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ホーム全日病ニュース(2024年)第1052回/2024年4月1日号救急救命士のエコー検査実証について引き続き議論

救急救命士のエコー検査実証について引き続き議論

救急救命士のエコー検査実証について引き続き議論

【厚労省・救急医療WG】安全性や実証の意義へ疑念の声

 厚生労働省の救急医療の現場における医療関係職種の在り方に関する検討会ワーキンググループ(児玉聡座長)は3月7日、救急救命士のエコー検査の実証について議論した。前回に引き続き、岡山県吉備中央町と岡山大学病院が特区内での実証実施について承認を求めたが、委員は安全性への懸念や実証の意義に対する疑義を呈するとともに、実証計画のさらなる検討を求めた。
 前回の議論を受け、吉備中央町はエコー検査の対象を「腹痛が主訴の傷病者」や「事故等により外傷が生じている負傷者」に限定。医師の責任の下、救急救命士がエコー検査を実施し、肝破裂や脾破裂等による腹腔内液貯留による出血や病変の有無を確認するものとした。さらに、エコーを実施することが困難な場合には、エコー検査を実施せず、通常の救急搬送時のプロトコールに従って対応するとした。
 これに対し、多くの委員から安全性を懸念する意見があがった。
 チーム医療推進協議会理事の深澤恵治構成員は、救急救命士のエコー検査の安全性に強い懸念を示し、実証実施について強く反対した。
 日本看護協会常任理事の井本寛子構成員も、「実証の意義や効果が十分了解されない中での提案であり、納得できない」と述べた。
 日本医療法人協会会長の加納繁照構成員は、「通常の救急医療では、二次救急で対応が難しい場合に三次救急に搬送する。あくまでもトリアージをいかに速やかにするかというのが最終的な目標であるならば、そのような(肝破裂等を起こしているほどの重篤な)症例の場合は、三次救急に迅速に運んだほうがよいのではないか」と指摘した。
 日本救急医学会評議員の本多英喜構成員は、「『なぜエコーをしないと搬送先が決められないのか』という点を明確化すべき。根本的な問題として、一次診療、二次診療を含めて重軽傷者を受け入れる救急医療体制を整備すべきであり、そのほうが効率的ではないか」と主張した。一方で、「実証そのものを否定する考えではない」とした上で、まずは現場の救急救命士が伝送システムを使って観察初見を送り、医師の総合的判断の下、必要に応じてエコー検査を行うようプロトコールの変更を求めた。また、病院到着後には医師が必ずエコー検査を実施して再評価すべきとの認識を示した。

 

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