全日病ニュース

全日病ニュース

ホーム全日病ニュース(2024年)第1052回/2024年4月1日号標準型電子カルテのモデル事業実施に向け意見を聴取

標準型電子カルテのモデル事業実施に向け意見を聴取

標準型電子カルテのモデル事業実施に向け意見を聴取

【厚労省・標準型電子カルテWG】診療所とは異なる病院の業務フローを念頭に置いた開発求める

 厚生労働省の標準型電子カルテ検討ワーキンググループは3月7日、今年度から標準型電子カルテα版の開発を本格化させることを踏まえ、来年3月以降に予定するモデル事業の実施に向けて、病院団体などの構成員に対して意見をきいた。
 標準型電子カルテとは、政府が医療DXの一環として開発を進めている標準規格に準拠したクラウドベースの電子カルテのこと。政府の主導で、現在、電子カルテを導入していない医療機関も電子カルテを導入し、それが全国医療情報プラットフォームなどに接続されると、多機関で患者の様々な医療情報を共有できるようになり、医療の質向上が期待できる。
 すでに標準型電子カルテα版の業務・機能に関する要件定義は概ね完了しており、1月からベンダーへの技術ヒアリングが始まっている。4月から開発に着手するという。来年3月からは開発したα版のモデル事業の実施を予定している。今回、厚労省はモデル事業の実施に向けて、構成員に対し、◇モデル事業の対象施設◇医療DXが想定する有用性を検証する観点◇運用─の3点について意見を求めた。
 標準型電子カルテの導入対象として、電子カルテを導入していない200床未満の病院と診療所を想定している。
 モデル事業のα版の対象施設は、電子カルテを導入していない無床診療所(または利用を希望する医療機関)で、診療科によらない共通の診療行為が対象。全国医療情報プラットフォームで他の医療機関で記録された医療情報を閲覧するため、各地域で中核病院と数施設の診療所を組み合わせて実施する。α版の利便性・実用性・有用性を医療現場・患者の双方に実感してもらうことを目的としている。
 モデル事業の対象施設について、日本医師会常任理事の長島公之構成員は、有用性の観点も踏まえ、「すでに電子カルテを導入している医療機関でなければ、α版と既存の電子カルテを比較して、メリット・デメリットを判断することができない」と指摘。電子カルテ導入済みの無床診療所もモデル事業の対象施設に含めるべきと主張した。
 全日病の高橋肇構成員(高橋病院理事長)は、「診療所と200床近い中小病院では、業務フローがかなり異なる。病院は多職種が協働して業務を行っている」と述べ、多職種で働く病院に適合した標準型電子カルテを念頭に開発を進めることを求めた。また各システム間のデータ連携は最重要課題であり、各ベンダーの標準化コストも明瞭にすべきと提言した。
 日本医療法人協会副会長の菅間博構成員は、すでに電子カルテを導入している医療機関も、システム変更を含めてランニングコストに対して多額の費用を支払っている現状を踏まえ、最終的にはすべての医療機関が標準型電子カルテに移行することを想定し、開発を進めるべきと主張した。
 標準型電子カルテのシステム開発のコンセプトでは、「国が、対象施設に共通した必要最小限の基本機能を開発し、民間事業者等が各施設のニーズに応じたオプション機能を提供できるような構成を目指す」としている。各医療機関が必要とする機能に応じて、民間サービスとの組み合わせが可能な電子カルテとする考えだ。標準型電子カルテはクラウド上にある。全国医療情報プラットフォームのシステム群や、民間事業者が提供するシステム群のAPI連携機能を持たせるための接続方式や規格を備えており、汎用性と高いセキュリティ、可変性などが期待できる。
 全国医療情報ネットワークは、マイナポータルや医療機関等でのオンライン資格確認を通じてアクセスできるシステムで、現在はレセプト情報や特定健診等情報を閲覧できる。今後、政府の医療DXの推進により、電子カルテの医療情報が追加されていく。共有できる医療情報が増えることで、医療の質向上や業務の効率化が期待できる。
 運用については、前回のワーキンググループで、電子カルテ導入をためらう診療所の認識を緩和するために、紙カルテと併用する案が示された。例えば、診療記録は従来どおり紙カルテを用い、他施設で診療した医療情報である3文書6情報の閲覧のみにα版を使用することが考えられると、厚労省が説明した。長島構成員は、「最大の目的は、患者に役立つ医療情報の活用であり、必ずしも電子カルテである必要はない」と述べ、紙カルテとの併用を認めるべきと主張した。本格版についても、「医療機関の裁量で選択できることが望ましい」とした。

 

全日病ニュース2024年4月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 2020.11.1 No.974

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2020/201101.pdf

    2020/11/01 ... ワーキンググループ(尾形裕也座長). は10月21 ... 患者の声を聞く方法として院. 内の目安箱があるが ... マイナポータルにログインした後、資. 格所持者 ...

  • [2] 2022.6.1 No.1010

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2022/220601.pdf

    2022/06/01 ... と同様に、個人がマイナポータル(情. 報提供等 ... 会 今村 康宏 委員長に聞く. 全日病の委員会を ... 関するワーキンググループ」. 「社会保障. 審議会 ...

  • [3] 2021.9.1 No.993 コロナ禍での病院経営~持続可能へのチャレンジを ...

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2021/210901.pdf

    2021/09/01 ... 興感染症等の対応に関する課題を聞く。 具体的には ... のワーキンググループWG)がある。 救急 ... バーカードを活用したマイナポータル. の情報も ...

本コンテンツに関連するキーワードはこちら。
以下のキーワードをクリックすることで、全日病サイト内から関連する記事を検索することができます。