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ホーム全日病ニュース(2024年)第1052回/2024年4月1日号2025年に向けた地域医療構想の取組みを確認

2025年に向けた地域医療構想の取組みを確認

2025年に向けた地域医療構想の取組みを確認

【厚労省・地域医療構想等WG】2024年度中にモデル推進区域を選定

 厚生労働省の地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ(尾形裕也座長)は3月13日、2025年度までを想定した地域医療構想の進捗について確認した。2025年に向けた取組みの推進案が了承された。
 厚労省が2025年に向けて各機関が取り組む事項を明確化した。具体的には、◇国が推進区域・モデル推進区域を設定し、アウトリーチ型の伴走支援を実施◇都道府県は推進区域の調整会議で協議を行い、区域対応方針の策定・推進を図る◇医療機関では区域対応方針に基づく医療機関対応方針の検証・見直し等の取組みを行い、構想区域での課題解決に向けた取組みの推進を図る―としている。
 推進区域は都道府県あたり1~2か所、そのうち全国で10~ 20か所のモデル推進区域を設定する見通し。国は推進区域に対して区域対応方針の策定を求めるとともに、モデル推進区域に対して、従来の重点支援区域と同様にデータ分析等の技術的支援や地域医療介護総合確保基金の優先配分等の財政支援を行うなど、アウトリーチ型の伴走支援を実施するとしている。
 3月中に都道府県に向けた取組みの通知を発出するほか、選定方法は改めて当ワーキンググループに示すとした。
 あわせて、都道府県別・構想区域別に病床機能報告上の病床数および地域医療構想における将来の病床数の必要量等を整理したものを厚労省ホームページ上に掲載し、一覧化するとした。

すべての構想区域で医療提供体制上の課題あり
 ワーキンググループには、2023年11月時点の地域医療構想調整会議における検討状況等調査の結果も報告された。構想区域の2025年における「病床機能報告上の病床数」と、「地域医療構想で推計した病床数の必要量」との差異の状況について、全339区域のうち「解析している区域」は147区域(43%)で、このうち「病床機能報告を用いて解析している区域」は95区域(28%)、「病床機能報告に加え、その他データ(DPCデータ等)を用いて解析している区域」は52区域(15%)あった。一方、「解析していない区域」は192区域(57%)あった。
 生じている差異を要因別に再集計すると、①病床機能報告が病棟単位であることに起因する差異がある(29区域)②定量的基準の導入により説明できる差異がある(70区域)③その他の要因により説明できる差異がある(60区域)④ ①~③では説明できない差異がある(93区域)となった。
 データの特性だけでは説明できない差異(①②以外)が生じている構想区域(132区域)のうち、「地域医療構想調整会議において要因の分析および評価を行っている区域」は64区域、このうち「その結果を公表している区域」は55区域あった。一方、「要因の分析および評価を行っていない区域」は68区域あった。
 この定量的基準の主な内容は、◇急性期病棟のうち、50床あたり「手術+ 救急入院>1日2件」を目安に条件を満たさない病棟を回復期に計上◇急性期・慢性期病棟のうち、「地域包括ケア入院管理料を算定している病床」および「将来回復期に転換予定として報告している病棟」を回復期に計上◇「急性期一般入院料4~6、地域一般入院料、小児入院医療管理料4・5、回復期リハビリテーション病棟入院料、地域包括ケア病棟入院料、緩和ケア病棟入院料、特定一般病棟入院料」を算定する病棟を回復期に計上―である。したがって、差異は生じているものの、実態に即した調整を加えることで、差異の説明が可能となることを示している。
 また、同じくデータの特性だけでは説明できない差異が生じている構想区域(132区域)のうち、「非稼働病棟等への対応を行った区域」は77区域、「今後行う予定の区域」は19区域あったが、「行う予定はない区域」は23区域あった。対応を行っていない主な理由としては、「対応方針について医療機関に聞き取りを行った段階であり、今後、必要に応じて地域医療構想調整会議において報告予定のため」、「今年度とりまとめる医療機関の対応方針等を活用し、対応予定のため」、「改修による休棟等、非稼働病棟である理由が明らかなため」であった。
 医療提供体制上の課題については、すべての区域が「ある」と回答。個別の課題をみると、「救急医療体制の確保」(293区域)、「医師以外の医療従事者の確保」(291区域)、「医師の確保」(288区域)の順に多い。
 「課題」と「生じている差異」との関連が「ある」と回答した区域は76区域。具体的には、「回復期の必要病床数との差異があり、高齢者等がリハビリを受ける体制が不足している」、「慢性期の病床数が過剰となっており、受け皿となる在宅医療や介護系施設の提供体制が不足している」、「病床機能の転換を進めるための医師の確保が困難」との課題があげられた。一方で、「課題と生じている差異との関連がない」と回答した区域は67区域、「関連について考えていない」と回答した区域は196区域あった。
 課題解決のための取組み予定としては、「地域医療構想調整会議における協議」(289区域)、「データ分析」(281区域)、「構想区域の関係者の勉強会等」(141区域)があげられた。

新たな構想では医療供給側の課題分析を
 議論では、多くの委員から2040年に向けた新たな地域医療構想を見据えた発言があった。
 日本医師会副会長として出席した全日病会長の猪口雄二構成員は、地域医療構想調整会議における「医療従事者が不足し、必要な病床機能を整備できない」との評価について、「特に過疎地域では『医療・介護従事者が集まらないので病床が開けられなくなっている』と聞いているが、実は東京でも同様の問題が出てきている。2026年以降の新たな地域医療構想における課題として大きく取り上げたほうがよい」と指摘した。また、医療・介護にとどまらず、全産業で若手の人手不足が起こっていることから、病床数の問題だけではなく、医療供給側からの課題分析を求めた。
 全日病副会長の織田正道構成員も、すでに各構想区域で「救急医療」「医療人材の確保」「医師の確保」が課題としてあがっていることから、「2026年以降に行おうとしていることがすでに問題になっている」と指摘した。その上で、「2025年までの取組みは、構想区域全体に確認・分析をさせて必要性の低い議論を繰り返させるよりも、乖離の大きい区域に集中すべき。その際は、病床数と必要量の乖離の縮小ばかりに着目するのではなく、医療提供上の問題がある地域に対して中心的に問題提起すべき」との考えを強調した。
 一方で、現状の病床必要量は2013年のNDBデータやDPCデータと人口構造の変化を掛け合わせて算出していることから、織田構成員は「10年前のデータで繰り返し議論してきたが、ゴールが近いので、それが正しかったかどうか検証が必要。今はデータがもっと出しやすくなっているはずなので、2025年を一つの区切りとして検証結果を出してほしい」と要望した。これに対し、厚労省は新たな地域医療構想の検討の中で議論する考えを示した。

 

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    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20170615/news02.html

    2017/06/15 ... 厚生労働省の「地域医療構想に関するワーキンググループ」(尾形裕也座長)は6月2日、今年10月報告分からの病床機能報告制度の変更を了承。

  • [2] 2021.10.1 No.995

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2021/211001.pdf

    2021/10/01 ...ワーキンググループ尾形裕也座長). は9月15日、来年4月に予定される外. 来機能報告の施行に向けて、外来医療. 機能に関する協議の場の参加者など ...

  • [3] 2019.2.1 No.933

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2019/190201.pdf

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