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ホーム全日病ニュース(2024年)第1052回/2024年4月1日号効果的・効率的な生活習慣病管理の観点で評価を見直し

効果的・効率的な生活習慣病管理の観点で評価を見直し

効果的・効率的な生活習慣病管理の観点で評価を見直し

【2024年度診療報酬改定】特定疾患療養管理料から生活習慣病管理料への移行想定

 厚生労働省は3月5日に、2024年度診療報酬改定の告示・通知等を発出するとともに、改定内容の説明動画や資料を厚労省ホームページで公表した(3月15日号1面参照)。今回はこれまで本紙で取り扱っていない外来の生活習慣病の管理の評価や医療DX、感染対策に関する改定内容を紹介する。

▲0.25%の適正化が求められる
 外来の見直しでは、生活習慣病の増加等に対応する効果的・効率的な疾病管理・重症化予防の取組みを推進するための見直しが、今回改定の注目点となった。大臣折衝で決まった改定率で、▲0.25%とする対応が求められたためだ。結果として、医療費の適正化のためだけではなく、効果的な治療に結びつけるための見直しが行われた。
 具体的には、診療ガイドラインを参考とした質の高い疾病管理や医療DXを活用した情報共有の推進、療養計画書を用いた説明、多職種連携、長期処方等の活用などと関連付けた診療報酬の見直しとなった。従来の生活習慣病の管理の診療報酬には、点数は高く要件が煩雑な生活習慣病管理料と、点数は低く要件は比較的簡素な特定疾患療養管理料等があり、両者の違いがわかりにくいとの指摘が出ていた。
 今回改定では、まず生活習慣病管理料を2つに区分し、従来の点数を引き継ぐ「Ⅰ」を手厚くするとともに、新たな考えで「Ⅱ」を新設した。「Ⅰ」では、例えば、脂質異常症を主病とする場合で570点から610点に引き上げる。新たな要件に「診療ガイドライン等を参考として疾病管理を行うこと」や「糖尿病患者に対して歯科受診を推奨すること」、「多職種と連携することが望ましいこと」を加えた。一方で、療養計画書は簡素化し、電子カルテ情報共有サービスを活用する場合は、血液検査項目の記載を不要とした(下図表参照)。
 また、「少なくとも1月1回以上の総合的な治療管理を行う」との要件は廃止。「患者の状態に応じ、28日以上の長期の投薬を行うことまたはリフィル処方箋を交付すること」が可能であることを医療機関に掲示し、患者の求めに対応することが要件とされた。
 新設する「Ⅱ」の点数は月1回333点で、「Ⅰ」の半分程度の点数である。診療所と200床未満の病院が算定し、脂質異常症、高血圧または糖尿病を主病とする患者に対して、患者の同意を得て治療計画を策定し、生活習慣病に関する総合的な治療管理を行った場合に、月1回に限り算定できる。ただし、糖尿病を主病として在宅自己注射指導管理料を算定している場合は、算定できない。「Ⅱ」は検査等を包括せず、従来の生活習慣病管理料と比べると、簡素な算定要件となっている。
 外来管理加算や外来栄養食事指導料、糖尿病合併症管理料、ニコチン依存症管理料、療養・就労両立支援指導料、診療情報提供料(Ⅰ)(Ⅱ)などの費用は同点数に含まれている。また、オンライン診療の対象となり、同点数を算定すべき医学管理をオンライン診療で行った場合は、290点を算定する。長期処方等については、「Ⅰ」と同様の施設基準となっている。
 これに対し、特定疾患療養管理料の見直しでは、対象疾患から生活習慣病である糖尿病、脂質異常症、高血圧を除外する。処方料と処方箋料の特定疾患処方管理加算もこれらでは算定できない。一方、より質の高い疾病管理を推進する観点から、「アナフィラキシー」、「ギラン・バレー症候群」等を追加する。
 このような見直しにより、▲0.25%に結びつける観点では、特定疾患療養管理料から生活習慣病管理料への移行が想定される。生活習慣病管理料(Ⅱ)では外来管理加算が包括され、特定疾患処方管理加算2は算定できない。さらに、特定疾患療養管理料が月2回算定できるのに対し、生活習慣病管理料(Ⅱ)が月1回であり、通院回数が減少する。ただ、現状で月2回通院する患者は、それ程多くないと考えられ、改定率で示された程度の医療費削減効果になるとみられる。
 長期処方等に関しては、特定疾患処方管理加算で、28日未満の処方を行った際の特定疾患処方管理加算1が廃止となり、特定疾患処方管理加算2の評価が見直される(66点→56点)。また、特定疾患処方管理加算について、リフィル処方箋を発行した場合も算定可能とする。
 かかりつけ医機能の評価に関する診療報酬については、現在、改正医療法に基づくかかりつけ医機能の制度整備の議論が行われている最中であり、その制度に沿って、診療報酬の評価が行われるべきと診療側が主張したため、大きな見直しにはならなかった。
 ただ、地域包括診療料等に対しては、様々な新たな算定要件が加わっている。
 例えば、◇患者またはその家族からの求めに応じ、疾患名、治療計画等についての文書を交付し、適切な説明を行うことが望ましい◇介護支援専門員および相談支援専門員からの相談に適切に対応する◇28日以上の長期の投薬またはリフィル処方箋を交付することが可能であることを掲示する─などの追加がある。疾患名、治療計画等の文書を交付することは、改正医療法で、かかりつけ医が患者の求めに応じて適切な説明を行うことを努力義務としたことに関連している。
 施設基準では、選択肢の中で満たすことを求める要件に、「担当医がサービス担当者会議に参加した実績があること」、「担当医が地域ケア会議に出席した実績があること」、「介護支援専門員と対面あるいはICT等を用いた相談の機会を設けていること」などを加えた。また、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」を踏まえ、適切な意思決定支援に関する指針を定めていることなどの要件を設けた。

