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看護師の月平均夜勤時間の見直しは「以下」から「未満」に

【全日病経営セミナー「2016年度診療報酬改定」】

看護師の月平均夜勤時間の見直しは「以下」から「未満」に

「回復期・リハ・看護について」(要旨) 猪口雄二副会長(中医協委員)

 本論に入る前に、各講師のお話しの中で押さえておきたい点を確認したい。
 まず、データ提出加算においてE・Fファイルに追加された項目で、1つは、全患者の「重症度、医療・看護必要度」と「医療区分・ADL区分」を毎日記載しなければならないこと。2つ目に、特別の理由がある場合の持参薬も記載が義務づけられたことである。
 これら新項目の入力は古い電子カルテシステムだと簡単ではないということで、猶予をお願いしてある。半年ぐらいの経過措置をつけてくれるものと期待している。
 持参薬はそもそも主病名の治療には使ってはいけないことになっているが、では、どういう場合に使ってもよいのかは若干曖昧なところがある。通知で確認していただきたいが、現場で判断に迷う点があればこちらとしても医療課と折衝したいと考えている。
 「医療区分・ADL区分」については、例えば、DPC病院等がもっている療養病棟等が対象になるかと思う。地域包括ケア病棟の場合も全病床のデータの提出が課せられているため、療養病棟がある場合はご注意いただきたい。
 在宅医療の診療報酬であるが、今回は単一建物という言い方が使われている。単一建物とは、現行では同一建物と言われているが、同じ建物で1日に何人を診るかで点数を分けている場合を指し、「1人」「2~9人」「それ以上」の3段階で点数が異なる。
 ところが同一建物という言い方もまだ残っている。その使い方は、ぜひ、通知で確かめていただきたい。告示や通知は3月4日に公表される。確認の上、解釈上不明な点があれば、医療保険・診療報酬委員会に窓口をつくるので、早目に質問を寄せていただきたい。
 さて、私が担当する回復期・リハビリ・看護等々についてお話しさせていただく。
 まず、他医療機関を受診するときの、一般病床は40%、特定入院料は70%という減算は、40%が10%に、70%は40%にと緩和された。さらに、特定入院料の場合でも包括診療行為を算定していない場合は10%でよいということになった。
 看護師の月平均夜勤時間の要件の見直しであるが、当初は「“16時間以下の者は計算に含まない”という部分を削ってはどうか」という提案が医療課から示され、我々も喜んでいた。
 しかし、支払側は「看護師の処遇が悪くなる案は絶対に認めない」と譲らず、結論が出ないままに、短冊という「点数の入らない点数表」(1月27日)を迎えた。
 そして決着したのが、計算に含まない看護師を「7対1と10対1は“16時間以下”から“16時間未満”に変える」というかたちの見直しであった。7対1と10対1以外は「8時間未満とする」とされた。
 この見直しはそれなりに大きい。というのは、夜勤をする看護師が少ない中、2交代だと16時間で月に1回夜勤した看護師カウントに入れられるからだ。
 したがって、月1回でいいから夜勤をしてほしいと各病棟でお願いすれば夜勤の人数が増える。当然分母が増えるので72時間の達成が楽になってくるということになるので、それなりの効果は出るのではないか。
 72時間というのは、例えばインフルエンザが看護師にも広がって夜勤できない人が増えたりと、ちょっとしたことで超過することがある。それが1割未満であればよいが、1割超の79.2時間を超えると即減算となる。その減算率が20%から15%に少しだけ下がった。
 今回は夜勤看護体制の評価が色々ついた。まずは7対1と10対1の看護職員夜間配置加算。現在は12対1なので、例えば50床の病棟で平均48人いると、夜勤で4人置くと50点の加算であったが、これが12対1で80~60点に引き上げられた上、新たに16対1にも加算がついた。48床であれば3人でも加算が取れるというわけである。
 ただし、12対1に関しては「看護職員の負担軽減に資する編成」にかかわる条件が7項目あって、そのうちの4項目を満たさなければならない。
