものもある。各介護サービスの収入に対する給与費の割合は、前回調査と比べ、概ね同程度の水準を維持している。
 ・施設系サービスの収支差率はいずれも5%以上となった。
 ・訪問系のうち、訪問介護、訪問入浴介護、訪問リハビリテーション、訪問看護ステーションの収支差率は5%以上となっている。
 ・通所系の収支差率はいずれも5%以上で、通所介護の収支差率は10%以上となった。