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ホーム全日病ニュース(2024年)第1052回/2024年4月1日号483病院が医師の時間外労働で特例水準の指定受ける

483病院が医師の時間外労働で特例水準の指定受ける

483病院が医師の時間外労働で特例水準の指定受ける

【厚労省・医師の働き方改革推進検討会】4月施行を前に評価センター受審や準備状況などを厚労省が報告

 4月1日から医師の働き方改革が施行される。厚生労働省の「医師の働き方改革の推進に関する検討会」(遠藤久夫座長)は3月14日、施行前の最後の検討会を開催し、医師の働き方改革をめぐる状況を確認した。年間労働時間等が960時間を超える医師に適用される特例水準の指定を受ける医療機関は、2024年3月11日時点で483病院。当初想定した最大数である1,500病院の3分の1程度であることがわかった。日本医師会が運営する医療機関勤務環境評価センターに受審申込を行った医療機関を集計した。
 医師に対する通常の時間外労働規制は「A水準」と言われるが、それを超えて1,860時間までの時間外労働等を認める「B水準」、「連携B水準」、「C水準」の都道府県による指定を受けるためには、医療機関勤務環境評価センターに申請する必要がある。それが2024年3月11日時点では、483病院だった。
 都道府県別では、東京都が51病院で最も多く、次いで、大阪府(35病院)、神奈川県(34病院)、福岡県と千葉県が28病院、愛知県(27病院)、北海道と埼玉県が25病院。逆に、秋田県、富山県、福井県、山梨県、和歌山県、島根県、香川県、愛媛県、長崎県が最も少ない2病院となっている(下表参照)。
 なお、これらの数字は申込件数であり、受付申込を行ったものの実際には評価申請を行わなかった病院や、申請後に辞退した病院もあるという。
 厚労省は、病院数について、施行前の直近の数字であるが、施行後に特例水準が必要であることが判明する医療機関があると見込んでおり、都道府県を通じて引き続き個別の医療機関の情報把握に努める姿勢を示している。
 2023年度C -2水準審査の結果も報告された。C -2水準は、C -1水準が臨床研修医と日本専門医機構が採用する専攻医を対象とするのに対し、それ以外の高度な技能を習得するための研修に参加する医師が該当する。承認された分野は、小児科(2病院)、外科(8病院)、産婦人科(5病院)、脳神経外科(2病院)となっている。
 技能研修計画として、小児科(9名)では「ハイリスク新生児の蘇生・全身管理」、「先天性、後天性心疾患に関する手術およびその周術期管理」などがある。外科(17名)では「先天性、後天性心疾患に関する周術期管理」、「肝胆膵疾患に関する高難度手術およびその周術期管理」などがある。産婦人科(25名)では「異常妊娠における母体と胎児に対する周術期管理」、「子宮・付属器悪性腫瘍に対する手術、周術期管理および薬物療法」などがある。脳神経外科(5名)では「下垂体腫瘍に関する神経内視鏡を用いた手術手技およびその周術期管理」、「脳血管障害疾患に関する手術手技とその周術期管理」などがある。
 当初、特例水準の対象は1,500病院と想定された。2020年度診療報酬改定で新設された地域医療体制確保加算を算定すると想定された病院でもある。同加算は、「救急用の自動車または救急医療用ヘリコプターによる搬送件数が、年間で2,000件以上」を施設基準としていた。現時点で申請病院が500弱に収まっていることについて、医師の働き方改革に向けた様々な取組みが効果を上げたためとの指摘が構成員からあった。労働時間の管理やタスクシフト・シェアの推進のほか、宿日直許可の取得や大学病院等における自己研鑽の考え方が厚労省通知で整理されたことなどの要因があると考えられる。

特例水準超の時間数の医師は1人
 医師の働き方改革の施行に向けた準備状況調査(2024年3月13日時点)の結果も報告された。すべての病院・有床診療所を対象とした調査で、質問項目により7,300 ~ 8,000医療機関からの回答があった。
 結果をみると、医師の働き方の施行に伴い診療体制が縮小する見込みの医療機関は457だった。自院の診療体制の縮小により地域医療提供体制の影響があるとした医療機関は132。医師の引揚げで診療体制への縮小が見込まれる医療機関は49だった。
 また、宿日直許可の取得や医師の労働時間短縮の取組みを実施しても、2024年4月時点で副業・兼業先も含めた時間外・休日労働時間数が年通算1,860時間を超えると見込まれる医師は1人となっている。
 医師の働き方改革は4月以降に本格的に始まるとも言える。政府は、2024年度予算においても新たな補助事業を準備した。地域医療介護総合確保基金では、「地域医療勤務環境改善体制整備特別事業」、「勤務環境改善医師派遣等推進事業」がある。2023年度補正予算の文部科学省所管事業では、「医師養成課程充実のための教育環境整備」(140億円)などがある。
 これらの報告を受け、日本医療法人協会副会長の馬場武彦構成員は、「医師の引揚げなどの影響を受ける民間病院に対する支援・救済を引き続きお願いする。また、労働の判断にグレーゾーンがある。経営者と勤務医に分断を生じさせない対応も重要」と強調した。

 

全日病ニュース2024年4月1日号 HTML版

 

 

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  • [2] 公益社団法人 - 全日本病院協会 60周年記念誌

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