全日病ニュース

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DPC制度の検討課題と入院医療に関する調査項目

【中医協】

DPC制度の検討課題と入院医療に関する調査項目

 中医協(田辺国昭会長)は6月22日に診療報酬基本問題小委員会と総会を開き、診療報酬調査専門組織のDPC評価分科会がまとめたDPC / PDPSの検討課題、および入院医療等の調査・評価分科会がまとめた2016年度と2017年度の調査項目・スケジュールを了承した(7月1日号で既報)。
●Ⅱ群医療機関の選定要件が課題に
 DPC/PDPSの検討課題は、表1のとおり。
 基礎係数(医療機関群)に関しては「Ⅱ群の選定要件」が検討課題にあげられている。Ⅱ群医療機関に関しては、実績要件の基準値設定いかんでⅡ群とⅢ群の入れ替えが生じるため、当該医療機関の経営に与える影響の大きさが懸念されてきた。
 Ⅱ群医療機関の基準値については、2014年10月の基本問題小委員会において「地域における機能」を要件として検討するよう求めた経緯がある。これについてDPC 評価分科会が検討した結果、「地域における医療機能を客観的に評価するためのデータが存在しないことから現時点では機能の評価と絶対値の設定は困難」としつつも、「今後の医療圏ごとの医療計画の見直しも踏まえた上で『地域における医療機関の機能』による選定要件を設定できないか、2016年度改定以降引き続き検討を行う」(2015年11月)としていた。
 したがって、地域医療構想で示される4つの医療機能別の病床分化がⅡ群の要件にリンクしていく可能性もあり、議論の帰趨が注目されるところだ。
 調整係数については、基礎係数・機能評価係数Ⅱへの置き換えが次期2018年度改定で完了するが、置き換えによって診療報酬収入が2%程度を超えて変動するために激変緩和措置をとった医療機関が2016年度改定で126あるなど、医療資源投入量のバラつきは解消されていない。
 置き換えの完了を控え、バラつきの解消に向けてどういう手を打っていくのか、「調整係数のあり方」「激変緩和措置のあり方」を含めて、引き続き検討していく。
 バラつきの解消は機能評価係数Ⅱにも期待されている。2016年度改定で「重症度係数」が新設されたほか、「各係数の重みづけ」の見直しも検討課題とされた。議論がある重症度係数などが引き続き検討課題となっている。また「病院情報の公表」は、2017年度より機能評価係数Ⅱの保険診療指数において評価指標の一つになる。
 この実施に向けて、「公表された指標とその解説の妥当性をチェックする仕組み」や「病床規模や専門性等によって不公平が生じない指標の作成・公開方法のあり方」などが検討される。厚生労働省は、今年10月時点の公表の有無を評価対象とする方針で、「病院情報の公表」に関する検討は7月いっぱいに終えたいとしている。
表1●DPC / PDPSの今後の検討課題

(1)次期改定に向けた検討課題
①基礎係数(医療機関群)のあり方
・Ⅱ群の選定要件について等
②調整係数のあり方
・平成30年度に置き換えが完了する予定である調整係数のあり方について
・激変緩和措置のあり方について等
③機能評価係数Ⅱについて
・病院情報の公表について
・後発医薬品係数について
・重症度係数について
・各係数の重みづけについて
・医科点数表改定の影響の反映について
・機能評価係数Ⅱとして評価すべき新規項目について等
④診断群分類点数表について
・CCPマトリックスについて
・適切な傷病名コーディングの推進について
・ICD-10(2013年度版)への対応時期について等
⑤請求に関するルールについて
・持参薬のあり方について等
⑥その他
・DPCデータの収集方法について
・DPC制度における手続き遺漏の際の対応について等
(2)DPC検討WGにおける検討課題について
①MDC毎作業班
(ア)診断群分類点数表の見直しについて
・最新のDPCデータを活用した、診療実態に即した診断群分類の見直し
(イ)様式1(簡易診療録情報)の調査項目の見直しについて
・診断群分類の分岐に必要となる診療情報等の見直し
②DPC/PDPS傷病名コーディングテキスト作業班
○各医療機関における「適切なコーディング委員会」参考資料としてのDPC/PDPS傷病名コーディングテキストの見直し

●入院関係の改定結果を検証
 入院医療等の調査・評価分科会が実施する調査内容は表2のとおり。2016年度改定の影響を調査・検証するための調査で、2016年度と2017年度に分けて実施する。
 これらの調査以外に、経腸栄養用製品の使用にかかわる入院時食事療養費等の見直しに関する調査も行われるが、その実施方法等は別途検討することとされた。
 調査項目は、6月17日の入院医療等の調査・評価分科会で議論されたが、厚労省が示した調査案に対して、社会医療法人財団董仙会理事長の神野正博委員(全日病副会長)は、①新たに評価対象となったせん妄や認知症患者の影響度を測るなど「重症度、医療・看護必要度」における各項目の重みづけがみえる調査設計とすべき、② DPCで新たに看護必要度の該当状況が報告される「Hファイル」と「重症度、医療・看護必要度」との相関性分析を試みてほしいなどの点を要望した。
 この日の分科会では、他の委員から「療養病棟の25対1が2018年3月で廃止となるが、その実態や転換意向を、2016年度だけでなく2017年度にも調査すべきではないか」との質問があったが、これに対して厚労省の担当官は、「医療法施行規則では2018年3月をもって25対1の経過措置が終わるが、診療報酬の上でなくなると決定されているわけではない」との認識を示した。
表2●入院医療等に関する調査項目

