全日病ニュース

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データ分析を通じ医療機関の質を評価

データ分析を通じ医療機関の質を評価

【社会保障WG】
医療専門職の「気づき」を促す仕組みを検討

 内閣府は4月8日の経済財政諮問会議の社会保障ワーキング・グループ(主査=榊原定征・東レ株式会社相談役最高顧問)に、経済・財政再生計画に沿った当面の取り組みを示した。医療費適正化計画や地域医療構想などの施策とあわせ、データ分析を通じて医療機関の質を評価し、医療専門職に「気づき」を促す仕組みを今後検討すると明記している。
 財政健全化に向け政府は社会保障関係費の伸びの抑制を目指しているが、小泉純一郎政権時のように政府予算に上限を設け、機械的に削減する手法は採用していない。医療費の増加要因や地域差の「見える化」を通じ、効率化を促すことで、結果的に費用を抑制する手法を重視する方向に転換した。
 すでに政府は骨太方針2015に盛り込んだ経済・財政再生計画の改革工程表を作成し、社会保障分野では72項目について、目標達成のプロセスを定量的に評価するKPIの指標を示している。現在、さらに具体化を進めている段階だ。
 今回内閣府は、医療費の「見える化」のさらなる推進とワイズ・スペンディング(賢い支出)を進めるための、考え方を示した。近く正式にまとめた上で、閣議決定する骨太方針2016に盛り込む。
 医療費の「見える化」に関しては、1日当たり医療費の増加を抑えることが一つの論点となっている。医療費増の3要素◇受診率◇1件当たり日数◇1日当たり医療費のうち、受診率と1件当たり日数は近年減少傾向にあるのに対し、1日当たり医療費は増加しているためだ。3要素を都道府県別に分析し、医療費増の「見える化」をさらに進める。
 政府は都道府県別の年齢調整後の医療費の地域差を是正し、医療費の伸びを抑えることを目指している。現状で、高齢者の医療費が地域差に大きく寄与していることや、「循環器系の疾患」「精神及び行動の障害」「神経系の疾患」で地域差が大きいことがわかっている。  「見える化」の結果、判明した状況を変える手段としては、医療費適正化計画や地域医療構想、「療養病床のあり方の検討」をあげている。特に、医療費適正化計画は医療費の水準を目標に置き、医療提供体制に適正化を促すものとなっている。
 医療費適正化計画では、後発医薬品の使用割合などの全体の目標を達成した場合の効果を見込んだ上で、さらに残る地域差の縮減を目標とする。在院日数短縮の目標は放棄したものの、適正化計画に、外来医療費の「初再診・検査等」の地域差の是正を織り込んだ医療費の算定式を設定。夏頃に適正化計画を改定するとしている。
 地域医療構想と「療養病床のあり方の検討」に関しては、直接的に医療費抑制につながる具体策の明示は避けた。ただし地域医療構想による病床機能の分化・連携の成果は、医療費適正化計画に反映させるとしている。
 さらに、「医療専門職の『気づき』に基づく取り組み」を加えた。国が地域差に関するデータセットを都道府県に提供し、地域での関係者の議論を進める材料とする。具体的には、「重複受診・重複投与・重複検査等」の地域差を分析し、医療機関の質を評価する。それを医療専門職が知り、その先の行動変容を促す仕組みを検討するとしている。