全日病ニュース

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「予期しない」の解釈、「管理」を対象とするかで意見分かれる

「予期しない」の解釈、「管理」を対象とするかで意見分かれる

【医療事故調査制度の施行に係る検討会】
省令等に盛り込む事項で検討会。省令事項の範疇超え、GL議論の様相

 厚労省に「医療事故調査制度の施行に係る検討会」が設置され、11月14日に初会合が開かれた。
 2015年10月1日の施行に向け、15年度早々に省令、告示、通知事項等が公表される。したがって、年度内にそれらの考え方をまとめる必要があることから、関係者の意見を反映させるために設置されたもの。
 構成員は医師・歯科医師11人(1人は弁護士兼職)、医師以外の医療職3人、弁護士3人、法学者4人、文化人1人、患者代表2人の計24人。このうちの14人は、厚労科研「診療行為に関連した死亡の調査の手法に関する研究」班(研究者・全日病西澤会長)のメンバーである。
 事務局を務める厚労省医政局総務課医療安全推進室の大坪室長は、冒頭に「省令、告示案等のパブコメをできれば15年3月に出したい」と発言、2月頃の報告取りまとめを要請した。
 第1回目の検討会は、まず、前出の研究班として10月23日に中間報告を行なった西澤構成員が、その骨子を以下のとおり報告した。
(1)医療の安全確保を目的に、医療事故の再発防止に繋げることがこの制度の意義であり、そのために、医療者の自律的な取り組みとして医療事故の調査・分析を行なう。したがって、事故発生当該病院等が主体的に院内事故調査を適切に実施することが重要である。
(2)この制度は紛争処理とは切り離し、原因の調査と再発防止につなげることが目的である。
(3)医療事故の定義として、「医療の中の管理」は対象となるが、「医療を伴わない管理」は対象としない。
(4)「予期しないもの」の定義は今後の検討課題である。
(5)報告者の非懲罰性の確保が重要。
(6)「報告書」とは、最終的に外部(医療事故調査・支援センター、遺族)に提出するものを指し、個人の責任追及につながらないよう、記載事項を検討する。
(7)「報告書」への再発防止策の記載は必須としない。
 続いて、小田原構成員(医法協常務理事)が、以下のとおり同協会の「医療事故調ガイドライン」を説明した。
(1)非懲罰性・秘匿性の遵守が報告システムが成功する必須条件である。
(2)センターは、謙抑的に補助的な役割を担わせるべきである。
(3)報告書は遺族に開示しない。
(4)本制度の対象は範囲をごく限られたケースに限定し、マンパワーと費用をかけるべき事案に絞り込んで行なうべきである。
(5)「過誤」類型および「単純な管理」に起因する死亡は調査対象から外れる。
 以上の報告を受け、議論は、概ね、①「予期しない死」の解釈、②「管理」の概念とその報告対象の有無をめぐり、主に、医法協GL案の考え方を主張する小田原構成員とそれに疑問を呈する構成員との間で交わされた。

調査対象に「過誤」を含めるべきか

 2回目の検討会は11月26日に開かれ、事務局は、改正医療法に書き込まれた医療事故調査制度の規定にもとづいて、省令に明記すべき事項を中心とする「検討事項」を19件提示した(別掲)。
 この日の議論は、主に、①事故の範囲、②「予期しない」の解釈、③事故発生後のセンター報告の内容と時期、④調査報告書の遺族への開示(提供)、⑤センター調査と院内調査との関係をめぐり、前回と同様、医法協GL案を支持する構成員とそれに異論を唱える構成員との間で意見の応酬が繰り広げられた。
 調査対象となる事故の範囲に関しては、「過誤を含めるべきか」「過誤による死は予期しない死とみなすべきか」「医療における管理と医療の外の管理をどう分けるか」など、概念が重なったり、連繋する論点が多い。
 そのため、検討会の議論はいりくんだものとなり、一見すると、意見集約が難しく思えるものとなっている。
 しかし、「医学的に予期されていなかった死の原因」を究明して「再発防止」につなげることを旨とする制度である。しかも、この制度の最終目的は患者の安全を確保し、患者との信頼関係をより強固にすることにあり、それが、医療人が自信をもって医療に臨む糧となる。
 したがって、真摯な議論を重ねる中から、自ずと結論はみえてくると言える。
 検討会に臨む医療関係者の声は、意見集約に楽観的である。

□医療事故調査制度の検討事項

1. 医療事故の定義について-
○基本的考え方
○死産について
○医療に起因し、又は起因すると疑われるもの
○当該死亡又は死産を予期しなかったもの(省令事項)
○医療事故の判断のプロセス
2. 医療機関からセンターへの事故の報告
○医療機関からセンターへの報告の方法(省令事項)
○医療機関からセンターへの報告の事項(省令事項)
3. 医療事故の遺族への説明事項等
○遺族の範囲(省令事項)
○遺族への説明事項(省令事項)
4. 医療機関が行なう医療事故調査
○医療機関が行なう医療事故調査の方法等(省令事項)
5. 支援団体のあり方
○支援団体(大臣告示)
○支援内容
○支援団体(案)
6. 医療機関からセンターへの調査結果報告
○センターへの報告事項・報告方法(省令事項)
7. 医療機関が行った調査結果の遺族への説明
○遺族への説明事項・説明方法(省令事項)
8. 医療事故調査・支援センターの指定
9. センター業務①
○センターが行なう、院内事故調査結果の整理・分析
○センターが行なう、医療機関への分析結果の報告
10. センター業務②
○センターが行う調査
11. センター業務②
○センターが行なった調査の医療機関と遺族への報告
12. センター調査に伴う遺族及び医療機関の費用負担
13. センター業務③
○センターが行なう研修
14.センター業務④-
○センターが行なう普及啓発
15. センターが備えるべき規定(省令事項)
16. センターの事業計画等の認可(省令事項)
17. センターの事業報告書等の提出(省令事項)
18. センターの業務の休廃止の許可
19. センターが備える帳簿(省令事項)