◎2016年度調査(11月~12月に実施)
(1)一般病棟入院基本料・特定集中治療室管理料における「重症度、医療・看護必要度」等の施設基準の見直しの影響(その1)
調査対象:一般病棟入院基本料、特定機能病院入院基本料、専門病院入院基本料、特定集中治療室管理料等を届け出ている医療機関
調査内容:入院料届出の意向や病棟群単位の届出状況、重症度、医療・看護必要度の該当患者割合の状況、患者像・平均在院日数及び退院先の状況、入院中の他医療機関の受診状況及び当該患者の患者像等
(2)地域包括ケア病棟入院料の包括範囲の見直しの影響
 調査対象:地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料を届け出ている医療機関
 調査内容:手術等の実施状況、患者像、入棟前の状況、退院先の状況等
(3)療養病棟入院基本料等の慢性期入院医療における評価の見直しの影響
 調査対象:療養病棟入院基本料、障害者施設等入院基本料等を届け出ている医療機関
 調査内容:人員配置の状況、医療区分別患者割合の状況、患者像、医療提供の状況、平均在院日数、退院先の状況等
(4)退院支援における医療機関の連携や在宅復帰率の評価のあり方
 調査対象:一般病棟入院基本料、特定機能病院入院基本料、専門病院入院基本料、地域包括ケア病棟入院料、有床診療所入院基本料等を届け出ている医療機関及び退院支援加算の届出を行っている医療機関を含む医療機関
 調査内容:退院支援の状況、退院先の状況、連携先の医療機関及び介護事業者の状況等
◎ 2017年度調査(2017年6月~7月に実施)
(1)一般病棟入院基本料・特定集中治療室管理料における「重症度、医療・看護必要度」等の施設基準の見直しの影響(その2)
 調査対象:一般病棟入院基本料、特定機能病院入院基本料、専門病院入院基本料、特定集中治療室管理料、救命救急入院料等を届け出ている医療機関
 調査内容:病棟群単位の届出状況、患者像、平均在院日数及び退院先の状況、各入院料における重症度、医療・看護必要度の該当患者割合の状況等
(2)短期滞在手術基本料及び総合入院体制加算の評価のあり方
 調査対象:短期滞在手術等基本料3を算定している患者が入院している医療機関及び総合入院体制加算を届け出ている医療機関を含む医療機関
 調査内容:短期滞在手術等基本料3の算定状況・患者像、総合入院体制加算の届出状況及び当該医療機関における医療提供体制・患者像等
(3)救急患者の状態を踏まえた救急医療管理加算等の評価のあり方
 調査対象:救急医療管理加算を算定している医療機関及び夜間休日救急搬送医学管理料を届け出ている医療機関を含む医療機関
 調査内容:救急医療管理加算を算定している患者の患者像及び入院後の転帰、夜間休日救急搬送医学管理料の届出状況及び受入れ患者の患者像等

 

全日病ニュース2016年7月15日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 医療経済実態調査の実施「必要なし」|第869回/2016年4月15日号 ...

    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20160415/news05.html

    2016年4月15日 ... 厚労省は3月30日、中医協の診療報酬調査専門組織・医療機関等における消費税負担
    に関する分科会(田中滋分科 ... 回答の回収率が1~2割と低く、信頼性に疑問を呈する
    意見が出たが、「医療機関の設備投資のばらつきは必然的に生じる ...

  • [2] Ⅰ群評価の見直しとコーディングの質向上の考え方をまとめる|第847回 ...

    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20150515/news03.html

    2015年5月15日 ... 中間とりまとめ案」は診療報酬基本問題小委員会を経て中医協総会に報告され、16
    年度改定に向けた検討の方向性について判断を仰ぐことになる。 ... 検討項目は、(1)
    医療機関別係数(Ⅰ群病院=大学病院本院の評価のあり方)、(2)退院患者調査(ミス
    コーディングへの対応)、からなる。 (1)では、Ⅰ群病院における係数のばらつき
    大きい背景に「分院(Ⅱ群)の機能が高く本院(Ⅰ群)の機能が低い」大学病院の ...

  • [3] 全日病ニュース・紙面PDF(2016年4月15日号)

    http://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2016/160415.pdf

    2016年4月15日 ... 厚労省は3月30日、中医協の診療報. 酬調査専門 ... 医療機関の. 消費税の取扱いが
    どうなるとしても、. 「医療経済実態調査」を改めて実施す. る必要はないと判断した。
    薬価調査等 ... 医療機関の設備. 投資のばらつきは必然的に生じるので、.

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