全日病ニュース

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看護師特定行為研修 指導者講習会を本部(東京)で開催

看護師特定行為研修
指導者講習会を本部(東京)で開催

2015年度8回開催の皮切り。大学、医学部付属病院、公的病院も参加

 全日本病院協会は7月20日に「2015年度看護師特定行為研修指導者講習会」の1回目(東京会場)を本部会議室で開催、定員いっぱいの50人(39機関・施設)が受講した。
 特別講師として厚生労働省医政局の岩澤和子看護課長が登壇、「特定行為に係る看護師の研修制度」の概要と留意点について講演した。
 この10月1日に施行される特定行為研修制度の指定研修機関は、共通各科目と区分別科目ごとに研修指導者を適切数配置しなければならないが、医政局長通知で、指導者は指導者講習会を受けていることが望ましいとされた。
 したがって、研修機関として指定を希望する教育機関・病院等は研修指導者の確保が急務となっており、指導者講習会の開講が待たれていた。
 そうした中、厚労省は「2015年度看護師の特定行為に係る指導者育成事業」の実施団体にただひとつ全日病を選定。委託を受けた全日病は15年度に国内8地区で各1回指導者講習会を開催する計画を立て、研修機関の指定を希望する全国の施設に参加を呼びかけた。
 本部会議室で開催した講習会はその皮切りとなるもの。神野副会長が総責任者となり、全日病・医法協共催の臨床研修指導医講習会を運営してきたタスクフォースが講習プログラムを作成した初めての指導者講習会は、続いて金沢市(9月6日)と札幌市(9月21日)で開催される。

岩澤看護課長「特定行為研修修了者を最低10万人想定」

 初めての指導者講習会とあって、東京会場の参加募集には全国から大勢の受講希望が寄せられたが、プログラムの都合で定員は50名と限られた。しかし、北海道から佐賀県にいたる各地から、大学、医学部付属病院、公的病院など多数機関・施設からの受講希望が殺到したため、複数出席を希望する施設には受講者を2人に調整してもらうことで辛うじて39機関・施設の参加を確保した。
 受講者の内訳は医師12人、看護師37人、薬剤師1人。施設等の内訳は、大学・教育機関が6、大学病院が16、公的病院が4で、残りは民間医療機関であった。
 指導者講習会のプログラム開発と運営は、05年から9年間、全日病・医法協共催の臨床研修指導医講習会を手がけてきた江村正チーフタスクフォース(佐賀大学医学部附属病院卒後研修センター専任副センター長)と8人のタスクフォースが担当した。
 開講冒頭の挨拶で、西澤寛俊会長は、全日病が指導者講習会を開催するにいたった経緯を紹介した上で、看護師による特定行為の実施が、急性期や救急だけでなく、とくに在宅医療の分野で求められていると指摘。その育成に民間医療機関も大きな役割を担うことから、引き続く全国7ヵ所での開催が重要な意味をもつと述べた。
 ディレクターとして指導者講習会の全体を主導した神野正博副会長は、「これが看護師特定行為研修制度として最初の指導者講習会である」と述べ、「今後全国に広がっていく指導者講習会に向けて、その成果や改善点を各地にフィードバックしていただきたい」と受講者に呼びかけた。
 講演で、岩澤看護課長は、①診療の補助のうち38の行為を特定行為とした、②その特定行為を手順書によって実施する看護師に特定行為研修の受講が10月1日から義務づけられる、③手順書の内容は省令で定められているが各医療現場の判断で記載事項と具体的内容を追加することもできる、④研修機関は学校・病院その他厚生労働大臣が指定するものをいうが、その要件の1つに特定行為研修管理委員会の設置がある、⑤特定行為研修の講義・演習を通信で行なうことができるなど、同研修制度の概要と留意点について説明。
 その上で、「特定行為を行なう看護師は、医療機関だけでなく、介護施設や在宅の場でも活躍が期待されている。2025年に向けて、最低10万人の看護師に特定行為研修を受けていただきたい」と語った。
 そして、「2013年現在約110万人の看護師が就労しており、毎年約3万人増えている。したがって、2025年に150万人近くに達するだろう。その10%に近い数の研修修了者を目指したい」と、同制度の今後を展望した。
 同課長は、また、「看護師は就労しながら研修を受けることになるので、指定研修機関にはできるだけITCを活用いただきたい」と締めくくった。

全日病 手順書のひな形とeラーニングの研修システムに着手

 岩澤課長の発言を受け、神野副会長は、全日病として、①手順書のひな形の作成に着手しているが現時点で公表時期は確定していない、②eラーニングによる講義・演習の開発を予定しているが16年度からの活用を展望している、ことを明らかにした。
 今回実施された指導者講習会は、受講者を6つのグループに分け、約6時間の中で、①特定行為研修を修了した看護師の役割、②「特定行為研修の目標・方略・評価」、③ベスト・プラクティスから学ぶ仕事の教え方・人材養成、④研修者のストレスに配慮したフィードバックの技法、⑤特定行為研修をうまく進めていくための課題の各テーマからなる講義、個人作業(発表)、グループ作業(発表)、全体作業(発表)から構成されている。
 ①のテーマでは、各人の意見(認識)をKJ法を用いて整理した上でワールド・カフェ方式による他グループとの意見交換を行ない、最後に、各グループごとに発表した。
 この特定行為を行なう看護師の役割と位置づけについて、各グループからは、「病院と在宅をつなぐ連携、地域の中での連携」「チーム医療のコア、コーディネーター」「ミニドクター(医師の代理)ではない看護師の視点」「医療の質、安心・安全医療」「看護師の役割の拡大と看護教育改革への影響」「医療費の節減、医師の負担軽減」といったイメージが多く語られた。
 このセッションを指導したタスクフォースは「各グループの発表は、この制度の理念が示すものと概ね一致する」と評価、受講者の意識が看護師特定行為研修の指導者として期待すべき水準にあることを確認した。