 それから、7対1と10対1の急性期看護補助体制加算は、夜間の25対1を30対1に緩和した上で、50対1や100対1を含めて点数が増えた。また、夜間看護体制加算が新設された。夜間の急性期看護補助体制加算をとった上で、先ほど説明した看護職員夜間12対1配置加算の、今度は6項目のうちの3項目以上をクリアしなければならない。さらに、13対1にも夜間75対1に看護補助加算が新設された。
 また、看護補助加算を算定し、かつ、看護補助者の配置を含めた夜間勤務の負担軽減に取り組んでいる場合に、夜間看護体制加算が新設された。入院初日に150点取れる。
 ただし、看護職員夜間12対1配置加算と同様に「看護職員の負担軽減に資する編成」にかかわる条件7項目のうちの4項目を満たさないとならない。
 これについては通知でしっかり確認していただきたい。
 「常勤配置の取り扱い明確化」は、短時間正職員が育児休業等する場合、育児・介護休業法で定め期間は週30時間以上の勤務で常勤扱いにするというものだ。産後で短時間しか働けない人は4月以降は週30時間で常勤扱いとすることができる。
 さて、リハビリの実績が一定水準に達しない場合は1日6単位を超える疾患別リハビテーション料を入院料に包括するというアウトカム評価が回復期リハ病棟に導入された。
 「過去6ヵ月に退棟した全患者の入棟時と退棟時とのFIMの差の合計」を「各患者の入棟から退棟までの日数を当該患者の入棟時の状態に応じた算定上限日数で除した数の合計」で割ったものが27未満であるときに「リハビリの実績が一定水準に達しない」となる。
 こうした計算を、毎月の入棟数の100分の30を超えない範囲で、まず死亡した人、次にFIM運動項目の得点が最初から低いあるいは高い人、あるいはFIM認知項目の得点が最初から低い人、さらに80歳以上の人は除き、さらに、過去6ヵ月の割合が40%を超える場合の高次脳機能障害患者もすべて除いて行なうわけだ。
 このように除外が多いと果たしてどれぐらい残るのかというところもあって、これがどういうようなものになっていくのか、どういう問題が生じるのか、やってみないと分からないというのが正直なところだ。
 体制強化加算については、研修を受けた医師が病棟に張りつくと200点になる加算が1として残り、新たに低い点数の2を設けた。常勤医師2名以上の配置だが、必ずしも病棟に張りつかなくてもよい。週32時間はどちらかが病棟にいれば外来をしてもよいとなった。
 また、疾患別リハビテーション料の初期加算と早期加算の対象と起算日に関する考え方が整理され、明確化された。加算の対象は「急性疾患、手術、慢性疾患の急性増悪に限る」とされ、起算日も「発症、手術若しくは急性増悪から7日目又は治療開始のいずれか早いもの」となった。標準算定日数の起算日も明確になった。
 さらに、脳血管疾患等、運動器、心大血管疾患、呼吸器と並んで廃用症候群のリハビリテーションが新設された。算定日数は120日と点数同様他の疾患別リハよりも短い。早期加算は「廃用症候群に先行する急性疾患の発症、手術若しくは急性増悪又は廃用症候群の急性増悪から」30日、初期加算は同様に14日算定できる。
 それからADL維持向上等体制加算が25点から80点に引き上げられた。これは制度としては悪くはないが、要件が結構厳しいので算定がどのくらい増えるか微妙なところだ。
 維持期のリハに関しては、要介護の外来患者に対する1月13単位の疾患別リハの提供が18年3月まで再度延長された。ただし、点数は90/100から60/100へと、さらに、当該医療機関で介護保険のリハが提供されていない場合の追加減算も90/100から80/100へ、それぞれ減算率が引き上げられた。
 他方で、当該患者を介護保険に移行させるために目標設定等支援・管理料が新設された。3月に1回だが、初回に250点、2回目以降は100点が算定できる。
 あと、心大血管のリハに関しては、循環器科・心臓血管外科の標榜がなくても、リハ実施時に循環器科・心臓血管外科の医師等がいれば算定できるというように施設基準が緩和された。

全日病ニュース2016年3月1日号 HTML版

 

 

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