医療DX推進に向けて加算新設
 医療DXの推進については、まず政府の医療DXのインフラである医療機関窓口でのマイナ保険証によるオンライン資格確認に関連する評価の見直しがある。
 2022年度改定で導入された「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」は、2022年10月に評価体系が見直され、2023年4月に特例措置を講じるなど変遷がある。今回改定で、名称が「医療情報取得加算」となり、点数も変わった。見直しは、医療機関・薬局にオンライン資格確認システムの導入が原則義務化され、オンライン資格確認の体制整備の評価から初診時等の診療情報・薬剤情報の取得・活用に、評価対象が変わったことを踏まえた。
 従来の「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」は初診時のみの評価で、マイナンバーカードを利用しない場合は4点(加算1)、マイナンバーカードを利用し医療情報を取得した場合は2点(加算2)であった。
 「医療情報取得加算」では、初診時の加算1を4点から3点、加算2を2点から1点に引き下げる一方で、再診時の評価を設けた。再診時(3月に1回に限る)は、マイナンバーカードを活用しない場合は2点(加算3)、マイナンバーカードを活用して医療情報を取得した場合は1点(加算4)。
 施設基準では、オンライン資格確認を行う体制を有し、受診患者に対して、受診歴、薬剤情報、特定健診情報その他必要な診療情報を取得・活用して診療を行うことを求めている。
 さらに、今回改定では、「医療DX 推進体制整備加算」(8点)を新設する。これは、オンライン資格確認により取得した診療情報・薬剤情報を活用できる体制に加えて、電子処方箋と電子カルテ情報共有サービスを導入している場合の評価となっている。
 「医師が、電子資格確認を利用して取得した電子情報を、診療を行う診察室、手術室または処置室等において、閲覧または活用できる体制」(経過措置が2025年3月31日まで)が要件。2024年10月1日からは、マイナンバーカードの健康保険証利用で一定程度の実績を求める。一方、電子カルテ情報共有サービスが活用できる体制の経過措置は2025年9月30日まで。
 また、昨年10月18日に、増加する在宅医療ニーズに応えるため、在宅医療の現場で、オンライン資格確認による医療情報等の閲覧を簡便にするための省令等の改正に関する答申を中医協総会が行った。これにより、指定訪問看護ステーションにオンライン資格確認の導入を義務づけるとともに、医療機関等との継続的な関係で、訪問診療等が行われている場合の2回目以降の訪問診療で、簡便な資格確認の仕組みを認めることになった。
 具体的には、2023年12月1日以降、訪問診療等におけるオンライン資格確認の仕組み(居宅同意取得型)に実装される再照会機能を活用した資格確認が可能となっている。これを踏まえ、居宅同意取得型のオンライン資格確認等システムなどにより、在宅医療における診療計画の作成で取得した患者の診療情報や薬剤情報を活用した場合の評価として、「在宅医療DX 情報活用加算」(10点)などを新設する。
 一方、救急時に患者の同意を得ずに、患者の診療情報等を活用できる仕組みも検討されている。2024年10月から意識障害などで、同意取得が困難な患者への救急時医療情報閲覧機能による救急用サマリーの閲覧が可能となることを踏まえ、総合入院体制加算、急性期充実体制加算、救命救急入院料について、救急時医療情報閲覧機能を導入していることを要件とする。
 へき地医療においては、患者が看護師等といる場合のオンライン診療(Dto P with N)が有効であると示されたことから、へき地診療所・へき地医療拠点病院が「D to P with N」を実施する場合の評価である「看護師等遠隔診療補助加算」(50点)を新設。指定難病患者に対する治療では、患者が医師といる場合の情報通信機器を用いた診療(D to P with D)が有効であると示されたことから、遠隔連携診療料の対象患者に指定難病患者を追加する。
 オンライン診療ではほかに、閉塞性無呼吸症候群に対する持続陽圧呼吸(CPAP)療法を実施する際の基準を踏まえ、在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料にオンライン診療の評価(218点)を新設する。発達障害等、児童思春期の精神疾患の支援を充実する観点から、小児特定疾患カウンセリング料にオンライン診療の評価も新設する。小児特定疾患カウンセリング料については、カウンセリングの実態を踏まえた要件と評価の見直しが行われる。
 「通院・在宅精神療法」におけるオンライン診療の評価も新設。「通院・在宅精神療法」で待機患者が増えていることへの対応だが、不適切な受診が広がりかねないとの懸念があり、答申書附帯意見に「患者の受療行動を含め…(略)…より適切な評価のあり方を引き続き検討する」ことが求められた。
 また、オンライン診療全体で、初診で向精神薬を処方する不適切事例が多いことが報告されており、初診で向精神薬を処方しないことをホームページなどに掲示することをオンライン診療の施設基準の要件に追加する。
 病院へのサイバー攻撃の報道にあるように、医療機関のサイバーセキュリティ対策の必要性が増大している。
 このため、非常時に備えたサイバーセキュリティ対策のため、「診療録管理体制加算」について、専任の医療情報システム安全管理責任者の配置や院内研修の実施を求める医療機関の対象範囲について、現行の許可病床数が400床以上の医療機関から許可病床数が200床以上の医療機関に拡大する。医療情報システムのオフラインバックアップ体制の確保、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に基づく業務継続計画(BCP)の策定や訓練の実施でも新たに評価を行う。

