全日病ニュース

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回復期や在宅など中小病院の領域に大きな変更

2014年度診療報酬改定

回復期や在宅など中小病院の領域に大きな変更

【2014年度診療報酬改定】
地域包括ケア病棟入院料1は2,500点“。主治医”は1,500点(月1回)

 中医協は2月12日の総会で2014年度診療報酬改定案を答申した。7対1見直しのインパクトが大きく、さながら“7対1改定”の趣きとなったが、その受皿だけでなく、在宅関係にも大きな変更が加えられた。
 受皿となる地域包括ケア病棟入院料1は2,500点。現行の亜急性期入院医療管理料1と比べると20%以上の増額となり、新設3加算と合わせると3,000点近い算定が可能となる。
 ただし、包括範囲がどこまでなのか、したがってどれほどの出来高が算定できるのかなど、具体的内容は通知をまつしかなく、現時点で評価は難しい。

 

 14年度改定は地域包括ケア体制の構築に対応し、高度急性期から在宅復帰にいたる医療提供プロセスに道筋をつけ、地域に厚みのある療養環境を整える意図をもって行なわれた。
 そのために、まず、塊となった7対1病床の解氷に着手。一般急性期から回復期・慢性期そして在宅への流れを円滑化すべく、川上から川下へと受皿の開発に努めた。
 その象徴が、急性期後の患者を受けるだけでなく、自らも在宅等の患者に対応する地域包括ケア病棟の創設である。入院料と入院医療管理料の1と2の違いは在宅復帰率と1人あたりの居室面積であり、4.3m2の場合は2をとることになる。
 患者の1割以上が「一般病棟用の重症度、医療・看護必要度」A項目1点以上とされ、在宅復帰率も7割以上と厳しくなったが、いずれも回復期リハ1と同水準ではある。
 地域包括ケア病棟は、7対1に導入された退院患者にかかわる在宅復帰率の対象となる。また、自院の急性期病棟からの転棟は救急・在宅等支援病床初期加算の対象となる。詳しくは通知で確かめる必要があるが、仮に7対1の在宅復帰率に同病棟への転棟がカウントされるとすると、患者の流れはより円滑となり、その存在意義も高まるところだ。
 地域包括ケア病棟は病室単位(許可病床200未満)も病棟単位も可能なため、大規模病院の参入が見込まれるほか、療養病棟との併設も可能となる。ただし、併設には、例えば、特定入院期間中のDPC患者はリセットできない(200床未満)、あるいは、(看護配置の調整を活かした)7対1の新規届け出ができないといった制約もある。
 回復期リハ病棟入院料1は、休日リハ提供体制加算の60点がそのまま乗せられて包括化されたが、新たに体制強化加算(200点)が設けられた。
 7対1等の特定除外制度見直しは今年10月1日の施行で、7対1と10対1は、医療区分にもとづく報酬を選択すると二重の経過措置が受けられる。7対1に新設される在宅復帰率基準は、一見、対象となる退院経路の幅が広いが、療養病棟も老健も在宅復帰実績が評価された施設に限られるなど、75%は決して楽ではない。
 加えて、基準が大幅に厳しくなった「一般病棟用の重症度、医療・看護必要度」が10月1日から施行される。厚労省は、平均在院日数がらみの措置と併せて、35万床を超える7対1の1/4ほどが移行を迫られると見込んでいる。
 在宅復帰実績の評価は療養病棟入院基本料1にも導入される。老健施設の在宅復帰・在宅療養支援機能加算とほぼ同じ内容だが、10%という回転率が難関だ。
 今改定のもう1つの特徴が主治医機能(地域包括診療料)と在宅療養後方支援病院で、ともに在宅医療を支える新たな担い手として登場する。200床以上が対象の後方支援病院は在宅の難病等患者に高度な医療を提供する役割を担うことになる。
 地域包括診療料(1,500点)は月1回の算定。02年10月に廃止された外総診(月2回分)と同水準の点数となったが、院外処方から院内処方へと指向が変わるとともに、対象患者も4疾患に限定された。
 地域包括診療料は医療と介護がクロスする橋頭堡となることを期待されてもいるが、運用には難しい面が多く、このままでは病院の参入は難しい。
 その一方で、機能強化型在支診・在支病の実績要件を引き上げるとともに連携医療機関のそれぞれに実績を求める、さらには、常勤医要件はだめでも、緊急往診と看取りの実績がある在支診を新たに評価するというように、在支診・在支病に手が加えられる。
 単なる“ぶら下がり”は許さないという厚労省の認識によるものだが、在宅の前線強化というよりも在宅からの後退を増やすことになる危険性もある。
 今改定について、厚労省は激変を回避したと説明する。そうした一面は否定しないが、激変には制度と時間の2つの軸がある。また、制度改正には、新たな不整合さを産出して現場の負担と疲労を増すだけという“隠れ激変”もある。
 2025年に向けた工程をもう少し具体的に、かつ前倒しで示し、早い段階から各病院の経営計画に盛り込ませた上で自らの進路選択として医療機能と報酬評価を選んでいく、あるいは、現場のシミュレーションによって事前計画を修正していくという、そうしたソフトランディングが望まれるところだ。