ポストコロナの感染症対応
 感染症対応については、コロナ禍の2022年度改定で、「感染対策向上加算」や「外来感染対策向上加算」など地域の医療機関が連携して感染症に対応できる体制を構築するための診療報酬の評価を行った。2024年度改定では、改正感染症法を受け、第8次医療計画などにおける医療措置協定の枠組を踏まえ、ポストコロナの感染症対応として、2022年度改定で新設した診療報酬項目の見直しなどを行った。
 具体的には、「感染症対策向上加算」の対象は、都道府県と医療措置協定を締結し、病床の確保を図る第1種協定指定医療機関とした。「外来感染症対策向上加算」の対象は、都道府県と医療措置協定を締結し発熱外来を設置する第2種協定指定医療機関とした。また、「感染対策向上加算」の施設基準に、連携する介護保険施設等からの求めがあれば、現地に赴いて感染対策の助言を行うことや院内研修を合同で開催することが望ましいことを加えた。
 第1種協定指定医療機関は新興感染症等の患者の入院を受け入れる病院であり、感染拡大後の3か月程度、一定の収入が補償される流行初期医療確保措置の対象である初動対応等を含む特別な協定を締結する病院と、その後の3か月までに対応することの協定を締結する病院がある。現在、コロナ対応での最大確保病床数を踏まえ、今年9月末までに5万1千床(流行初期確保病床で1万9千床)の病床を確保することが目標。第2種協定指定医療機関は発熱外来を設置し感染患者または疑い患者の診療を行う医療機関で、同様に、4万2千医療機関(流行初期協定締結医療機関で1,500医療機関)を確保することを目標としている。
 また、発熱患者等に対応した場合の初診時の加算も新設(発熱患者等対応加算・20点)。入院医療では、感染症法上の三類、四類、五類感染症、指定感染症の患者など感染管理が特に重要な感染患者・疑い患者に適切な感染対策を講じた場合の「特定感染症入院医療管理加算」(治療室の場合は200点、それ以外は100点)を新設する。

 

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